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4 校則の意義

「あー! ミルミルおっそいじゃん! 何してたじゃん⁉」


 年中雪景色観光客への売りであり、住民へのデメリットである北欧地方。


 辺りは積雪五十センチはありそうだが、熱魔法の整備により茶色い砂がきめ細かく見えるグラウンド。


 そのど真ん中で、手と金色のサイドテールを揺らす褐色肌の少女の元へ、息を切らせながら向かう。


 少女は満面の笑みで私を待っていた。


「はぁ……はぁ……。え、えっと、アウトフッド先生と、ちょっと、話してて……」


 魔法が使えないだけではなく、体力もない。


 胸に膝に手を置き、息を整えながら級友改め、ジュリンの質問に答えた。


「えー? オバフッドと話してたじゃん⁉ チョー時間の無駄じゃん! 何で話したじゃん? 無視すれば

よかったじゃん!」


「え、えっと……。先生からの話だし……む、無視するのはよくないんじゃ……」


 ぐいぐいと迫る勢いで質問を繰り替えずジュリン。


 手を前に突き出し、ガードするも、ジュリンは無意識で十四歳にしては……いや、イチ女性としても大きいであろう胸を当てながら、近づいてきた。


「何でじゃん! アイツいつもえらそーでムカつくじゃん!」


「せ、先生が偉いのは当たり前なんじゃ……」


 言葉の圧と胸に押しつぶされそうになる。

 

 ……どうして同い年なのに、差があるのだろう。胸と魔法力って比例するのかな……?


 どんな論文も乗っていない下らぬ所説は、自身の絶壁を見て思いついた。


「そうとは限らないこともあるじゃん! ジュリンね? この前スカート短かすぎっておこられたじゃん⁉ 

アレ、チョーイミフ!」


「そ、それは校則を破ったジュリンが悪いんじゃないかな……?」


「そう、それ! その校則がイミフなの!」


「え? え?」


 頭の上に複数のはてなが浮かぶ。

 

 校則がイミフ……? 校則は絶対に順守するものと捉えている私にとっては、それこそ理解不能な発想だ。


「だって何でスカート短いとダメじゃん?」


「それは……ふ、風紀が乱れるから……?」


 太もも丸出しのスカート、寒いのにワイシャツのボタンを二つも開けているジュリン。


 悪いが、風紀がなさすぎる。


「んなこといったらミニスカート履いてる魔法使いのいる場所全部、風紀乱れてるじゃん」


「あっ……! た、確かに……!」


 それはなかった発想だ。


 そして、筋の通った発想だ。


「スカート短い魔法使いは実力無いって訳でもないじゃん。現にジュリンの実力、学年トップクラスだもん」

 

 ふふんっと鼻を高くするジュリンは言っていることは全て正しかった。


 彼女のスカートは年々短くなっているが、それに比例するかのように実力が上がっているのも事実。


 胸だけでなく、スカートも関与いている……? 


 自身のスカート丈は、やはりクラスの中で一番長かった。


「だからイミフじゃん! ミルミルみたいにスカートなげけりゃ成績がいい訳でもないじゃん!」


 ジュリンの発した何気ない一言が、ズドンと心に突撃した。

 

 ジュリンに悪気がある訳ではない。それはよく分かっている。


 でも、


「あ、はは……。それは、その通り、だね……」


 傷つかない訳ではない。


 この傷がバレないよう、伏し目がちに苦笑をする。


 きっと、ジュリンも私を傷つけるために言ったんじゃない。


 だからこうするしかなかった。


「だからジュリン、オバフッド嫌いじゃん! ミルミルも、オバフッドの言うことなんか聞かなくていいと思うじゃん!」


「えっ……。で、でもそれはどうかとーー」


「そうよ。ミルを悪の道に引きずり込まないで頂戴」


 ジュリンの背後から現れたリリは、持っていた教科書でジュリンの頭を軽く叩いた。


 しかしそれはリリにとっての軽くである。第三者の私からすれば、強打である。


「うだっ! ちょ、リリ! 髪が乱れるじゃん!」


 頭を押さえるジュリン。


 そこまで、髪が乱れたようには見えないけど……彼女なりのこだわりがあるのだろうか?


「んなことでいちいち乱れないわよ。それより授業、始まる」


 リリはくいっと顎を動かし、朝礼台の方向へ向けた。


 視力だけは良い私は、そこにいる魔法使いの様子が鮮明に見えた。


 身長二メートルはありそう。そして真っ黒なローブに身を包んだ男の人、だろう。


 きっとあの人が、新しい先生。


「えー! まだあと一分あるじゃん!」


「五分前行動、三分前集合」


「えーー! ちょ……! リリ横暴じゃん!」


「はいはい、そーですね」


 喚くジュリンなどお構いなしに、リリは彼女の襟を掴み、クラスメイト達が集まり始める朝礼台の前まで引きずる。


「あ、待って……!」


 初めはポカンとその様子を見ていたけれど、三分前集合をしていないのは私もだと気づき、すぐさま二人を追った。



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