第二章:口達者の闇の使者
町奉行所に連れてこられた悠翔は、畳敷きの部屋に座らされていた。目の前には清十郎と、もう一人、年配の役人らしき男が座っている。男は厳めしい顔で悠翔を見据え、口を開いた。
「小僧、名を申せ。どこの生まれだ? その奇妙な服は何だ?」
悠翔は内心、緊張していた。だが、彼の厨二病はそんな弱気を許さない。彼はマントを翻し、立ち上がった。
「ふん! 俺の名は黒崎悠翔、闇の使者にして時を統べる者! 俺の服は、未来の戦士の装束だ! 貴様らのちっぽけな時代に、俺の偉大なる使命を果たすために降臨した!」
年配の役人は眉をひそめたが、清十郎はクスクスと笑っている。悠翔は内心、「よし、乗ってきた!」と拳を握った。彼の経験上、厨二病全開の口調は、相手を圧倒するか、笑わせるかのどちらかだ。どちらにせよ、注目を集められる。
「未来だと? 小僧、戯言を言うな。幕府を愚弄する気か?」年配の役人が声を荒げた。
「ふっ、愚弄だと? 俺は真実を語る者だ! この時代、貴様らは外敵の脅威に怯え、開国か鎖国かで揺れている。だが、俺は知っている! 開国は破滅への第一歩! 俺がこの国を救うため、歴史を正す!」
悠翔の言葉に、部屋が静まり返った。清十郎が目を細め、口を開いた。
「ほう、開国が破滅だと? 面白いことを言うな。黒船が来て以来、幕府も頭を悩ませている。貴様、未来から来たとほざくなら、何か証拠を見せろ」
悠翔は一瞬、焦った。証拠? そんなもの、持っていない。だが、彼の厨二病はここでも彼を救った。彼はポケットからスマホを取り出し、電源を入れた。幸い、バッテリーはまだ生きていた。画面に映るカラフルなアイコンに、清十郎と役人が目を丸くする。
「これは……何だ? 絵が動いている!?」
「ふん! これぞ、未来の叡智が詰まった魔導具『スマートフォン』! 俺の知識と力を証明する聖なる器だ!」
実際、悠翔はスマホで何をどう見せるか、具体的なプランはなかった。だが、彼は適当に画面をスワイプし、ゲームアプリの派手な戦闘シーンを見せつけた。爆発音と光のエフェクトに、役人たちは完全に圧倒された。
「こ、これは……! 妖術か!?」
「ふっ、妖術などと呼ぶな! これは科学の極致、未来の力だ! 俺はこの力を使い、この国を外敵から守る!」
清十郎が立ち上がり、悠翔の肩を叩いた。
「よし、黒崎悠翔。お前、面白い奴だ。しばらく奉行所で預かる。だが、もし嘘をついているなら、その首、飛ばすぞ」
悠翔はニヤリと笑った。内心、「マジで首飛ばされるとかヤバい!」と思いながらも、表面上は余裕の表情を崩さない。
「ふん、試してみるがいい。俺の闇の力は、貴様らの想像を超える!」