第45話 敵の正体
ついに商人であるブレアもライトニング家へ招き入れた。
「よろしくですじゃ!」
エドウィンと握手を交わし、俺やルシア、みんなに挨拶済ませた。中々に几帳面というか、真面目だ。
「ブレアは何処の部屋にするんだ?」
「自分はレイジの近くがいいのう~」
「近くか。うん、空いてるよ」
「そうかえ! それはラッキーじゃあ~」
ぴょんぴょん飛び跳ねるブレアは、なんだか楽しそうだ。
「で、ブレア、肝心の売り上げは?」
「そうじゃ。あれからレイジ、お主から預かった品が続々と完売となってのう。なんと今回は28万セルにもなった。金貨ザクザクのザックリじゃ」
ドサッと差し出される袋。
中身は金色一色に染まっていた。
すげぇ……。
「こ、こんなにいっぱい……いいのか?」
「いいも何もない。これは、レイジの努力の証。好きに使うとええ~」
「そうだな。じゃあ、皆に配る。ルシアやラティ、パルも頑張ってくれたからな」
「あたしもですか!? バジリスク分の精算はまだかと……」
「いいんだよ。受け取ってくれ」
「で、でもぉ」
困惑するパルテノン。
俺は無理やり金貨を三枚を握らせた。
「さ、さんまいも!? 戴けません! 三万セルって事ですよ!?」
必死に突っ返してくるパルは、俺と密着しているわけだが――あ、ルシアさん、顔が怖い。
「…………」
これはイカンと、俺はパルから離れた。
そしてすぐにラティの元へ。
「わたくしですか……お留守番をしていたのに?」
「それでも十分なお仕事だよ。俺の為にいつも尽くしてくれているし、受け取る権利がある」
ラティには五枚の金貨を渡した。
「主様……ありがとうございます。その、好きです」
ぼそっと好意も戴き、俺は満足する。
さて、後は……
「ルシア、受け取ってくれるよな」
「わたしは大丈夫です。全部、レイジさんの物です。レイジさんが強くなれるのなら、使って下さった方がよっぽど有意義です」
「だめだ。こういうのは、みんなで分け合うものなんだ。ルシアには、いつもお世話になってるし、十枚で!」
「本当に気持ちだけで嬉しいですから」
「それでもだ」
真剣な眼差しで訴えると、ルシアはついに折れてくれた。
「……レイジさんには敵いませんね。では、ラティと同じ五枚で」
「分かった。それで妥協だな」
五枚の金貨を渡し、報酬の分配は完了した。
確かに俺の『経験値製造スキル』が主な活躍をしているけど、でも、俺だけの力ではない。自分ひとりではここまで来れなかった。
「ありがとうございます」
「いいって。まだまだ稼げる見込みもあるしさ、これからもっと稼いで楽な生活を送っていこう」
◆
金貨分配後、自由な時間を得た。
すっかり日は沈み夜。
「経験値クリスタルの製造もしたいな。まだ経験値テーブル操作に至っていないし……う~ん」
やっぱり、サラの協力を仰ぐしかないのかも。現状では、クリスタル1000個は手厳しい。クリスタル1個の経験値が3000を超えなければならないという制約もあるし、困ったな。
「廃棄場にあるドロップ品では、3000は超えないし……。今は金策を優先にするか~」
今夜はいつも通り、製造に集中した。
ケラウノス騎士団にある廃棄場で経験値クリスタルを製造――これはもう日々の日課になっていた。作っては、ブレアに売却依頼の繰り返し。
おかげで収入も安定してきていた。
一般労働者並……いや、それ以上になっていた。
「いつか自分の家も持ちたいな」
そんな目標を考えながら、俺は製造を完了させた。廃棄場にはもう用はなくなって、出る事にしたのだが――。
いきなり矢が飛んで来て、俺の右肩に命中した。
「――――ぐぁ!?」
咄嗟に桜花を構え、相手の出方を伺った。
「何者だ!」
「俺はリジェクトのライバックだぜ~! この前の爆発騒ぎはどうだったかな、レイジくぅ~ん!」
「お前か! お前があの爆発を……」
「そうとも。ある男の手引きで情報部隊・マキシマイズから逃れたこの俺が事件を起こした。だが、三大騎士が動いてねェ~…おかげでそれほど被害が出なかった。けどまぁ、あの青髪のメイドは、それなりに役に立ったらしいな」
「青髪のメイド……ノンの事か! お前が全部仕組んでいたのか!」
「お前たちに恨みがあるからと聞いたから、それを手伝ってやったまでさ。内部から崩壊させていくのが一番手っ取り早いからなァ!」
このゴミ野郎……。
ヤツの話からして、ライバックも操り人形っぽい。もっとバックに大物がいやがる。誰だ。誰が裏切っている。リジェクトのボスは誰だ?
「よ~く分かったよ、ライバック! 今度こそお前を監獄に送ってやる」
「いい顔だ。だが、そろそろ『毒』が回ってくる頃合いだ」
「な!?」
――まさか、この矢に毒が塗布されて!?
それは本当らしく、俺は頭がクラクラし始めていた。
「くっくくく……。レイジ、お前はあのお方のしもべとなり、経験値を永遠に製造し続けるのだ。そして、リジェクトは……いいや、傭兵団・バルムンクはトップに立つのだ」
「バ、バルムンクだと……!?」
「そうさ、シグルズ様こそ皇帝に相応しいお方……」
つ、つまり……傭兵団がリジェクト……。
くそがぁぁああぁぁぁ…………!!!