表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/8

 3月、中津川慶太の卒業式の日、お母さんと中津川義之さんは、市役所に婚姻届を出した。あたしと中津川慶太は外で待ち、愛梨ちゃんはお母さんたちと一緒に窓口に行っていた。

 あれからあたしたちは、何度もご飯を食べに行ったり、遊園地に行ったり、動物園や水族館に行ったり、スケートに行ったり……そうやって少しずつ心の距離を縮めて行って、愛梨ちゃんとも最初の頃とは比べ物にならないくらい仲良しになれた。

 5人で出かけるのは、賑やかで楽しかった。もちろん、それ以上に、中津川慶太と一緒にいられることが楽しかったんだけど。

 どこからかあたしたちの関係が漏れて、ヒロとシホには詰問まがいに根掘り葉掘り訊かれたし、知らない女子から思いっきり睨みつけられたりもしたし、知らないうちに鞄の中に呪いの手紙を入れられてたり、机の中にワラ人形が入ってたりもしたし、そうかと思うといきなり「友達になろう」なんて言ってくる子たちもいたし……だけどその程度で、呼び出されてリンチ、なんてことはなくてホッとしている。

「愛梨、お前の似顔絵、一所懸命練習してる」

「ほんと!? 見せてくれればいいのに」

「可愛く描けたらプレゼントするんだってさ」

「わー、楽しみー」

「モデルが可愛くないんだから無理だと思うけど」

「なに!?」

 あたしが睨みつけると、中津川慶太は「冗談冗談」と言って笑った。

「……お姉ちゃんができて嬉しいってさ。本当はずっとお姉ちゃんがほしかったんだって。兄としては複雑な気分だ……」

「一緒に暮らし始めたら、すっかり本物の仲良し姉妹になっちゃうかもね。にーにの入る余地なし!! みたいな」

「そうならないように、頻繁に帰るさ」

 やだ、嬉しすぎて顔がニヤけちゃう……。

 寮があるのは新幹線を使えば一時間くらいの距離のところだけど、それでも毎日のよう会えていた今までと比べれば、とんでもなく遠いところに行ってしまう気がして、あたしの心は寂しさでいっぱいだったから。愛梨ちゃんのためだとしても、帰ってきてくれるのはほんとに嬉しい。

 ……帰ってきたら、やっぱり泊るんだよね……一つ屋根の下、過ごすんだよね……。

「どうした? 顔が真っ赤だぞ?」

「えっ!? い、いや、あっ、暑いな~今日は」

「……寒いだろ」

 訝しそうに、中津川慶太があたしを見る。

「お待たせ」

 ナイスタイミングで、三人が戻ってきた。あたしと中津川慶太は「おめでとう」と声を揃えて言った。お母さんの幸せそうな顔を見て、心の底からそう言うことができた。

 だって、一番好きな人に、一番好きになってもらうのって、奇跡みたいなことだから……今のあたしには、それがよくわかる。

 そうしてあたしは、柴原瑛から、中津川瑛になった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ