第17話 真犯人
騎士団内部を歩いていた。
一階にある分隊長の部屋の前。丁度、扉が開いて、気怠そうな顔をした男が現れた。その見覚えのある顔が俺を呼び止めてくる。
「よう、レイジ」
「あ……マーカス・キャメロンさん、お疲れ様です。この部屋……分隊長に用事があったんですね」
「まあちょっとな。――ああ、マーカスでいいよ。こっちの関係は分かってるよな。妹……ラティヌスがいつもお世話になっているよ」
やっぱり兄だったんだ。
金の髪といい、クールな顔つきとか雰囲気もどことなく似ていたし。もしやと思ったんだけど、本当に兄妹だったとはな。
「いえ、俺の方がお世話になっています。この刀だって戴いちゃいましたし……なんだか貰ってばかりで申し訳ないです」
腰に携えている刀を示すと、マーカスさんが豪快に笑う。
「ダハハハハ! まったく、ラティのヤツめ。本当にレイジに入れ込むとはな」
「い、入れ込むって……」
「ああ、アイツはお前が――いや、これは妹の気持ちだったな。とにかく、ありがとよ」
ポンポンと肩を叩かれて、悪い気はしなかった。なんだろう、マーカス・キャメロンこの人には、人を惹きつける魅力がある。だから不快さがない。
「ところで、マーカスさん」
「ん?」
「ジョンの事なんですけど、なにか変わった事は?」
「ジョンか。そいや、ヤツは最近、夜にゴソゴソ何かやっている気配があるな。微弱だが魔力を感じる。騎士団内部でのスキルの使用は一部を除いて使用を固く禁止されている。緊急用とか一部が使えるから何とも言えないんだが……嫌な気配を漂わせているというか、殺気らしきものを感じるんだよな」
それだ。
やっぱり、ジョンは部屋で亡霊騎士を操る、もしくは召喚するスキルを持っているんだ。それを使って殺人を起こしている――というところだろう。
「情報ありがとうございました。俺は行きます」
「気を付けてな。近頃は殺人がどんどん多くなっている。この前も出たらしいしな」
手を振って別れようとしたが――
「ああ、そうそう。もうひとつ忘れていた」
「え」
「お前さん、部隊長から嫌われてるな。最近、毎日愚痴ばかりを聞かされてるよ。困ったもんだよ」
また豪快に笑ってマーカスは去った。
あの分隊長!
ん、そういえば、分隊長の部屋って……。
◆
夜になって、俺はジョンの行動を待った。
その前に、せっかく騎士団にいるので廃棄場へ。事前にマーカスさんから許可を貰ったので問題はない。あんなゴミならいくらでもあげるよと言われ、俺は心の中でガッツポーズ。
「ラッキーだったな、彼が丁度、今月の廃棄場担当だったとか。ありがたく収集品を拝借しよう。どうせ捨てられちゃうアイテムだし」
近くにあった収集品を拾い、経験値クリスタル(コボルト)を製造した。
「今日はコボルトの皮がメインか。経験値は……へえ、これは中々良いな」
クリスタルを使用すると『84』も経験値が入った。スライムが『30』だったので中々多い。モンスターの強さによって変わるので、当然といえば当然だけど。
スキルレベルが低いせいで製造失敗も多かったけど、なんとか6個の製造を成功させた。全て使用して、最初の含め『588』の経験値を獲得。レベルが『23』となった。
「まだ時間はあるな、余分にやっていくか……ん? あそこの収集品は経験値が多そうだな。どれどれ」
◆
経験値の製造を終え、俺は再びジョンの動向を待った。――だが、いつまで経ってもあの赤い光は出て来なかった。
「……むぅ」
今日はもうダメかと諦めかけたその時。
ポワッと光が出て――
「あれだ! やっぱりジョンの部屋から……いや、これはおかしいぞ」
ジョンの部屋ではない。ここは二階で、下には分隊長の部屋。まさか……犯人はジョンではなく、分隊長ユピテルなのか?
走って一階へ向かった。
「……まさかな」
俺は思い切って扉を開けた。
「…………レイジ・ハークネス、よくぞ見破った」
刃が俺の腕に到達しようとしていた――まず!