第7話 武器を貸して貰った
支援スキルを受けたまま、俺は修行に励んだ。
「いち、にい、さん……。ひゃく、ひゃくいち、ひゃくに……。せん!」
素振り千回を終えた。
腕立ても百回を超えた。
背筋とスクワットも加えて、メニューを強化。
汗水を滝のように垂らした。それに加えて日々の雑務。カイルやジョンの嫌がらせも多数受けていた。……許せんが、我慢だ。耐える。今は耐えて自身のパワーアップに務める。復讐は決闘でつければいいのさ。
「はぁ……、はぁ……。もう夕方か……明日には決闘だ」
「レイジさん、お疲れ様です」
清潔なタオルを差し出して来るラティは、少し心配そうに俺に近づいて来た。それをありがたく受け取り、汗を丁寧に拭う。
「ありがとう」
「もう何時間寝ていないんですか?」
「四十時間以上は超えただろうね」
「そんなに……心配です」
「心配してくれるの?」
「当たり前です! レイジさん……これ以上は貴方の身が持たないです。どうか、お休みになられては……」
俺は首を横に振った。
「今寝てしまったら三日は眠りにつく自信がある。すまないけど、俺は明日の決闘にどうしても勝ちたい。でなければ、ここまで頑張った意味もない」
「ですが……いえ、応援しています。それで、その、良ければですが、わたくしの武器をお使いになりますか? 桜花かアヴェンジャーをお貸しします」
「あの刀かフランベルジュを? いいのかい?」
こくっと頷く。
今の俺に武器は何もない。
あるのは素振り用の枝だけ。
丸腰で挑むなんて馬鹿な真似はできない。もし間に合わなければ、誰かに土下座して剣を借りるつもりだったけど、助かった。
「それじゃあ――刀の方を。こっちの方が軽そうだし、扱いやすそうだからね。特訓して貰った時も刀を使って馴染んでいるから」
「そうですね、どうぞ。この刀は、レイジさんにピッタリだと思いますし」
「俺にピッタリ?」
「ええ、軽量なのもそうですが、スピードも出やすいですし、火力も高い……そう、火力が高いんです。刀に特殊能力があるんです」
へぇ、そんな能力が。
けれど、ラティは教えてくれなかった。
能力が強すぎるから、自分で気づいて欲しいと。
そして勝って欲しいと。
ならばと俺は了承した。
「分かった。自身で答えを見つけるよ」
「そうして下さい。その方がもっと強い力を得られますから。……では、わたくしは業務に戻りますね」
俺は修行を続けた。