第五章:闇の帝国の第一歩
その日から、悠翔は江戸城の一角に与えられた部屋で生活を始めた。部屋は簡素だが、畳と障子の落ち着いた雰囲気は、意外と彼の厨二心をくすぐった。彼は毎晩、スマホの残量をチェックしながら、歴史の断片を思い出そうと頭をひねった。
「くそっ、黒船来航が1853年で、開国が……いつだっけ? まあ、細けえことはいい。とにかく、開国を阻止すりゃ、俺の使命は完遂だ!」
問題は、具体的な方法だ。悠翔の知識は、歴史のテストで60点を取れるかどうかのレベル。科学技術の詳細なんて知らないし、スマホのバッテリーも残り少ない。だが、彼の最大の武器は「口達者さ」と「厨二病の自信」だ。彼は決めた。とにかく、幕府の重鎮たちを自分のペースに巻き込み、開国反対派を勢いづかせるのだ。
翌日、悠翔は清十郎に連れられ、老中・阿部正弘の面前に立った。阿部は、幕府の最高権力者の一人であり、黒船来航後の対応に頭を悩ませている人物だ。悠翔は一目で、彼がこの時代のカギを握る人物だと直感した。
「ふん、貴様が阿部正弘か。俺の名は黒崎悠翔、闇の使者にして時を統べる者! 貴様の悩みを、俺の力で解決してやる!」
阿部は一瞬、呆れた表情を浮かべたが、すぐに冷静な声で応じた。
「黒崎とやら、清十郎から話は聞いている。未来の知識を持つと申すな。開国の是非について、幕府は議論を重ねている。貴様、何か具体的な策があるのか?」
悠翔は心の中で焦った。具体策なんてない。だが、彼はここで引き下がるわけにはいかない。彼はマントを翻し、適当にそれっぽいことを並べ立てた。
「ふっ! 開国は愚の骨頂! 異国の者は、甘い言葉で貴様らを騙し、この国を喰らう! 俺の知識で、鉄の船を凌ぐ戦艦を創り、異国の者を海の藻屑にする! さらに、俺の魔導具が、貴様らの軍を最強に変える!」
阿部は目を細め、悠翔を見つめた。
「鉄の船だと? 黒船の強さは、幕府も知っている。貴様、具体的に何を創れる?」
悠翔は一瞬、冷や汗をかいた。鉄の船なんて、現代の知識でも詳細は知らない。だが、彼はスマホを取り出し、適当にネットで見た戦艦の写真を見せた。バッテリーは残り5%。時間がない。
「これが、未来の戦艦だ! この力を手に入れれば、黒船など一撃で沈む!」
阿部は写真に目を奪われた。戦艦の巨大な砲塔と鋼鉄の装甲に、部屋にいた役人たちもざわついた。
「こ、これは……! まるで神の業だ!」
「ふん、神などではない! これは科学の力、俺の知識の結晶だ! 俺を信じ、開国を拒め! そうすれば、この国は永遠に不滅の闇の帝国となる!」
阿部はしばらく黙り、やがて口を開いた。
「黒崎悠翔、貴様の言葉、確かに興味深い。よし、しばらく貴様を側に置き、策を講じてもらう。だが、もし我を謀ったのならば、命はないぞ」
手に持つ扇子で首切りのジェスチャーをする阿部に、悠翔はニヤリと笑った。内心、「また首の話かよ! この時代、怖すぎ!」と思いながらも、表面上は余裕の表情を崩さない。
「ふん、試してみるがいい。俺の闇の力は、貴様らの想像を遥かに超える!」