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第10話 ライトニング家

「……ルシア」


「レイジさん、わたしは見放しませんよ。貴方(あなた)が人一倍……いえ、それ以上に頑張っていたのは知っていますから。だから、そんな頑張り屋で無茶する貴方(あなた)を放ってはおけません」



 そう真剣な眼差しを向けられては、断れなかった。



「でも俺なんかの為に……いいのか」

「いいのです。ですから、今はとにかく治療に専念して下さい。いいですね」


 分かったと、(うなず)く。



 ◆



 意外な事に三日経ってやっと動けた。あの分隊長ユピテルの不意打ちが相当体に効いたらしい。なんて威力だったんだ……さすが分隊長か。



「これで完治ですね、レイジさん」

「これからどうしようね。俺、雑兵ですら無くなっちゃったし」


 途方に暮れていると、部屋の(すみ)で聞き耳を立てていたエドウィンが口を開いた。



「その経験値製造スキルを使って、最強になればいい。それで低級騎士達を黙らせられるだろう。やがて、君は再び騎士団に必要な人物となる。……いや、それどころか三大騎士に並ぶ力を持つだろうね」



「最強に……か」



「今、我が国は不安定でね。内部から崩そうという不穏な動きも見られる。敵は常に存在するのさ。そこでだ、レイジ、君はこの部屋を使っていいから、強くなるんだ。強くなって、国内に(うごめ)く不穏分子を排除して欲しい」



「不穏分子を?」



「ああ、皇帝陛下の首を狙う者は数多い。三大騎士も(しか)り。――そこで、君が活躍すれば名も上がるし、もっと上へ行ける。騎士団なんて目じゃなくなるぞ」



 ――なるほどな。

 騎士団に(こだわ)る必要もないのかもしれない。



「分かったよ。とりあえず、やってみるだけやってみるよ」

「良い返事だ。期待しているよ」



 エドウィンは微笑のまま去った。そして、気づけばルシアと二人きりになって、沈黙に包まれた。何を話していいか分からない。


 でも、お礼は言いたい。



「……その……ありがとう」

「いいえ、レイジさんの為ならわたしも頑張れます」



「どうして、こんな俺を見捨てないでいてくれるんだい」



「三日前にも言ったでしょう、放っておけないって」

「でも俺は……騎士団を追放されたんだぞ。結局、雑兵レベルの男だったんだ……俺に価値なんてもう……」



「それは違います。わたしにとって、レイジさんは特別な存在(・・・・・)なのです。まだチャンスはありますし、探せば道はいくらでもあるんですよ。最後まで諦めないで」



 そこまで(はげ)まされると、まだ頑張れる気がした。ルシアの声とか仕草のひとつひとつが俺の心を癒しているように思えた。



 錯覚(さっかく)かもしれないけど、でも――それでも。


 ああ、ルシアは凄いな。



 ……そうだな、騎士団がダメなら他の組織で頑張っていくしかない。成り上がる方法はいくらでもある。今は、幸いライトニング家のお世話になっているし、なにも絶望ってわけでもない。上手く立て直すしかない。



「けど、廃棄場はもう行けないか。結局、甘い蜜を吸って楽々レベルアップってワケにはいかないね。地道にモンスターを倒していくしかないかな」


「それなら心配ありません。探すんです」


「探す?」


「方法を探していきましょ。二人で」

「二人で……ルシアも?」


「ええ、これからは二人です」



 俺の手を優しく(にぎ)って微笑んでくれるルシア。

 そんな笑顔に俺は救われた。

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