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第9話 負けられない戦い

「あれ、開かない」


 病室へ行ったが、今日は扉が閉まっていた。

 諦めて時間を待った。



 不眠不休の二日目となって、夜明け。

 時間の許す限り俺は素振りを続け、クリスタル製造も続け、経験を()んだ。今やレベルは『19』となった。基本剣技スキルもアップさせ、能力値(ステータス)随分(ずいぶん)と上昇した。


 これだけあれば充分だろう。



「――時間か」



 騎士団を出て、いよいよコロシアムへ向かう。



「ここか」



 待機所に入っていくと、分隊長ユピテルとカイルの姿があった。二人共こちらを意外そうに見つめ、珍獣でも見るかのように観察してきた。なんだよ、その目!



「よく逃げないで来れたな」

「よろしく」



 適当に挨拶(あいさつ)し、闘技場へ。


 向かい合った。



「レイジ、逃げるなら今だぞ」

「逃げない。お前を倒して、俺は出世する」


「そうかよ。じゃあ、ここで終わりにしてやるよ」



 ユピテルの説明が始まった。


「ルールは簡単だ。相手をダウンさせた方が勝利。殺人は認められない。双方いいな」



 俺は静かに(うなず)く。



「ちぇ、殺しはなしかよ。つまらねえ」



 不服そうに舌打ちするカイル。

 そういえば、俺を殺すとか言っていたな。



 剣を構え合う。



「ほう、その刀はラティヌスの……メイドの刀を盗んだか?」

「借りたんだ。お前を倒す為にな」


「……やれるモンなら、やってみな!!」



 いきなり高速移動を始めるカイル。

 早い。けれど、マーカスの助言通り、それほどではない!


 俺は初撃を回避。



「――――たぁっ!」

「―――なんだと!」



 避けられた事に驚くカイル。



「き、貴様! おのれえッ!」



 ブンと刃が飛んでくる。

 火力はあるらしく、かすっただけで頬から出血した。



「やべぇ、まともに食らったら死ぬな」



 なんとかして、ヤツからダウンを奪う。

 刀を構え、俺はダッシュ――からの、ハイジャンプした。宙を舞い、そのまま刀を振り下ろした。


「うぉぉぉぉぉぉッ!」

「ぐぬっ!」


 ギンと鈍い音がして、ヤツは俺の攻撃を剣で防御した。やっぱり、簡単にはダウンしてくれないか。ならばと、そのまま()りを入れた。



「――――がはっ!!」



 その光景に観客が()く。



「おいおい、ウソだろ」「カイルが押されているぞ」「あれって雑兵だろ?」「ありえねー、ありえねー」「どこであんなレベルアップを?」「鍛えているところは見たけど、強すぎだろ」



「くっ……レイジ、てめぇ」


「降参するなら今の内だぞ」


()めた口を!」



 地面の砂を()り上げてくる。

 目潰しってわけか……くっ。


 目を潰された。なにも見えない。



「……くそ」



「油断するからそうなる! 所詮(しょせん)、お前は雑魚中の雑魚。騎士になんて成れねぇんだよ!! 大人しく一生雑兵してろ、ガキが!!」



 背後から気配がする。

 目が見えなくたって、動きが読める。

 そうさ、俺は伊達(だて)に修行していたわけじゃない。この日の為に苦しい思いをして力を付けてきた。負けるワケにはいかない。



「カイル、お前の負けだぁぁぁ!!」


「なっ!?」



 たとえ気配であっても、相手の動きがあまりに遅く視えてしまい、俺はもう勝つしかなかった。



「てやぁ!!」


「バ、バカなああああああ!!」



 カイルの剣を弾き飛ばし、そのままブン殴った。



「ぐああああああああああああああああ!」



 吹っ飛んでいく体。

 しんと静まり返る会場。


 やがて……



「うおおおおおおおおお!」「すげえええ!」「カイルが負けたぞ」「まじかよ!」「雑兵のクセにやるなあ!」「レイジだったよな」「へえ、ウチに欲しいな」



 などなど歓声が上がった。



 誰かからヒールを受けて視界が回復。俺は静かに背を向け、分隊長の元へ。



「……レイジ、お前の力は認めよう」

「では、廃棄担当に」


「いや、そうはいかん」


「は?」


「お前は騎士団から追放(・・)する」



「!? な、なに言ってんだ、分隊長! 俺は勝ったでしょう!」



「黙れ、雑兵。いや……平民。もうお前は兵ですらない」

「ふ、ふざけんな! 約束が違うぞ!」



「分を(わきま)えろ小僧!!」



 唐突に剣が鳩尾(みぞおち)に入り、俺は倒れた。



「…………は、はえぇ……」



 ◆



 意識を取り戻すと、俺は知らん天井を見上げていた。病室でもないし、俺の部屋でもない。どこだ、ここ……。



「……俺はどうなった」

「キミは騎士団を追放になったんだよ」



「あんた……三大騎士『ライトニング家』の……」



「私はエドウィンさ。エドウィン・ライトニング。ここは私の家でね。君を招いたのだけど……いけなかったかな」


「助けて、くれたのか?」


「そうだよ。だって、君は騎士団を追放されたんだろう。ならさ、私が君を雇うし、以前よりも上の位を授けよう」



 な、なんだこれ……夢?

 思わず、俺は頬を引っ張る。



「ああ、これは夢じゃないよ。本物だ。ああ、そうそう……ルシア様がどうしても、家に来たいという申し出があってね。今後、彼女が面倒を見てくれる」



 エドウィンが指を鳴らすと……扉の向こうから、ルシアの姿が。うそ……ライトニング家に来てくれたのか。俺の為に?



「……どうなっているんだ」

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