第49話 経験値の宝庫
ケラウノス騎士団を目指す。
あれから浴場では大変だった……。ルシアが俺の膝の上に乗って来ようとして、俺は止めた。
「……う」
思い出すだけで死にかける。
……いや、結果的には乗っかられたのだが。
ルシアってば、大胆すぎるよ……。
「どうしたんですか、レイジさん」
「いや~…ちょっと逆上せちゃったのさ」
「そうでしたか、ヒールしますね」
ありがたい超回復ヒールを戴き、別の意味で衰弱寸前の俺の体力は回復した。そんなこんなで、騎士団へ到着。そのまま破棄場へ向かった。
「ほう、ここが破棄場かえ~」
初めてみる光景にブレアはテンション高めだった。商人としての血が騒ぐのだろう、モンスターのドロップアイテムに触れて――しかし、価値のないモノだと分かると、容赦なくポイ捨てした。
「なんじゃ、宝の山ではないな」
「俺からすれば宝の山だけどな」
「そうじゃな。レイジにとっては、ここは楽園。脅威もおらぬし、経験値製造には最適じゃな。なるほど……このゼリーはスライムの。ほうほう、こちらはゴブリン……おぉ、グリフォンの爪も、こっちはヘビィトードの……本当にゴミばかりじゃ」
その通り。
売ったところで二束三文なのだ。
でも、俺にとっては経験値の宝庫。
王の財宝に匹敵する。
「レイジさん、魔力足りなかったら言って下さいね。わたし、少しなら分け与えられますから」
目の前にいるルシアが上目遣いで気遣ってくれる。正直、めちゃくちゃ嬉しかった。
「うん。その時はお願いね」
「……はいっ」
まずは、レッドコボルトの毛でも使うか。これは経験値も多いし、かなり美味しい。低レベル冒険者が使えば、一気にレベル30にはなれる程の量だよ」
経験値クリスタル(レッドコボルト)を製造した。成功率はかなり良く、今日は10個の製造を完了させた。
「いいね、これ売れば結構な値段になるんじゃないかな」
「す、素晴らしいのじゃ……」
クリスタルを受け取るブレアは、感嘆していた。それから尊敬の眼差しを向けて来る。ようやく俺の経験値製造スキルの凄さを実感したらしい。
「どうだ」
「正直、ここまでとは思わなんだ。すまぬ、いろいろ疑っていたのじゃ……そんな自分が恥ずかしいのじゃ。レイジ、お詫びじゃ! これからは自分の頭を撫でて良いぞ!」
どうやら、ブレアとの距離が縮まって来たようだな。
「それならいいさ」
俺は自然とブレアの頭を撫でた。
嬉しそうに目を細めて受け入れてくれている所を見ると、どうやら信用してくれるようになったようだ。まるで猫みたいなヤツで可愛いな。
「ところで、ルシア様はいつもレイジの手伝いをしているのかえ?」
「そうです、ブレアさん。暇がある時は一緒にこの廃棄場に来てるんですよ~。魔力が足りなかったら、わたしが補助しています。支援とかでも出来ますし、成功率アップに貢献できますからね。クリスタルの運搬とかもありますから」
「ほうほう。では、これからは自分も手伝うのじゃ。どんどん製造し、どんどん売っていこうなのじゃ!」
人手が多ければ、もっと製造も楽になる。そうだな、今後はブレアだけじゃなく、パルやラティも連れて来てみてもいいのかもな。
――この日、経験値クリスタルを製造しまくった俺は、とんでもない売り上げを叩き出すのであった……。まさか、あんな金額になるとはなぁ。