第21話 道は開かれた
あの事件から半日後。
「――騎士団は当面の間、活動を自粛するようだ」
大広間をゆっくり歩きながらエドウィンが状況を説明してくれた。ケラウノス騎士団は、存亡の危機にさえ陥っている。
あれだけの事件を起こしたのだ、当然か。
「俺はどうすればいい」
「君は今まで通り、不穏分子を排除してくれないか。三大騎士を狙う者、組織はまだまだ存在する」
「分かった。ところで、廃棄場は?」
「分隊長・ユピテルの管轄だったからね、彼が不在になった以上は出入りは自由だ。今は暫定で私の管理下にある。自由に使うといい」
マジか……!
マジかよ!
「やっとドロップアイテムを戴けるのか……!」
「構わんさ。どうせアレは廃棄される不要なアイテム。それが経験値の塊になるのなら、有効活用しない手はないだろう。ぜひとも量産してくれ」
あっさり快諾してくれる。
さすがエドウィン。俺はライトニング家に拾われて良かった。
「いつもありがとう」
「これでもね、レイジ、君の実力を認めているつもりだよ。ここ最近の功績も賞賛に値する。――それじゃ、私はまた三大騎士の会合があるのでね、多忙は辛いよ」
軽い溜息を漏らして、エドウィンは部屋を去った。……相変わらず世話しない。そして、青髪のメイドと共に出て行く光景。慣れつつあった。
◆
ルシアの部屋に向かって、知らせる事にした。
「――というわけで、エドウィン公認となった。これからは、クリスタルを製造し放題だ」
「廃棄場がしばらくエドウィン様の管理下に……それで、廃棄場の使用許可が下りたのですね。素晴らしいです」
一緒になって喜んでくれるルシアは、俺の手を取った。
「……っ」
「ぁ……」
お互い照れて、目を合わせられなくなった。
俺は誤魔化すようにして提案した。
「そ、そうだ。これから、さっそく騎士団へ行かないか。様子も気になるし、仕事も兼ねて」
「そうですね、ライトニング家を狙う方達がまだいると聞き及んでおります。帝国には、王座や三大騎士枠を狙う者が絶えません……でも、枠を争う事自体は三年に一度の帝国公認のイベントですから、こればかりは仕方がありません」
席を維持する為にも、エドウィンは日々必死なワケだ。俺の力を借りたいほどに。でも、ここまで良くして貰っているし、貢献する意味はある。
「ライトニング家を守る為にも頑張ろう」
「はいっ」
ラティも誘ってみたが、ライトニング家の家事手伝いをしなければならないということで、また今度となった。残念だ。
……が、ルシアと二人きりで外へ出られる。
筋肉マッチョの老執事・カールさんに外出すると伝えると、その際に『カード』を貰った。これは廃棄場に入る為の許可証らしい。これがあれば自由に出入りできるってわけだ。
俺たちは屋敷を出た。
騎士団までの道のりで、周囲から視線を感じた。
「そりゃ見られているのは当然なんだけど、なんだこの胃の逆流するような嫌な感じ」
「わたしも感じます。男性からの視線をよく感じますけれど、怪しげな気配もありますね。もしかしたら……」
かもな。
この気配は覚えておこう。
それから警戒しながらも騎士団前へ到着。
さあて、経験値クリスタルを製造しまくるぞ。