第20話 風の加護
敵は四体のユピテル。
分が悪すぎるというか、圧倒的に不利。
ハッキリ言って勝算はない。
「それでも、一人くらいなら倒してやるさ」
刀を本体に向けた。
亡霊は無視だ。
「レイジ、お前はここで死ぬがいい……!」
一気に四体が襲って来る。
せめて、本体だけでも刺し違えてやる!
「うぉぉぉぉぉぉぉ……!」
俺のレベルは『40』に到達している。
基本スキルもほぼマックス。
これなら……きっとユピテルに届くはず。
「……レイジ、お前はここでええええッ!」
ユピテルの突きが向かって来る。
姿勢を低くした俺は、それを回避。刀を下から上で振り上げて、剣ごと彼の身体を斬った。
「――――ごふぁァッ!!」
だが、三体の亡霊が俺を貫こうと向かって来る。
――もうだめだ。
ここで、俺は、死ぬ。
さようなら、ルシア。
死を覚悟したその時だった。
稲妻が走って、亡霊を一気に分散させた。……こ、これは魔法スキル。風属性魔法の剣技。つまり、これは――。
「よくぞ、ここまで頑張った。我が友よ。亡霊は私に任せなさい」
「エドウィン……!」
「許してくれ、会議が長引いた!」
黄金の剣を抜くエドウィンは、ほんの一瞬で三体の亡霊を切り捨てた。な、なにも見えなかった……あれ、走ったのか!?
それにしても、そうか。
エドウィンには風の加護があるんだ。属性攻撃になるんだな。
「――こんな所か。そこに倒れているのは……ユピテル分隊長とジョンだね。詳しくは道中で会ったマーカスに聞いた。不穏分子の名は『リジェクト』と」
「そうだ、こいつらは悪そのものだ」
「分かった。逮捕し、監獄に送る。すぐに情報部隊も向かって来るだろう。これでユピテル達は終わりだ」
……助かった、のか。
「ルシア!」
「だ、大丈夫です。レイジさんが助けてくれましたから、怪我はありません。それより、ラティさんです。彼女にヒールします」
「分かった」
ラティは助かった。
ヒールを受けると、すぐに意識を取り戻して謝って来た。
「ご、ごめんなさい……わたくしがいながら、ルシア様をお守りできませんでした」
「ラティの所為じゃないよ。全部、ユピテルとジョンが悪いんだ。あいつらは三大騎士の転覆を狙っていたし、殺人すら犯していた。どうしようもないヤツ等だったよ」
真実が判明すれば、俺はなんて場所に所属していたんだと情けなくなった。雑兵より性質が悪いし、それ以下にも劣る。
それから、情報部隊・マキシマイズが到着。ユピテルとジョンは拘束され、連れて行かれた。この日を境に二人の顔を見ることは二度となかった――。
カイルにも疑いが向けられ、三人は監獄送りとなったようだ。もっとも、カイルは精神崩壊が悪化して、それどころじゃなくなったらしいが。
今や狂人になったと、エドウィンから教えて貰った。
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