第59話 総力戦
パラディンであるランティさんの防御力は、今や最強だ。あの外皮ならば、どんな物理攻撃を受けてもダメージは『1』で固定されるはず。
「俺達は百人いるリジェクトのメンバーを処理していく! あの中にソルバルト・T・ハークネスがいるはずだ……!」
突撃開始。
直ぐに乱戦が始まった。
「おりゃぁぁぁッ!」
刀を振るっていく。
不意打ちを食らったリジェクトの男たちは、何事かとこちらに振り向き――やっと状況を理解すると、剣を持って向かって来た。
20、30人と減らして行くと、黒いクリスタルを取り込んだヤツが現れ、次第にバケモノが増えていった。
「ここで使って来ましたね、主様!」
ラティが焦る。
後方で支援を続けてるルシアの顔も苦しそうだ。
「レイジさん、数が多すぎます……! この中であのバケモノを放たれたら……どうなるか」
「あぁ、けど、こっちには三大騎士がいる。エドウィン、サラ、シャロンさんお願いします……! 俺はソルバルト・T・ハークネスを討ちます」
「分かった。こちらのバケモノは任せろ」
エドウィンはサムズアップした。
こんな状況だっというのに笑顔を絶やさなかった。さすがだよ。
「レイジ、決着をつけるのだな」
「ああ、義祖父らしいが……まあ、それほどお世話にはなっていないし、それに、親父を殺した事は許せない。仇を討つ」
「気を付けろ。ソルバルト・T・ハークネスは、元は先代皇帝陛下のインペリアルガーディアンだった。力は確かだぞ」
忠告を戴き、俺は頭を下げた。
「ルシア様や皆は任さなさい。レイジ、君は君の成すべき事を成せ」
シャロンさんから加護を貰い、俺は一歩を踏み出した。
◆
――この中にソルバルト・T・ハークネスが。
どこだ。
どこにいる?
「しっかし……バケモノが増え過ぎだ」
普段鍛えていた力とレベル99という事もあり、以前よりも余裕があった。あのバケモノも、今の俺の桜花で一撃とまではいかないにしても、三撃以内には倒せるようになっていた。
無論、三大騎士の活躍も目覚ましい。
エドウィンは高速移動して、あっちこっちにいるバケモノを速攻で切り刻んでいた。まさに青天の霹靂。圧倒的だな。
「おぉ、サラも凄いな」
ダンジョンでもその力を目にしたけど、改めて凄いと思った。座ったままの姿勢で宙を浮き、雷撃を浴びせまくっていた。……とんでもない光景だが、強すぎだ。
一方、シャロンさんは巨大な弓を取り出し、剣を矢としていた。なんだありゃ……! あんな武器は見たことがない。
しかも連射しまくっているし。
剣はどうやら、魔法で編んでいるらしい。凄い速度で生成し、物凄い速度で射出していた。……これがシャロンさんの能力か。
「……俺の仲間は?」
ラティはフランベルジュでルシアとブレアを護衛していた。中間では、パルテノンの聖典展開。あの力はヤバイ……本から白き光が容赦なく放たれ、バケモノは一瞬で滅びていた。
「マテマテ……強すぎるだ、パルのヤツ」
というか、本気だな、ありゃ。
聖典使いのスクリプチャー、これは……仲間に入れて正解だったな。
皆の奮闘っぷりに安堵して、俺はヤツを探した。
「あそこか……」
誰かを守るように円形を組んでいる箇所があった。あの中にソルバルト・T・ハークネスが……!
俺は一気に加速し、降り立った。
「ソルバルト・T・ハークネス……そこにいるのか!」
「……貴様、我が計画を邪魔しおって……む。その親父そっくりな顔……雰囲気、オーラ……そして『怒り』……なるほど、息子のレイジ・ハークネスか。本当に生きていたとはな」
筋肉質の老体が現れ、俺を凝視した。
「そうだ、アルギレウス・ハークネスの息子だ! あんた、義理とはいえ、実の息子を殺したのか……!!」
「そうとも。ヤツは邪魔な存在になってしまった。お前も同様にな!」
「なぜ!!」
「なぜぇ!? アルギレウスは、皇剣になる寸前にまで上り詰めていた。ならばと、その地位を義父である私に委ねよと言ったのだ。したら、どうだ……アルギレウスは反抗し、私との縁を切ると言ったのだ。そして、あろう事か……無断で結婚まで!! いつの間にかお前を授かっていた!! ふざけるな!!」
「お前こそふざけるな!! 母さんまで殺したのか……」
ニヤッとソルバルトは口元を不気味に吊り上げる。
「そうともそうとも。お前の母親は……黒いクリスタルの実験台にしてやった。それは見事なバケモノになったさ」
「…………なん……だと」
「醜い醜い……そう、丁度この地下都市にも蠢いているバケモノ共のようにな!!!」
俺は……怒りを爆発させた。
「ふざけるなあああぁぁぁあああ…………ッ!!!」
桜花を構え、俺はフルパワーで前進してく。
ソルバルトもバスターソードを構えた。
……奴も、腐っても騎士か!
「レイジ・ハークネス。貴様を殺してくれるわぁぁぁッ!!!」
ドンっと突っ込んでくるソルバルト。かなり早い動きだが、今の俺にとっては、それほど脅威ではない。
日々の辛い鍛練を積み重ねてきた俺とヤツでは、決定的な違いがある。
「たぁぁぁああッ!!」
怒りのまま刀と剣を交えていけば、ヤツの力量が測れた。バランス重視か。攻撃も防御も上手く熟すタイプ。
「フッ……、レイジ、お前の剣技はこの程度か」
「なんだと!」
『スパイラル・ソニックブーム――――!!!』
螺旋の衝撃波……!?
「ぐあぁぁぁぁあぁぁああッ!!」
「これで貴様の全身の骨が砕け散――――」
なわけねぇだろ……!!
直ぐにスキル『黄昏』で体力を回復した。
「……寝言は寝てから言えやあああああああああああああああああああああああ……!!!」
「馬鹿なああああああああああ!!」
『神速抜刀からの――――日向……!!』
神速抜刀スキルから奥義スキル『日向』へ繋いだ。神速抜刀は、三連撃の範囲攻撃で、日向は、接近物理・遠距離物理ダメージ3000%の火力がある。
「ぐぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ…………!」
全身を刻まれ、ソルバルトは血反吐を撒き散らした。ズシャリと地面に落ち――倒れた。これで、俺の……勝ちだ。