第15話 大広場・ヤルングレイプにて
ラティを連れ、屋敷へ戻った。
ルシアの部屋まで向かって、扉をノックして出て来て貰った。
「こ、この子は騎士団で知り合ったメイド騎士で、名前をラティヌスという。俺のメイドになった……」
「よろしくお願いします、ルシア様」
ぽかんと口を開くルシアは、状況を飲み込めていなかった。
「ラティヌスさんじゃないですか」
「なんだ、知っていたのか」
「ええ、同じ騎士団でしたから――って、メイドになったとは?」
詳しく説明すると、納得してくれた。
「う~ん……分かりました。確かに桜花という刀がなければ、あの決闘に勝利はなかったですからね。それに、人数は多い方がいいですよね。よろしくお願いします、ラティさん」
二人とも握手を交わした。
良かった、歓迎してくれて。
「それじゃ、自分の部屋に戻るかな」
「待って、レイジさん」
「?」
「亡霊騎士の件です。今から探しに行ってみますか?」
まさかの提案に驚く。
でもそうか、出没するのはこの深夜に近い時間帯だって聞いた。亡霊騎士とエンカウントするなら、今しかないって事だ。
「分かった。じゃあ、行こうか」
◆
ルシアとラティを連れ、夜の街へ。
深い闇が支配している。
明かりは乏しく、街灯も薄暗い。
殺人鬼の影響だろうか、冒険者の姿は殆どなく閑散としていた。静寂だけが取り残され、孤立していたように見える。
「昨晩の現場か」
「大広場・ヤルングレイプ――その西にある民家です」
ルシアは指を差し、そこを示した。
あそこか。
「ここで殺人が……む、今、なにか見えなかったか?」
「何も見えませんでしたが」
一緒に目を凝らすラティは周囲を鋭く見渡す。おかしいな、暗闇に何か居た気がするんだが。
すると、またポワッとして何か通り過ぎた。
「あっちだ……!」
怪しい赤い光が見えた。
別の民家を襲う気か。
急いで向かうと――、
「きゃあああああぁぁ!」
女性の悲鳴が上がった。
あの家か……!
直ぐに向かうと、恐ろしい光景が広がっていた。
「……遅かったか」
女性が殺されていた。
衣服をズタズタに裂かれ、刺し傷も深いように見えた。これは手遅れだ……助けられなかった。くそっ! 本当に殺人鬼……亡霊騎士が存在したのかよ。
「この女性、ライトニング家の支持者です」
ラティが壁に気づいた。
そこには紋章が飾られていた。
これは、ライトニング家の……。
「くそっ……ラティ、ルシア二人共、ここを頼む!」
俺はあの赤い光を追った。