表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
53/63

第53話 ムジョルニア家

 ムジョルニア家。


 西に位置する三大騎士のひとつで、当主である『サラ・ムジョルニア』の構える屋敷が見えてきた。



「でかいなぁ……」

「ええ、わたしは外観だけなら遠くから拝見した事がありますが、近くで見るとこんなに迫力があって広いのですね~」



 二人して驚く。

 門で待ちぼうけになっていると。


 モンスターの『ヘルズケルベロス』が猛スピードで向かって来て、檻で激突。元気よく、威嚇(いかく)してきた。



「きゃ!?」



 ルシアがその犬に驚き、俺は擁護(ようご)する。



「番犬モンスターか、珍しいな」


「――おや、レイジとルシア様ではないか。予定通り来てくれたのだな」



 ケルベロスを手なずける桃色の少女・サラは、面白おかしそうに笑った。こっちは笑えねえってーの。




「まあな。エドウィンから色々学んで来いってさ。なにより、経験値製造の手助けをしてくれるんだろう?」




「そうともそうとも。わざわざ、御足労戴いたからにはムジョルニア家へ歓迎しよう。……改めて、あたしはサラ・ムジョルニア。七代目当主だ。レイジ・ハークネス、そして、ルシア様……よろしく」




 ケルベロスの横で、サラはドレススカートの(すそ)を摘まみ、俺達を改めて歓迎してくれた。




 あのバカデカ番犬はともかく、ここまで丁寧(?)にされては無碍(むげ)にはできない。



 ◆



 屋敷は、ライトニング家の三倍でかかった。代々伝わっているだけあり、これは凄い。超広い庭は、距離がかなりあった。



「――で、まさかケルベロスに乗っていくとはな!」


「お気に召さないかな?」



「いやそうじゃなくて、こんな風に移動するとは思わなかったんだよ。いろいろと常識外れすぎてね」



「ムジョルニア家は普通の貴族とは違うのだよ。そこらにいる貴族とは一緒にしないで欲しいね」


「分かったよ」




 ムジョルニアの屋敷に入って、更にその規模に驚く。まだこれ以上に驚く必要があったとはなぁ。部屋の数いくつあるんだよ。



「「わぁ……」」



 俺もルシアも愕然となるしかなかった。

 なんか凄そうな絵画とかフルプレートアーマーの像とか、壺とかキラキラ光る装飾品やらやら……やたら豪華だった。



「レッドカーペットもどこまで続いているんだか……先が見えない。階段多すぎ」



「好きな部屋を使うと良い」

「サラもエドウィンと同じ事を言うんだな」


「有り余っているのでね。部屋の選定後、さっそく経験値製造へ参ろうではないか。我がムジョルニアの精鋭が補助する」



 と、サラはニヤっと自信有り気に笑う。

 なんだかガチで頼れそうで心強いな。




 せっかくだから見晴らしの良い三階にした。




「ここ、景色綺麗ですね!」

「そうだな、って、ルシア……俺と一緒の部屋にするの?」

「……ダメ、ですか」



 しょぼんとされて、俺は慌てる。



「ダ、ダメじゃないけど……いいのか。ほら、プライバシーとかさ……」

「関係ないです。わたし、別にもう何を見られても恥ずかしくないですから……何でしたら、今ここで下着姿になっても問題ないです」



「ちょ、それは……」



 マジで脱ぎかけたので止めた。



「どうしたの、ルシア。また淋しくなったのかい」

「……はい。だって、最近、パルちゃんのレイジを見る目が恋する乙女のそれでしたので……焦ってしまいました」



 またも肩を落とすルシアさん。

 そう落ち込まれると、俺も弱い。



「俺は皆が好きだよ。でも、一番はルシアだ」

「本当に?」


「うん、本当」


「本当の本当に?」

「うん、本当の本当に」



 見つめ合っていれば、ルシアは納得してくれた。



「……では、一緒の部屋でいいですよね?」

「わ、分かった。努力しよう」


「嬉しいっ!」



 そう腕に(すが)りつかれては、もう断れもしなかった。まあいいか、ルシアがこんなベタベタしてくれるのは俺も正直嬉しかった。



「さて、クリスタル製造も頑張らなきゃな。レベルカンストも見えて来たし」

「そういえば、レイジさん……いつの間にかレベル90を超えたようですね。本当にいつの間にそんな上げたのです?」



「良い質問だ。実はね、あれから更に製造しまくって廃棄場の殆どを注ぎ込んだんだよ。そうしていたら、もうレベル90になっていた」



「また夜遅くまで居たんですね」



 俺の腕がぎゅっと握られる。

 まるでお仕置きといわんばかりの……いや、どちらかというとご褒美になっているけどね。いろいろと感触がっ……。



「けど、レベル90からが経験値テーブルが異常でね。ここからはさすがに破棄場だけじゃもう無理になっていた。でも、今回のムジョルニアの助力があったからさ、これがチャンスだって思ったんだよ」



「なるほど、これが追い上げになるのかもしれませんね」



「そうだな、レベルカンスト……99にして、俺は本物のルシアの騎士になるよ。……いや、傭兵かな。それとも、雑兵か」



 ルシアは首を横に振る。



「いいえ、レイジさんは『皇剣』になるんです。わたしが支えます。皆が離れても、わたしだけは絶対に離れません。だって……わたしは、レイジさんが大好きだから……。愛しているんです」



「ああ、俺もだ。俺も気持ちは一緒だよ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ