第50話 エヴァンス家
騎士団を出て、ブレアに全てを託した。
「後は頼んだよ、ブレア」
「任せるのじゃ! では、またの……って、そういえば、レイジは、ムジョルニア家へ行くんじゃったな。ならば、完売次第そちらへ向かうでの~」
場所は知っているらしい。
後は任せ、ブレアと別れた。
入れ替わるようにして、カルムが現れた。相変わらず、俺との相性は悪いようで、こちらを睨んでくる。
「カルム……」
「……お前に用はない。レイジ、私はルシア様をお迎えに参ったのだ」
「ルシアを?」
少し不安になると、ルシアは笑みを浮かべた。
「大丈夫ですよ。エドウィン様に似た定例会議のようなものです。淋しですけど……必ず戻りますから」
――と、言ってルシアは俺の手を握る。
それで俺は安心できた。
「分かったよ、ルシアはいつも俺のところに帰って来てくれるし、信じてるよ」
「はいっ。では、行ってきますね」
カルムにルシアを任せた。
嫌味なヤツだが、それだけだ。
気にする事は何もない――筈だ。
◆
ラティもライトニング家の仕事があるとかで戻る事になった。
「申し訳ございません主様」
「いいさ、ラティにはいつもお世話になりまくりで、こちらが申し訳ないと思っているくらいだ。すまない」
「いえ、わたくしが決めた事ですから」
微笑んでラティは、踵を返した。
「えっと……」
「……」
ぴくっと小さく反応するパルの表情は、やや緊張していた。
「もしかして、男と二人きりって初めて?」
「……はい、あたし、パーティとかギルドは入った事なくて」
「そうなんだ」
珍しいというか……まあソロ冒険者もいるにはいる。その類だろう。
「じゃあ、俺が初めての相手ってワケか」
「そ、そうですね」
自分で言って、一歩間違えればイケナイ発言だった事に気づいて、ちょっと気まずくなる。――と、とにかく。
「せっかくの機会だし、お互いの事を知っていこうか。ほら、せっかく知り合ったし」
「よろしくお願いします……」
◆
帝国アイギスの露店街へ。
――ここしかないと思った。
お店ならいろいろと見れるし、楽しいはず。
「久々に来ました、賑やかですね!」
「あれ、パルは帝国出身なの?」
「ええ、そうなんです」
「そうだったのか。パルは、子供の頃から帝国住みなんだね」
「はい、あたしは昔、三大騎士の一員だったんです。――三年前の『ムジョルニア家』、『エヴァンス家』、『ハークネス家』……当時の騎士ですけどね」
「ま、まって……三年前?」
「深刻な顔をされて、どうかされたのです……?」
「ああ……言い忘れていたね。俺はレイジ。レイジ・ハークネスなんだよ」
「――――ハークネス? ハークネス家!?」
驚くパルは、口をパクパクさせ、俺に顔を近づけて来た。てか、近ッ! 唇が直ぐそこだ!
「レ……レイジさん、あたし、エヴァンス家は嘗て、ハークネス家と深い関係にあったんです。でも、貴方の父親が暗殺されて以来、全ては闇の中へ……まさか、再びこうして子供同士で再会できるだなんて……。
なんて偶然……運命でしょうか。父上も母上もお喜びになられます」
嬉しそうにパルは、俺の手を取る。
「そうか、そうだったのか……パルが」
「あたし、決めました。レイジさんを信じます。そして、あたしは貴方の聖典になる。後世に語り継がれるような聖典を残します!」
パルは、そう俺に固く誓って……腕にくっついて来た。
「うあぁっ!?」
胸らしき感触とか多分当たってる……。
「レイジさん、あたし、ルシアさんに負けるつもりはありませんよ」
「お、おう!?」
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