第6話 経験値製造
俺はさっそく変装して、廃棄物処理場へ潜入した。執事とかメイドは結構見かけるし、仕事上、不要物を捨てる業務もあるから、入っても違和感はない。
「あんまり長期滞在はできないけど……よし、ここを抜けて」
早朝だから監視役もいない。
この時間帯が一番の狙い目かな。
「おぉ、たんまりある」
山のように詰み上がっているモンスターのドロップ品。恐らくスライムとかゴブリン、オーク、コボルトのものとかゴーレムのものだ。長く雑用していれば自然に覚えてしまった。
「よし、さっそく経験値製造スキルを使おう。……えっと、最低三つの同じ収集品をセットしますと」
とりあえず、実験がてら『スライムゼリー』を採集。ぶにぶにした欠片を三つ手にした。
「製造開始……!」
ぶわぁっと青白く光ると……
【製造失敗】
と、なった。
「まじか……やっぱり、スキルレベル『1』だし、成功率も20%しかないからなぁ。数を熟していくしかないって事か」
幸い、この廃棄場には大量のドロップアイテムがある。失敗しても、まだまだやれる。時間まで根気よく製造していこう。
それから何度も何度も挑戦して……やっと!
手が赤く光ると『経験値クリスタル(スライム)』を入手した。ゼリーだったものが、一個の結晶となったのだ。
「こ、この赤い結晶が……経験値の塊って事か。すげえや……これを使えば、経験値を獲得できて、どんどんレベルアップできるのか。けど、スライムだからそれほどアップはしないかな」
物は試しだ。
俺は『経験値クリスタル(スライム)』を使用した。
すると……祝福するような音がして『EXP:30』を獲得した。……マジかよ。使っただけで『30』も!
俺のレベルは『2』になった。
「すげぇ。本当にレベル上がったぞ。
でも、う~ん。効率を考えたらスキルレベルを上げてもいいかも。その方が成功率も上げられるし……こうなったら、どんどん作業を進めていこう」
俺はひたすら製造しまくった。
それから暫くして人の気配。
「おっと、人が来たか」
そろそろ切り上げないと見つかってしまう。
俺は出来る限りの収集品を拝借し、破棄場を後にした。
◆
なんとなく病室へ向かった。
扉をガラッと開ける。
「……あ」
「え……」
――しまった。ルシアが着替え中だった。
扉を閉めて、しばらく待つ。
「もういいですよ」
「入るよ……」
いつもの煌びやかな礼服。
ドレスっぽくて貴族にも見えた。
綺麗だなあ。
「その、ごめん」
「怒ってはいませんよ。寧ろ、レイジさんで良かった」
「え、どういう意味?」
教えてくれなかった。
ま、まあいいか。
「あら。もしかして、そのクリスタル……」
「ああこれね、経験値クリスタルだよ。使うと経験値を獲得できる。実際試してみたら本当に獲得できたよ。必死に製造してたら、レベル『5』になった。スキルレベルも『2』になったよ」
「す、凄いですね。あの収集品が本当に経験値になってしまうとは……どのみち捨ててしまうものですから、有効活用出来ていいですね」
「今は廃棄場の担当ではないから、大量生産は出来ないけど、決闘に勝ってあの場所を手に入れてみせる。もっと沢山のクリスタルを製造して、レベルアップするんだ」
それが俺の当面の目標だった。
「決闘は明日ですよね」
「そうだ。それまで寝ずに修行する」
「……レイジさん、もしかして昨晩も?」
しまった。
つい口を滑らせてしまった。
「約束、しましたよね」
「……ごめん。俺、どうしても強くなりたくて……たった二日しかないし、寝ずにやるしかないだろ。じゃなきゃ、勝てないよ」
ルシアの瞳が揺れ動く。
たぶん、怒ってる。
でも、理解もしてくれた。
「本当に頑張り屋さんなんですね、レイジさん。もう、そんなに頑張られると、つい応援したくなっちゃいます。元からしていますけど」
柔らかく微笑み、ルシアは手を伸ばして俺の頬に触れてくる。あたたかい……。
「わたしの支援スキルは、有効時間がかなり長いです。お役に立てればいいのですが」
支援スキル『グロリアスブレッシング』と『グロリアスアジリティ』を受けた。……すご、初めて支援を貰った。ブレッシングは、ステータスを一時的に底上げしてくれる効果。この祝福の有無で、戦闘が大きく左右する場合もある。
アジリティの方は、回避力や移動速度に影響する。とにかく回避力がアップして、モンスターの攻撃や魔法など避けやすくなる。
更にルシアの場合、グロリアスという枢機卿限定の祝福付き。さっき彼女が言っていた通り、効果の持続時間が伸びたり、効果そのものが倍増していたりする。
「……うわぁ、力がみなぎってくる」
「三日は効果が持ちます。決闘の時もそのままですよ。ですが、それはあくまで支援。それでも、騎士カイルには遠く及びません。レベルも違いますからね」
「分かった。時間まで頑張ってみる」
「その意気です。もし困ったことがあったら、申してください。わたしはいつでも、この病室でお待ちしていますから」
分かったと告げて、俺は病室を後にした。
「すげ~、こんな力が湧き出るとか!」
残り時間で『経験値クリスタル製造』と『鍛錬』を進めていく。