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第一章:異世界への降臨

「ふん、この世界も所詮、俺の掌の上で踊る駒にすぎん!」


中学生二年、黒崎悠翔くろさき・ゆうとは教室の片隅で、黒いノートに赤ペンで「闇の使者」と書き殴っていた。背中には自作の黒マント(実は部屋の古いカーテン)、手に持つは100円ショップのプラスチック製の魔剣(自称:エターナル・ダークネス)。彼の心は、常に「選ばれし者」としての使命感で燃えていた。いわゆる「厨二病」全開の少年だ。


「黒崎、うるさいよ! 静かにしなさい!」担任の山田先生が教壇から一喝。クラスメイトの視線が一斉に悠翔に集まる。だが、彼は動じない。むしろ、その視線を「愚民の嫉妬」と受け止め、ニヤリと笑う。


「ふっ、山田よ。貴様の言葉は俺の闇の魂に届かぬ。いずれこの世界は俺の真の力を知るだろう!」


「はいはい、放課後、職員室ね」と、山田先生はため息をつき、授業を再開した。


放課後、悠翔はいつものように近所の神社に足を運んだ。この神社は、誰も来ない寂れた場所で、彼の「闇の儀式」の舞台だった。鳥居の前でマントを翻し、彼は自作の呪文を唱える。


「闇よ、集え! 時を裂き、俺を真の戦場へ導け! ディメンション・ブレイク!」


その瞬間、境内が一瞬だけ眩い光に包まれた。悠翔は目を閉じ、「ついに来たか!」と心の中で叫んだ。だが、次の瞬間、彼の体は地面に叩きつけられ、意識が遠のいた。


目を開けると、そこは見慣れない世界だった。空は青く、遠くには茅葺き屋根の家々が連なり、道端には着物姿の人々が歩いている。馬のいななき、刀を腰に差した武士の姿。悠翔の心臓がドクンと高鳴った。


「ま、マジか……! 俺、タイムスリップした!? ふはは! ついに俺の力が覚醒した瞬間だ!」


彼は立ち上がり、マントをバサリと翻す。だが、すぐに異変に気づいた。周囲の人々が彼を奇異な目で見ているのだ。着物姿の農民、町娘、果ては武士までが、悠翔の現代風の制服とマントにざわついている。


「おい、あの者、何だ? 異国の者か?」


「見たことのない服だな。怪しいぞ」


悠翔は一瞬、気圧されそうになった。だが、すぐに「これはチャンスだ」と胸を張る。彼の厨二病は、こんな場面でこそ輝くのだ。


「ふん、愚民どもよ! 俺の名は黒崎悠翔、闇の使者にして時を統べる者! 貴様らのちっぽけな世界に、真の力を示しに来た!」


その場にいた町人たちはポカンとした表情を浮かべたが、一人の若い武士が前に進み出た。背は高く、眼光は鋭い。腰の刀に手をかけ、悠翔を睨みつける。


「貴様、どこの者だ? そのふざけた口調、幕府を愚弄する気か?」


悠翔の心臓が再び高鳴った。武士だ。本物の武士だ! 彼の脳内では、すでに自分が「闇の剣聖」としてこの武士を圧倒するシナリオが完成していた。


「ふっ、愚弄だと? 貴様こそ、俺の力を知らぬ無知な犬にすぎん! さあ、剣を抜け! 俺のエターナル・ダークネスが、貴様の魂を闇に葬る!」


彼はプラスチックの魔剣を構えた。武士は一瞬、呆れたように眉を上げたが、すぐに笑い声を上げた。


「ハハッ! 面白い小僧だ。よかろう、名を聞こう。拙者、佐藤清十郎。江戸の町奉行所に仕える者だ。貴様、何者だ?」


悠翔はニヤリと笑い、胸を張った。


「俺は黒崎悠翔、時を裂く闇の使者! この時代に降臨し、歴史を俺の意志で塗り替える者だ!」


清十郎はしばらく悠翔を見つめ、ふっと笑みを浮かべた。


「よし、面白い。町奉行所まで来い。貴様の言う『力』とやら、拝見させてもらおう」



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