俺は地獄の騎士アンチョビ百十度之助、平熱は110℃だぜ!風俗街の中に小屋を建てて寝るぜ!あと紙粘土で課長の金の肩も作るぜ!水って美味いよな、この前初めて飲んだけどあれすげぇな!あと、イラストもあるぞ!
うんこしっこきんたま禁止企画第1弾! 今作にうんこしっこきんたまなどの面白ワードは一切出てきません!
これ企画にしたらほとんど全員参加になるのでは?
「あっちいけよ」
俺は幼い頃からいじめを受けてきた。俺をいじめるやつが先生に怒られた時にいつも言うセリフがこれだ。
「近くにいると暑いんだもん」
体育の時間も1人。プールにも入らせてもらえない。先生も一緒になっていじめてくるんだ。人を叱る立場の人間がひどいよな。まったく、平熱が110℃なのがそんなに悪いって言うのかよ。
俺がこれまで受けてきたいじめは多岐にわたる。居眠りしている俺の体の上にスルメを置いて炙るやつ、冬になるとその時だけ近寄ってくるやつ、人の背中で焼肉をやるやつ。
でもいいのさ! 俺はもう社会人だ! 社会にはいじめなんて存在しないだろ? 大人になってもいじめをしているやつなんているわけないよな、ダサいしバカだしありえない!
「アンチョビ! お前のせいで今月だけで社員が84万人も火傷したんだぞ! 社の5分の1の人間を病院送りにしやがって! このっ!」
そう言って課長の卵菓子瀬州世須 拓也が俺の頬を肩で殴った。
課長の肩は消し飛んだ。部分的に体温を操り、左の頬だけ60000℃にしていたからだ。課長はちょっと怒っている。何怒ってんだよ、俺の方が可哀想だろ。
俺は会社を抜け出し、100均に駆け込んだ。紙粘土を買うのだ。さすがに肩を消し飛ばしたのは大人げなかったと思うので、作って肩にはめてあげるのだ。
課長の肩って何色だっけか。ググってみよ⋯⋯あ、金か! 金かぁ⋯⋯
うん、無いな。さすがに金の紙粘土は無いわ。高いお店に行けば置いてあるかな? 高いお店? ⋯⋯エッチなお店!?
俺は100均を飛び出しJR岐阜駅の斜め前にあるお店街へ向かった。16時間ほど歩いた。
現在午前6時。どこもまだ開店していないようだ。
昼間なんていつも客引きばかりで賑やかな街なのだが、この時間に来てみるのもいいなぁ。こういうところって煌びやかなイメージだけど、意外と年季の入った建物が多いんだな。店の外で食べられる串カツ屋がありそうな感じだ。
居心地が良かったので、俺は道端に家を作って寝ることにした。外はまだ明るいので、カーテンを閉め、電気を消す。
のちに俺は、ここで体験した心霊体験を地上波番組で語ることになる。
『寝ていると、背後から男のうめき声のような、とても低い声が聞こえてきました。私はムカつきました。
ふと窓の方を見ると、閉まっているカーテンが揺れていました。なんで揺れてるんだ? おかしいな、窓は開けてないんだけどな。そう思いながら見ていると、揺れているカーテンの隙間に一瞬だけ男の姿が見えました。こちらを見ているようでした。私はムカつきました。
私は警察に通報し、この男を捕まえてくれとお願いしました。しかし、捕まったのは私の方でした。なんでも、風俗街の道路に勝手に小屋を建てて寝てはいけないそうなのです。さっきの男は私の小屋の前にある店の黒服さんだったのです。あ、あと普通に幽霊もいました。天井とか壁とか私の背中とかに張り付いてました』
金色の紙粘土が無いのなら仕方がない、自分で作ってやる! 俺はそう思い、金ピカ大王の元へ新幹線で向かった。出発時間は12時10分。到着時間は11時30分だった。ちょうどマイナス40分でここまで来られたのだ。
昼時ということで、金ピカ大王はご飯を奢ってくれると言った。俺はご飯が嫌いなので断った。ここ五十八十年は何も食べずに生きているのだ。あ、牛丼だけは毎日食べるよ。
金ピカ大王は金ピカを5つくれた。108円取られたが、まあそんなもんだろう。俺は100均で紙粘土を買い、家に帰った。
課長の肩を作るくらいなら1金ピカで十分なので、4金ピカ余ることになる。1金ピカ1国と言われており、売ると目玉が飛び出して警戒色(警告色)のちゃんちゃんこを着た少年の父親になってしまって帰って来なくなるほどの現金が手に入る。要するに8000円だ。
俺は国などいらないので、4金ピカは自宅で飼っている昆虫ゼリーに装着することにした。1金ピカを混ぜ込んだ金ピカの紙粘土を上手く課長の肩の形に成型し、乾かしてゆく。乾いたらマジックペンで『退職願』と書く。
翌日出社すると、課長の肩には部長が装着されていた。部長の名前は爪という。苗字はないらしい。さてどうしたものか⋯⋯この金ピカの肩は無駄になってしまうのか?
「お、アンチョビ来たか。ん? その金ピカの肩はもしや⋯⋯私のために?」
「そうです。徹夜して作ったんです(本当は33時間しかかかってない)」
俺はそう言い、潤んだ目を課長に向けた。ぴえんビームだ。
「そこまでして私のために⋯⋯! せっかくだし、部長を外してそれをつけさせてもらうよ!」
「しかし、そんなことをしたら部長の命が⋯⋯!」
部長の命は無くなり、魂は永遠に地獄の底をさまよい続けることになる。だが俺はそれでいい。心配するふりをしているのだ。
「いいんだ。部長この前、『俺の夢はなんだと思う? 地獄の底をさまよい続けることさ!』って言ってたし。こんなに早く夢が叶って良かったじゃないか」
「じゃあいいですね、はい、どうぞ」
「ああ、恩に着るよ」
課長は部長を取り外すと、コンビニのゴミ箱へ捨て、俺の渡した金ピカの退職願肩を装着した。
「退職願、受け取ってくれましたね」
俺は確認した。
「えっ!? あ、ホントだ。中身は?」
「自分で採掘してください」
俺は会社を飛び出し、コンビニに寄った。今日からここが俺の職場かぁ。よし、頑張るぞ!
「あの、あなたの上司ですよね、ゴミ箱にイケメンのおじさん捨てたの。家庭ゴミの持ち込みは禁止なんですけど」
「家庭ゴミじゃなくて職場ゴミです」
「そうですか、なら大丈夫です」
俺はコンビニ内を物色し、ピーナッツとチロルチョコと蒙古タンメン中本のカップラーメンを万引きした。
ピーナッツを食べながら外に出ると、店の前にドイツ人選手が20人並んで立っていた。なんの選手かは分からないが、全員Tシャツの胸のあたりに『ドイツ人選手』と書いてある。
「すみません、何の競技の方なんですか?」
俺は1番ガリガリの弱そうなやつに聞いてみた。
「うるせぇ!」
日本語で怒られた。なんなんだよコイツ、こちとら地獄の騎士アンチョビ様だぞ。平熱110℃やねんぞ。
「ノーチュッダロイキサラム・オアハンカン・ゲノエイノ・レオ!」
俺はそいつの顔に触れ、いつもの呪文を唱えた。ガリガリドイツ人選手の身体はみるみるうちに溶けていった。ガリガリドイツジュース(オリーブオイルごま油ラード味)通称GDJの完成だ。
GDJを瓶に入れ、電車で自宅へ向かう。中々ぎゅうぎゅうな満員電車だったので、GDJの瓶を開け、車両内にばらまいてみた。
その頃、課長は肩の退職願を採掘していた。
「ふぅ、神経繋がってるから痛てぇんだよなぁ。ほら、もうこんなに汗ダラダラ⋯⋯って誰に言ってるんだ私は」
しばらく掘り進めると、ぐしゃぐしゃに丸められた小さな紙が埋まっているのを見つけた。
「よし、もうひと息だな!」
その後、課長はやっとの思いで紙を取り出すことが出来た。その紙にはこう書かれていた。
「労いの言葉を⋯⋯! ごくろうさんなのは、お前の方だよ⋯⋯今まで、ありがとうな」
課長は感極まって泣いてしまった。その涙は水溜まりとなり、川となり、やがて海になった。地球の海と陸の比が10:0になったのだ。
その結果全人類の足がヒレになり、人魚と呼ばれる生き物へと変貌していった。課長は紫色のまま人魚になったため、毒ありと噂されている。人間の時から毒ありそうだったけどな。
俺は海の底に沈んだ満員電車の中にいた。せっかく車両内で液体を撒き散らしたのに、海の底に沈んでしまったんだ、全くもって無駄だったわけだ。
故障したらしく扉も開かず、俺たちは永遠にこの海の底に居続けるしかないという状況だった。そんな状況を覆したのがあの女だった。
その女は、この海の底に突如として現れた。その女の出現によって海底の景色は真っ赤に染まり、熱気すら感じるようだった。
ゆっくりとこの満員電車に近づいて来るその女のおっぱいは、まるでおっぱいの形に切ったお刺身のようにボインボインと揺れていた。
「我が名は羅生門殺鬼。お前の上司の願いを受けて地獄から参上した」
地獄? 上司? ⋯⋯もしや、部長!? あんなになってまで俺の事を心配してくれていたのか! ていうか、羅生門殺鬼だって!? 羅生門殺鬼といえば、猫大長老七宝大先生の超大作『ウミマロ』に登場する(まだ全然登場してないしまだ3話くらいしかない)地獄の主じゃないか!
「握手してください!」
彼女の身体は灼熱だという噂があるが、俺も灼熱だ。彼女に触れられる人間は恐らくこの世に俺しか存在しないだろう。
「残念だが、私は四肢がないんだ。世主という極悪神に奪われてしまってな」
世主といえば『ウミマロ』に出てくる伝説の英雄じゃないか! 英雄なのにそんなことをするのか!
「とりあえずお前たちを助けてやろう。私の心を動かしたイケメン上司に感謝するのだぞ」
やっぱ部長ってすげぇや!
殺鬼は満員電車に手をかざすと、「はぁ!」と言う声とともに腕に力を込めた。
次の瞬間、乗っていた満員電車は木っ端微塵に吹き飛び、俺たちは無事海の藻屑となった。
「よし、帰るか」
殺鬼は達成感を感じているような顔でどこかへ飛んで行った。飛行機かよ。
藻屑となった俺たちは、40年後もまだ海をさまよっていた。殺鬼に殺された者の魂は天国にも地獄にも行くことが出来ず、ただその場をさまようことしか許されないのだ。
人の世は、ドラマだと思う。同僚の人生が波乱万丈すぎてめっちゃ面白いんだ。彼は破天荒すぎていつも上司とやり合っているが、俺はどっちの味方もせずに見てるのが1番面白いと思うんだ。どっちか片方、または両方の味方をすると大変になるからな。
3000億年が経ち、俺たちはようやく人間らしい体になることが出来た。しかし、陸へ上がる術がないのでまだ海底にいる。そもそも陸って存在するのかな。
「ねぇダーリン、海底寿司行こうよ」
3000億40年前のあの日隣の席に座っていた彼女が言った。俺に一目惚れしていたらしく、藻屑の状態でもずっと想い続けてくれていたらしい。
「そうだねハニー、今日はちょっと良いとこ行っちゃおうか」
「ぺにょ!」
彼女は喜んでいる。俺は彼女の喜ぶ顔を見れるだけで幸せなんだ。ナンダナンダナンダ。
「へいらっしゃい!」
「トルティーヤとねぎ塩牛タン、あとバイキンマン。彼女には塩胡椒と塩を」
「へいかりこまりぃ!」
大将が買い物に行っている間は俺たちの相思相愛タイムだ。互いの目玉をナデナデし、逆立ちして将棋対決をする。
「歩!」
彼女がそう言って『屁』と書いてある駒を俺の王将の前に置いた。
「チェックメイトだ!」
彼女はノリにノッている。しかし俺も負けない。俺には切り札があるからだ。
「にんにく!」
そう言って俺は歩を1個動かした。
「死ねオラァ!」
彼女は俺の王将を手に取ると、2個隣のカウンターに座っていた中年男性に投げつけた。
「何しやがる貧乏人がぁ!」
中年男性は怒りを顕にした。嫌な感じだな。人のこと貧乏人だなんて。
「誰が貧乏人よ! あんただって同じ店で食べてるじゃないの!」
彼女の正論が炸裂する。
「俺ァ高級なもんを食ってんだ。ほれ、見てみろ。蟹とホタテと和牛とエビとアワビで出汁を取ったカレーだ。味が足りなかったから四川風麻婆豆腐もぶち込んだぞ。どうだ、これが金持ちだ」
味覚息してなさそう。「味が足りない」って何? そんな言い方するか? 具も小さい豆しか入ってないし、本当にこれ高級食材カレーなのか?
「俺は投資もやってて資産が30億円あるんだぜ。どうだ、羨ましいだろう。羨ましいと言え!」
さすがの俺も頭にきた。
「いくら金持ちでもバカにはなりたくねぇよ! 羨ましいわけねぇだろバーカ!」
そこに大将が帰ってきた。
「ママー! あのおじさんがひどいこと言うのーっ!」
中年男性が大将に泣きついている。おっさんがおっさんに泣きつく光景は見たくないし、俺のことおじさんって言うな。お前の方が100倍おじさんだわ。
「しょうがないなあ中年男性くんはぁ。はい、蛍光灯〜」
青い腕にまん丸真っ白の手の大将は、中年男性に蛍光灯を手渡した。
「ドラえもん、これなに?」
中年男性が不思議そうに聞いている。お前な、ドラえもんって言うなよ。なるべく名前出さないようにしてるんだから。あ、でもチロルチョコとか蒙古タンメン中本とか出てきてたな。食べてないからセーフ!
「いや、あそこの電気切れかかってるから交換して欲しいなって思って」
客使いの荒い大将だなぁ。
「アイアイサーッ!」
従順だなおっさん。おっさんはウッキウキで電気の所まで行って、インフルエンザウイルスのオブジェを踏み台にして古い蛍光灯に手をかけた。
「ちょっと待て、電気消すから!」
「えっ?」
ビリリリリリリリリリ
おっさんは感電死してしまった。
「水って電気通さないって聞いてたんだけど⋯⋯なんで⋯⋯ぐはっ」
感電死したのになぜか喋っているおっさん。
「ここは海水だからねぇ。しょうがないよ」
それを聞いたおっさんはにっこりと笑って目を閉じた。あとから聞いた話だが、感電死した後喋ってたおっさんは幽霊だったらしい。この体験も俺はのちに地上波番組『私はムカつきました』で語ることとなる。
俺は角を行けるところまで動かした。
「リーチ!」
そう言って彼女は六萬を場に出した。おい正気か? これ将棋だぞ。ダジャレか?
「兄ちゃん早くしてよ〜」
大将が俺を急かす。
仕方がない、ドラは捨てたくなかったが、出すか。
「ちょっと兄ちゃん、ドラを捨てるだなんて、ドラえもんであるあっしの悪口言ってるのと同じやでー?」
ドラえもんじゃないだろお前は! そう突っ込みたかったが、大将は左手に斧を構えていたので俺は何も言うことが出来なかった。
「腹減ったなぁ」
彼女が言った。そうだ、大将が帰ってくるまで2人で遊んでいようという話だったんだ。大将が帰ってきたんだからもうご飯タイムだ。
「ほい、トルティーヤとねぎ塩牛タンとバイ菌」
バイ菌⋯⋯こんなの頼んでないのに⋯⋯
「大将、俺が頼んだのはバイキンマンなんだけど!」
「うちは寿司屋だぞ! そんなもんあるわけねぇだろ!」
俺は正論には弱いんだよなぁ。俺はご飯を食べることが嫌いなので、トルティーヤとねぎ塩牛タンを見て2時間過ごした。彼女は塩と塩胡椒を2時間ひたすら舐めていた。
「大将、おあいそ!」
「あいよ! 492円ね!」
俺は30円払って店を出た。
「ねぇん、ちょっとホテル寄ってかなぁい?」
彼女が頬を赤らめて言った。赤すぎワロタ。
「そうだね、行こう」
俺たちは逆立ちのまま60km先のホテルまで歩き、入っていった。
いい雰囲気だ⋯⋯キスしたい。
彼女の顔を見る。
キスしてほしそうな顔をしている。
ぷくりとした唇。少しだけ見える前歯。その奥に見えるエビの頭。⋯⋯エビの頭?
ヂュルルルル
「エビの頭があったから吸っちゃったよ!」
「ごめんね、海底だから許してよ」
涙を溜めたキラキラ光る瞳で見つめてくる彼女。そんな顔で言われたら許さない訳にはいかないよなぁ。俺は彼女を置いてホテルを出た。スマホの連絡先からも消し、彼女のいる海域には2度と来ないことを誓った。
急に終わるのかよ!
感想待ってるわよ(♡ω♡)