表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/63

第11話 帝国アイギス

 帝国アイギス・中央東。


 城を囲むように大きな屋敷は点在し、その中のひとつがライトニング家だった。建物も庭も何から何まで広い。



「こんな所に住めるだなんて……」



 ルシアを連れて、外へ向かっていた。

 国の事を知ったり、これからの事を()ろうと思ったからだ。



「皇帝陛下がお認めになった三大騎士ですからね。その家柄も、名声も、権力も国中に(とどろ)いています」



 腰まで伸びる銀髪が風に()れている。思わず見惚れそうになり、俺は前を向く。



「……そ、そうだな。いつかその三大騎士を超えられるといいな」



 なんて冗談のつもりだったが「ええ、いつか超えましょう」とルシアは、まるで確信があるかのように(うなず)いた。


「いつか、ね」



 門を出て、久しぶりに大通りの方へ出た。

 三大騎士や騎士団などの固まっている地区を抜ければ、すぐに露店や冒険者で溢れている光景が目に入る。お祭りのような活気があっていいねぇ。



「こっちは騒がしいです」

「ルシアは、こういう雑踏(ざっとう)が苦手なのかい?」

「ええ、ちょっとだけ」



 はぐれないようルシアには、俺の(そで)()まんで貰う事にした。これが逆効果だったのか、分からないけど周囲から注目を浴びた。



「……なんかジロジロ見られてる」

「レイジさんは有名人ですから」

「俺が? どうして?」

「この前、カイルさんを倒されましたから」



 ……いや、どちらかと言えば、みんなルシアを見ている。彼女は、枢機卿(カーディナル)だし、そもそもの容姿が一般人を超えている。


 豪華な礼服も必ずといって視界に入るし、嫌でも目立つ。



「おいおい、ルシア様だろ」「そうだよな、あのド派手な礼服」「枢機卿(カーディナル)!? わぁ、ちっさくて可愛いなぁ」「あの銀髪のお嬢ちゃんが?」「初めて見たぞ、あんなお人形みたいな子」「男の方は誰だ?」「さあ? 連れ去り?」「やばくね?」



 ――っておい、後半は俺が疑われてるじゃないか。まずいな、このままだとマジでそう認識されかねん。



 ので、俺はルシアの手を取る事に――う。



「……? レイジさん?」

「……その」



 迷っていると、群衆の中から男が現れた。

 コイツは……。


「おい、レイジ! この前はカイルをよくもやってくれたな!」

「あんた、ジョンか」



 カイルの悪友、ジョンだ。

 茶髪の感じの悪いヤツ。



「ああ、お前のせいで俺たちはどん底だよ。カイルは寝込んだまま起きやがらねえ。分隊長からは待機命令を下された。俺たちはしばらく動けねえし、下手すりゃクビだ。お前のせいだぞ!」



 いきなり剣を抜き、構えるジョン。横暴な。



「知るかよ。そもそものきっかけは、カイルから難癖付けてきたんだぞ。それで決闘が決まったんだ。文句を言われる覚えはねえよ」


「ンだとぉ! ……っ、ルシア様」



 ジョンが俺の背後にいるルシアの存在に気づき、顔を青くした。



「……」

「なぜお前がこの方を連れ歩いている!」


「騎士団は追い出されちまったからな。二人でこれからどう動くべきか考えようと思っていたところだ。そこにアンタが現れた。それだけの話だ」



 そう言い放つと、ジョンがキレた。



「っざけんな!! その方はケラウノス騎士団の名医だぞ。お前なんかが近寄っていい存在ではない! 今すぐ返して貰おうか」



 剣が向けられて、俺はルシアを守る姿勢に入った。この子だけは守る。けれど、ルシアが前へ出た。



「やめてください。レイジさんは、わたしの大切なパートナーです。彼を傷つけるなら許しませんよ」



「バカな。そんなクソガキのどこが良いんだ! 最早、ただの雑兵ですらない庶民だぞ! そんなヤツ、誰も必要としないし、むしろゴミですよ、ゴミ! 雑兵すらも相応しくない。あの廃棄物と一緒ですよ、そいつ!」



 むちゃくちゃ言われ、さすがの俺も怒りが込み上げてきた。そこまで言うか!?



「最低ですね……彼の事、何も知らないクセに。……もういいです、行きましょ、レイジさん」


「え……あ!?」



 自然と手を繋がれ、俺は引っ張られた。



「まて! 逃げるのかレイジ!」



 いや、逃げたくて逃げているわけではない。ルシアが引っ張るから! ……ああ、もう人混みに入ったから見失ったよ。



 まあいいか、おかげで戦わずに済んだ。

 それに手も繋げた。



 そっか、俺を引っ張ってくれるのか……嬉しいな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ