第39話 黄泉送り
向かって来る触手を切り刻んていく。
スパスパと斬り落としていっても、すぐに再生して突っ込んでくる。
「くそ、再生能力が高いな」
しつこい程に触手は伸びてきて、俺を貫こうとする。けれども、動きは読めていた。相手は元は人間でメイド。一方、俺は最近レベルを60超えた傭兵。
これまで鍛練も重ねてきて、十分に強くなった。相手がいくらバケモノでも、その力の差は圧倒的だ。
「てやぁッ!!」
一進一退を繰り返していれば――
「グロリアスブレッシングとアジリティです!」
ルシアから支援スキルを貰った。
かなりステータスをブーストして、こっちの身体能力がアップ。押し返せるようになった。やっぱり、ルシアはすげぇや。
「……くそっ、レイジお前は!!」
怒り狂うノンは、触手を更に生やしてルシアを狙う。けれど、ラティがフランベルジュで応戦した。
『アビスエンチャント!』
ラティの右腕が赤黒く発行する。
付与スキルか……!
前に一度、手合わせしてして貰った時に見せて貰った。あのアビスエンチャントを剣に付与すると、闇属性が付与される他、火力も格段にアップする。なんなら、移動速度も増加する。
「だが……」
その代償として防御力は半減する。
少しでも攻撃を受ければ、かなりのダメージだ。
「ルシア様はお守り致します……!」
上段に剣を構えるラティは、またもスキルを発動した。
『――――――エンバー・ラスト!!!』
赤い稲妻。
振り下ろされる剣から発せられた莫大な魔力エネルギーは、波動となって触手を――いや、ノンにすら激突していた。
「わぁぁあああぁぁぁぁぁ……!」
一気に吹き飛んでいく。
あんな巨体がゴミ屑のように……。
ラティのヤツ、本気を出せばこんな強かったのかよ。
やがて放電は止み、暗闇が包む。
「ルシア、ラティ!」
刀を構えたまま、俺は彼女たちの傍へ。
どうやら二人とも無事のようだな。
「怪我はないな! ラティ、さっきのは……」
「ルシア様のおかげです。膨大な魔力を供給して貰ったんですよ。わたくし単独では、あの技は発動できないんです」
いつの間に。
けれど助かった。
これでノンはもう……。
『ギィィィィィァァァァァ……!』
くそ、まだ起き上がるのか!
仕方ない、こうなったら俺が斃すしかない。元は人間とはいえ、今はバケモノ。俺たちに敵意を向け、殺しに掛かってくるバケモノ。
「やるしかない……」
桜花を構え、庭を駆けていく。
この一瞬に全てを懸けて……!
伸びる触手を切り刻み、そのまま上へ飛び跳ねる。開く胴体に喰われそうになるが、俺は刀を振り下ろす。
斬撃が敵の体を真っ二つにし、桜色の炎が上がった。……せめて、魂を救ってやらねばと、俺は黄泉送りの一撃を加えた。
『…………』
ノンだったものは安らかに眠った。
「終わった……外の炎も消えたようだし、エドウィンとか他の騎士が何とかしてみたいだな」
国中では、リジェクトが蠢いているのだろうか。今のこの屋敷を守っている俺には知る由もないのだが――気になるな。
◆
――二時間後――
「ただいま戻った」
「エドウィン!」
やや疲れた顔で屋敷に戻って来たエドウィンは、激しい戦闘を繰り広げたのだろうか、血がこびり付いていた。
「リジェクトの抵抗が思いのほか激しくてね。サンダーボルト家とムジョルニア家も動いたのだが、これが中々骨が折れた」
「なにが起こったんだ?」
「私にもアレを何と言っていいのか分からないが……モンスターではないバケモノが沸いた。その数、三十はいただろう。討伐に時間が掛かった」
やっぱり、外にも出現していたのか。でも三大騎士は時間が掛かったといえ、全部倒したらしい。すげぇな。
「お疲れ、また詳しい事は後で教えてくれると嬉しいよ」
「ああ、レイジ、君には是非聞いて欲しい。それより、約束通り屋敷を死守してくれたようだね。私は嬉しいよ。君は優秀な傭兵だね」
褒められて俺は照れた。
けれど、ノンの事は報告しなきゃ……。




