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第3話 決闘の約束

「入ります」


 分隊長ユピテルの部屋の前。

 扉をノックして、俺は中へ入った。



「なんだ、雑兵ではないか。私は暇ではないんだぞ。……用件はなんだね」



 相変わらず両足をテーブルに投げ出し、面倒臭そうにパイプタバコを吹かしていらっしゃる。煙ったいし、副流煙が気になってしまう。



「ええ、俺を廃棄物担当にして欲しいんです。あそこは、今は騎士が担当していますよね。だったら、俺を当てて下さい。ゴミ処理なら得意です」



「――ふむ。最近、帝国周辺にモンスターが出没しており、価値のない収集品で溢れかえっているからな。整理が追い付いていないとも聞く。人手不足だから丁度いい……雑兵、お前には特に相応しい場所だろう。よろしい……お前を廃棄物担当に――」



 これであの場所に!



「ちょっと待ってください」



 決まりそうなその時、扉から男が入って来た。

 こいつ、俺に嫌がらせしているカイルじゃないか。また……また妨害をしに!



「なんだ、カイル」

「分隊長、この雑兵を廃棄物担当になされるつもりですか」

「いいではないか。人手不足であり、あんなゴミ溜めは誰もやりたがらない。モンスターの肥溜(こえだ)めのような場所だぞ。この雑兵(レイジ)にはピッタリではないか」



「確かに……。ですが、怪しいと思いませんか。そんな所に自ら担当を名乗り出るなど……なにか裏があるに違いません」



 なるほど、と分隊長ユピテルは(あご)をしゃくる。怪しげに俺を見てくる……くそ、カイルのヤツ、余計な事を。



「カイルの言う事はもっともだ。おい、雑兵。お前、なにを企んでいる」


「な……なにも企んでいないですよ! 俺は純粋に帝国の為に、兵士になりたいと願っています。この心臓に誓って本当です……!」



「そうか、なら条件をつけよう」


「条件、ですか?」



「このカイルに決闘で勝てば担当にしてやろう。だが、負ければ雑兵であろうと辞めてもらう。つまり、クビだ」



 な……なんだと。

 決闘だって……。



「だが、いきなり決闘も辛かろう。猶予は二日。二日後にコロシアムで対決をしてもらう。その間に体を(きた)えるなり、剣技を(みが)くといい……さあ、どうするね、雑兵」



 騎士と決闘だって? 無茶な。俺は雑兵だし、戦闘経験ゼロで冒険者でもない、ただの男だ。しかも、二日しか準備期間もない。勝てるはずが……いや、まて。



 今の俺には力があるじゃないか。 



 二日あれば……『Lv.30』には出来ると思う。

 もちろん、そこに根拠もなければ保証もなかった。



 でも、それでも。



「やります……」



「ほう」

「面白い」



 分隊長もカイルもニヤッと笑う。

 俺が受けたことに面白がっているらしい。

 もう既に勝った気でいるようだ。


 ああ、精々ほくそ笑んでいろ。



「二日後、コロシアムで戦いましょう、カイルさん」



「……あぁ、お前をやっと公式試合でボコボコに出来る。いいか、生半可な覚悟で来れば痛い目だけでなく、死を向かえる場合もある。覚悟するんだな、雑兵……いや、雑魚」



 ケッと舌打ちするカイルは、散々俺を(にら)んで部屋を去った。いい加減、あのゲッソリ顔を見るのにも飽きたところだ。絶対に倒す。



「では、分隊長……二日後に」

「…………」



 ユピテル分隊長は足を降ろし、立った。



「まて、雑兵。最近のお前は潔すぎるな。何があった」


「なにも。なにもありません。俺はただ……帝国の為、皇帝陛下に魂を捧げる覚悟です。その為に、このケラウノス騎士団に入団したんです。分隊長、俺は負けませんよ。その為に努力は惜しみません」



「……雑兵。お前……」



 俺は部屋を去って『廃棄場』へ向かった。

 いつ隙が出来るか、どの時間帯にゴミが投棄されるのかとか注意深く見守っていた。ただ、警戒すべきはカイルと相方のジョンだ。あの二人は俺にいつも嫌がらせをしてくる。



「俺の作戦がバレないよう、行動しないとな」



 となると、変装がいいと思った。



 この周辺には、たまに執事が歩いていた。

 騎士団にいる姫騎士の若執事だとか噂を聞いた。

 彼の姿を借りよう。



 ちょうどこの前、仲良くなったメイド騎士ラティヌスが『裁縫スキル』を持っていた。彼女に頼んで執事服を作って貰おう。そこから、俺の作戦がスタートする――! 

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