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第4話 予兆

「で、気になる子って誰のことなの?」

「お前の知らないやつだよ」

「同じ学校じゃないの!?」

「違う」


 マックドにて。俺はスプラットなる炭酸飲料を飲みながらアップルパイを食べていた。うん、ここはやっぱりこれだな。


 奏季は紅茶を飲みながら信じられないという表情を浮かべている。俺は色々隠そうと思ったがもう諦めていた。まあ親友だし大丈夫だろう。


「どこで知り合ったの?」

「うーん、ネット?」

「えぇ!?」


 思わず耳をふさぐ。


「急に大声出すなよ」

「あ、ごめん、あまりに驚きすぎて……」


 奏季が自分を落ち着かせるように目の前にあったポテトに集中する。勢いよく減っていく様子に目を見開いた。細っこい体に吸い込まれていく様子はある意味異様だ。


「ふぅ、ごちそうさまでした」

「はやっ」

「やっぱり美味しいね。それで、どうして知り合ったの?」

「趣味が一緒だった」

「ふむふむ、何の趣味?」

「……アイドルの?」


「ゴホッ」


 奏季が勢いよくむせる。


「大丈夫かー?」

「今日、何度僕を驚かせば気がすむんだ!」

「お前が聞いたんだろーが!」

「だからってアイドルだとは思わないよ! 響くんって勉強にしか興味ないじゃん!」

「いや、お前の俺のイメージひどすぎないか!?」


 奏季の俺に対するイメージがあまりにひどくて結構ダメージを食らう。俺ってそんなに何にも興味なさそうに見えるのか……。


「いや、俺だってアイドルの一人? 一グループ? くらいハマるぞ……」

「そうか……君はそっちの世界の人間だったのか……」

「いや、何か勘違いしてるようだけど『ラ・プルェーブ』だからな?」

「あーなるほど!」


 奏季は納得したように大きく頷いた。ラ・プルェーブは性別・年齢問わず広く受け入れられている。ライブ行くほど熱烈なファンでなくとも多くの人がファンであるため、俺がファンでもそこまで不思議じゃないと気づいたようだ。


「それで出会ったのかぁ。ねぇ可愛い? 美少女?」

「……お、おう、美少女、だと思うぞ」


 すごく変な子だけど、というのは呑み込んだ。奏季が目を輝かせて顔を近づけてきたせいで呑み込まざるを得なかった、とも言える。


「美少女なの!? え、見てみたい! 写真とかないの!?」

「あっても見せねーよ!」

「え、いいじゃん!」

「プライバシーってもんがあるだろうが!」


 さすがにあんな可愛い写真見せれるか! 奏季があいつに惚れたら俺発狂するからな!?


「残念……見たかったな……響くんのケチ……」

「いや、至極当たり前のこと言っただけだわ!」


 容姿端麗な奏季があいつに惚れたら俺に勝ち目なんてないしな。それにあいつの可愛いところは俺だけが知ってればいい。


 と、ここまで考えて俺はハッとする。何考えてるんだろ、あいつは俺のものじゃないのに。なんでこんなに独占欲発揮しているのか、わからない。


「……まぁ、勝手に写真見せるとかマナー違反だよな、多分」

「なんか言った?」

「いや、なんでもない」


 そういうことにして自分を納得させる。何か、気がつかなければいけないことに気がついていないような、そこはかとない気持ち悪さが残った。


「ま、とりあえず俺帰るわ」

「逃げるんだ……もう響くんと口聞かない……」

「小学生みたいなこと言うな」

「小学生じゃないし!」


 奏季は小柄で童顔だからどうしても年齢が下に見られがちだ。それがコンプレックスらしく、急に元気になる。


「はいはい、じゃあ高校生らしく機嫌なおしてください」

「むぅ」


 口を尖らせる。女顔でそれをやるんじゃない! 可愛すぎるわっ!

 今日何度目かわからない感想を抱く。


「じゃあ、また明日な」

「うん。また明日〜。その子に写真見せる許可もらってきてね!」

「気が向いたらな」

「絶対だよ!」


 どんだけ見たいんだよ。俺は思わず苦笑した。



 マックドを出るとすでに夕方だった。

 思わず早足になる。なぜか、無性に美亜と話したかった。


 いつも15分はかかるのに、10分で家に着く。部屋に着くとカバンを放り投げてスマホを開いた。

 しかし、真っ先に目に入ったTL(タイムライン)上の美亜の呟きに、俺は固まる。


『もう嫌……どうしたらいいの……?』


 何があったのか。俺の胸の奥底に不安が広がったのだった。





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