第2話 経験値製造スキル
「どんな変化があったですか?」
ルシアが俺の顔を覗き込んでくる。
美しい顔立ちが目の前に来たものだから、俺は眼を逸らした。……う、顔が赤くなっているのが分かる。
「?」
「いや、その……経験値製造スキルだったよ」
「経験値の製造、ですか。聞いた事がないスキルですね。ユニークスキルの類かもしれませんね。つまり、あなただけのスキルです」
「俺だけの……」
経験値製造スキルは消費魔力も少なくて、モンスターのドロップアイテムを変換するものだった。最低三個あれば発動できるようで、レベルの高いモンスターの収集品であれば、膨大な経験値になるようだった。
「なるほど、モンスターのアイテムを経験値クリスタルに変換する――と。なんと素晴らしい……うまく活用できれば、レベルアップも容易ですね」
「ど、どうして分かったの?」
「わたしは『スキル解析』を所持していますから、相手の同意なしに解析が可能なんです。ごめんなさい、勝手ながらレイジさんのスキルを拝見させて戴きました。謝罪を」
「いや、構わないさ。俺も詳細が気になっていたし……それにしても、これは凄いな。君が言うように、上手に使えばレベルをどんどん上げられるかも。出世も早いかもしれない」
凄いぞこれは。
彼女のおかげで、俺のゴミスキルは覚醒して神スキルとなった。これで馬鹿にしてきたヤツ等を見返せるかもしれない。
だが。
「どうやってモンスターのアイテムを入手したものか……。俺、実践経験ゼロなんだよな」
「それなら、アレはどうですか」
アレ?
ルシアの指さす方角に釣られて見てみると――
「今日もモンスターが落としたゴミだらけだぜ。討伐も楽じゃねーべな」
「ああ、道端に放置しておくと冒険者の邪魔になっちまう。帝国騎士のイメージも下がっちまうからな……かといって、アイテムは何の役にも立たんゴミだからなぁ」
「ああ、製造スキルで使えるわけでもねぇ。ポーションの材料になるのも極一部だからな~。これが全部、経験値にでもなってくれりゃあ、帝国の戦力も増強されるんだがな」
おっさん騎士二人が大量のゴミを捨てていた。
というか、おっさんの発言の通り俺はそれが出来そうだ。――って、そうか。あの廃棄物は、国の外にあるフィールドやダンジョンで狩られたモンスターのドロップ品か。確かにどれもクエストや製造では使わないアイテム。売ってもたかが知れてるし、1セルにしかならない。
飲み物を買うのにも100個も必要になってしまうし、売却や運搬の労力とか様々な手間を考えると、非効率で割りに合わない。
だから、売価1セルのアイテムは、ああして捨てるしかない。廃棄される。
「……なるほどなあ。ルシアさん、俺……あの廃棄物を戴いて、経験値クリスタルを製造してみようと思う。スキルレベルが『1』で低いけど、成功確率は20%もある。いけるはず」
「ええ、失敗するとアイテムは消失してしまいますけれど、失敗しても廃棄物は次から次へと運ばれてきます。手間も掛かりません」
そう考えると、すごいな。
「なんとか廃棄物担当になれるといいんだけど」
「そこは努力次第ですよね」
分隊長に直談判してみるか。
ここで終われないし……うん、頑張ろう。
「俺、行ってくるよ」
「はい。わたしは、この病室でいつでもお待ちしております。いつか……いつかでいいのです。わたしを連れて行って欲しい」
「……連れて行って?」
「いえ、なんでも。今は目の前の事だけに集中してください。応援していますよ、レイジさん」
少し気になったけど、手を振って別れた。
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