第52話 リジェクトのアジト
地下都市。
「なぜこんな場所に都市なんか……」
よく考えろ、俺。
あの男はただの盗人ではなかったのだ。何か理由があって盗みを働いたのは確かだが――とにかく、パルを救う。それが最優先事項だ。
俺は一気に加速して、油断している男の背後を取った。
刀で峰内ちし、眠らせた。……おぉ、上手くいくとは我ながら、よくやった。
「レイジさん! 助けに来て下さったのですね……!」
「なんとか追いついた。こんな場所まで行くとは思わなかったけどね……けど、ここは何なんだ!?」
「わ、分かりません。こんな場所には、初めて来ました。帝国アイギスにこんな場所がある事自体、不可解です」
その通りだと思う。
いくらなんでも――。
あ…………まさか。
「そんなまさか」
「? どうしたんです、レイジさん」
「まだ分からんけど、奥へ行ってみよう」
パルの手を繋ぎ、俺は先を行く。
そんなはずはないという思いを抱きながら……しかし、その予見は的中した。
「レイジさん、この奥の通路……なにか聞こえてきます」
ざわざわと群衆が集っているような、そんな気配があった。ゆっくり奥へ進むと――
「――嘘だろ」
『我々、リジェクトはこの三日以内に帝国アイギスを壊滅させる!! 皆の者、剣を取り、帝国住民を皆殺しにするのだ……!!』
丁度そんな演説が聞こえた――。
「み、みなごろし……」
「これって、つまり……リジェクトのアジトって事ですか!?」
つまり、そういう事になる。
――くそ、こんなタイミングでリジェクトの居場所を特定しまうとかな。直ぐにエドウィンに報告しなければ……!
「戻ろう。ここは危険すぎる。見つかれば、どうなるか分からん」
「はい……二人だけでは直ぐに殺されてしまいます」
奴らの住処が分かっただけでいい。
戻ろう。
◆
なんとかライトニング家へ戻った俺たちは、エドウィンに報告をした。
「城に地下に都市だって!?
ありえない……。そんなモノが存在するだなんて聞いた事がないよ」
非常に驚くエドウィンは焦っていた。
「でも、俺もパルもこの眼で確かに見たんだ」
「もちろん、レイジもパルテノンも信じているよ。でも、よりによって城の地下にね……。そりゃ実態が掴めないわけだよ。灯台下暗しとは、まさにこの事だろうね」
肩を竦めるエドウィンは、疲れた顔で笑う。
「エドウィン、これから俺たちはどうすればいい?」
「今すぐには攻め込めないだろう。逆に返り討ちに遭うかもしれない。リジェクトは、用意周到だからね……とりあえず、レイジ、君は予定通り『ムジョルニア家』へ向かうんだ。そして、サラから多くを学び、成長するといい」
悠長かもしれない。
でも、力が無ければ勝てない。
エドウィンに従うが吉である。
俺は彼の言葉に頷く。
◆
――二日後。
ルシア以外をライトニング家へ預け、俺とルシアは、ムジョルニア家へ向かった。もちろん、手を繋いで。
「レイジさん、今日もカッコいいですよっ」
いきなり褒めてくれるものだから、俺はビックリして照れた。
「ど、どうしたのさ」
「久しぶりに二人きりだからです」
な、なるほどね。
ルシアの機嫌も良いし、このまま向かおう。