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第42話 錬金術師のお店

 少女の名は『パルテノン』というらしい。

 パルと呼んで欲しいと求められた。



「――パルさんは、俺に何か用?」

「はい、経験値クリスタルの噂を耳にしたんです! レイジさんが製造されているんですよね!?」


「ああ、そうだけど……」


「作って欲しいんです!」



 そういう事。

 ブレアから情報を聞き出して、俺に辿り着いたって所だろうか。いつか、こういう冒険者が現れるかと思っていたけど、その第一号は猫耳少女とはね。



「そうか。これから作りに行くところだったんだよ。俺の経験値製造スキルは、モンスターのドロップアイテムが必要でね」



「そうなんですね! では、あたしもついて行きます! これでも、聖典使いのスクリプチャーなんですよ」


「聖典使い?」



 初めて聞く職業だな。

 というか、それは職業なのか?



「ええ、プリーストの親戚さんです。正式には魔法使いなんですどもね。聖職者との融合といいますか~、いろいろ複雑なんです。でもお役には立てますよ!」



 ニカッっと笑う少女。

 へぇ、面白そうだな。



「ルシア、悪いんだけど……この子、困っているみたいだし、いいかい?」

「いいですよ。その代わり、家へ帰ったら構って下さいね……!」

「うん、たくさん構うよ」



 了承を得られたので、パルを仲間に入れた。



 ◆



「ところで何処を目指されているのですか?」


 先頭を歩くパルが振り向く。



「そうだったね、目的地なんだけど――洞窟ダンジョンに潜む『バジリスク』でも狩ろうと思う。なかなかにレベルが高いモンスターだけど、ヤツ自体の経験値が6000もある。12個製造で72000の塊になるはずだから、かなり美味しい。

 でも、バジリスクは状態異常『石化』を使って来る厄介なヤツだ。そこで、道中にある村で専門の錬金術師のお店に寄って、ポーションを買う。予めエドウィンに聞いておいたんだけど、そのポーションを使えば一定時間、石化にはならないらしい」



「パナシーアポーションですね。石化だけでなく、他の状態異常も解除できますね」



 ルシアが補足を入れてくれた。

 その通り、だから言わば万能薬だ。


「とにかく、村へ向かおう」




 ――徒歩で三十分以上は歩いた。



 村に入り、錬金術師のお店へ。



「この小さなお店か」

「なんだか落ち着いていていいですね」


 俺はルシアの手を握って階段を上っていく。



 扉を開け中へ。

 すると店の中には女性がいた。



「いらっしゃいませ。――おや、そのお美しい銀髪と礼服は、ルシア様ではありませんか!? お、お久しぶりです……まさかこの場所に来られるとは」



「マーリン様……! マーリン様ではありませんか」



 なんと二人共知り合いだったようだ。



「ルシア、この錬金術師のお姉さん知っていたのか」

「ええ、マーリン様は偉大な錬金術師なんです。でも、帝国を自ら去られて……その後、行方知れずで、この村でお店を開かれていたのですね」



「そういう事になります。ところで、こちらの方たちは?」



「男性の方はレイジさんです。こちらの小さな女の子がパルちゃんです。帝国を出る前に出逢ったんですよー」



 納得するマーリンさんは、俺の方を見た。

 俺かよ。



「失礼ですが、貴方はルシア様とはどのような関係で?」

「えっと……」



 言おうとして、ルシアがジッと見つめて来る。下手な事を言えば嫌われそうだなぁ……。



「か……彼女、です」

「……な、なんと。そのようなご関係で!」



 言った。一応、言い切ったぞ俺!

 ルシアの方は……あ、顔を赤くしていた。

 とりあえず、正解だったようで一安心だ。



「と、とにかく……パナシーアポーションが欲しいのです。バジリスク攻略の為に」



「ほう、洞窟ダンジョンに行かれるのですね。……いいでしょう、ルシア様と久しぶりに会えて私も嬉しいですし、万能薬は中々売らないのですが、今日は特別です」



 十本のポーション瓶を出してくれた。全て黒色の液体で、なんだか万能薬ぽくはなかった。これで本当に大丈夫なのか?



「これ……」

「色は真っ黒ですが、万能薬です。どんな状態異常にも効きますよ。特別価格、一個5000セルで手を打ちましょう」



「お願いします」



 中々な額だけど、背に腹は代えられない。石化してしまえば、身動きが一切できなくなるし、そのまま噛み砕かれて死亡――なんて未来が視えている。



 ならばアイテムに投資する方がよっぽおどリスクが抑えられるというもの。備えあれば憂いなしだ。




 ◆



 万能薬をゲットして、そのまま村を出た。

 マーリンさんからは、またお店に来て欲しいという事で、後日伺わせてもらう事にした。約束を交わして、俺たちは道を行く。



「二人とも疲れは?」



「わたしは平気です」


 ルシアには足も疲れてなさそうだ。



「あたしも問題ないですよ~」


 ぴょんぴょん飛び跳ねるパルも問題ない、と。




 洞窟ダンジョンも近い。

 いよいよ心して行かねばな。

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