第三章:歴史を変える第一歩
その夜、奉行所の簡素な部屋で、悠翔は畳の上に寝転がっていた。スマホのバッテリーは残り10%。彼は内心、焦り始めていた。
「くそっ、充電器がない……。この魔導具が死んだら、俺の説得力も半減だぞ」
彼は目を閉じ、状況を整理した。江戸時代末期、黒船来航後の動乱期。歴史の知識は中途半端だが、開国が日本を欧米列強の影響下に置き、後に多くの苦難をもたらしたことは知っている。厨二病の彼にとって、「開国を防ぐ」ことは、単なる歴史改変ではなく、「闇の使者としての使命」だった。
「ふん、俺がこの時代に呼ばれたのは、運命だ。開国を阻止し、この国を真の闇の帝国として覚醒させる!」
だが、現実は厳しい。奉行所の役人たちは彼を「面白い小僧」と見つつも、完全に信用しているわけではない。清十郎は好意的だが、年配の役人は明らかに疑っている。悠翔は考える。この時代で影響力を持つには、もっと大きな舞台に立つ必要がある。幕府の重鎮、あるいは将軍その人に会うのだ。
「よし、まずは清十郎を味方に引き込む。あいつ、なんかノリがいいし、使えるぞ」
翌朝、悠翔は清十郎に直談判した。奉行所の庭で刀の素振りをしていた清十郎に、マントを翻しながら近づく。
「よお、清十郎! 俺の力を本気で試したいなら、もっとデカい舞台を用意しろ! 幕府のトップに俺を会わせろ!」
清十郎は刀を収め、ニヤリと笑った。
「ほう、将軍様に会いたいだと? 大胆な小僧だな。だが、奉行所の俺がそんな簡単に手配できると思うか?」
「ふん、俺の言葉は運命の導きだ! 貴様が俺を信じ、動くなら、歴史は変わる! 開国を防ぎ、この国を真の強国にする!」
清十郎はしばらく黙り、悠翔を見つめた。その目には、好奇心とわずかな信頼が宿っていた。
「よし、黒崎悠翔。一つ賭けてみるとしよう。俺が動く。だが、失敗したら、お前の首、俺が貰うぞ」
悠翔は心の中でガッツポーズをした。清十郎を味方に引き込んだ。これで、幕府の中心に一歩近づいたのだ。