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「柴原瑛」
翌日、中津川慶太がまたあたしをフルネームで呼んだ。そういえば、お母さんに電話する時、「瑛ちゃん」なんて呼んでいたっけ……あたしはブルッと身体を震わせた。
「……あの、学校で声かけてくるの、やめてくれます?」
それがあたしにとってどんなにリスキーなことなのか、この人は全然わかってない。
「じゃあ、どこで声かけりゃいいんだよ。わざわざお前んちに行けってか?」
「……何か御用でしょうか?」
「何だよその言い草……お前みたいな性格の悪い女、初めて見たわ」
あたしはムッとしたけど、当たってるだけに言い返せない。だけど、あたしの性格の悪さは、あんたといる時限定だから!!
っていうか、あんたもそんなに性格良くないよね? 誰よ、性格イイとか言ってんの。それとも、あたしにだけ冷たいってこと?
「……今度の日曜、愛梨の運動会なんだ。お袋さん来てくれるみたいだけど、お前は来てくれんのかなと思って」
なんであたしが……そんな話、聞いてないし……って、話さないんだから当然か。結局あの後も、お母さんとはまともに口をきいていない。このまま永遠にギクシャクしたままなんじゃないかとさえ思う。
「まだ無視してんのか」
呆れたように、中津川慶太が言った。
「昨日のことでわかったろ。お袋さんは、お前のこと大切に思ってる。じゃなきゃ、あんなに心配するか」
「……わかってる……そんなの、わかってるよ……」
「だったら、もういいだろ。試すようなことするなよ」
「別に試してるわけじゃ……」
「じゃあ、ガキくさい態度はやめろ」
まただ、この偉そうな態度……ムカつく。
「……わかった。あたしも行く。大人だってこと、見せてやるわよ」
「その言葉、忘れんなよ」
ええ、忘れませんとも。物分りのいい大人の振りして、社交辞令のひとつでも言ってやるわよ。見てなさいよ、中津川慶太。すべての女子があんたにキャーキャー言うと思ったら大間違いなんだからね!!




