最終話「64年後…」
平成21年8月…
蝉の声が聞こえる
ブオオオオオ…
「しっかしあなたのお父さんのほうのお爺さん夫妻は長生きだよね」
「まったくだ、親父もお袋もタバコの吸いすぎでくたばっちまったというのに」
「有希、啓太、もうすぐつくわよ」
「わかったぁ」
「啓太これ飲む?」
「姉ちゃんありがと」
「よしついたぞ」
キィィ…
「おお、有希大きくなったな」
「そお? 最近ほとんど背伸びないけど」
「いや…胸が」
「変態爺!!」
「あらあら有希、許してあげなさいよ、葵さんは子供とも大人ともつかない中途半端な人が
好みなのよ」
「それにしても、啓太も大きくなったわねぇ」
「えっ? そうか?」
「爺さん婆さん、これお土産」
「ほお、哲郎、すまない」
このどこにでもありそうな家族…じつは64年後の霧島家である
霧島葵…現在89歳、死ぬ気配がないほどの元気爺26歳
霧島蘭…現在80歳、同じく死ぬ気配がない元気婆
霧島哲郎…現在39歳会社員
霧島美智子…現在38歳主婦
霧島有希…現在14歳、中学二年生 女子
霧島啓太…現在11歳、現在小学六年生 男子
ちなみに哲郎の父は60歳で母は63歳で亡くなっている。
死因は肺がん
「あれ? お爺ちゃんこれなに?」
曽祖父だが爺さんはこの人しかいないためおじいちゃんと呼んでいた
有希が言ったこれとは…葵の若い頃の写真だった
「それか? 俺だ」
「ええ!! うそぉぉ!!」
「どうだ? お爺ちゃんカッコイイだろ」
「うそぉ…お爺ちゃんにもこんな青年時代があったの?」
「そりゃあ俺人間だもん!」
「この頃は蘭も可愛かったぞぉ」
「なんですって?」
「もももっ!!! もちろん今も可愛いけどな!!」
「ありがとお葵さん」
「ふぅ〜ん?」
有希が横を見るとこんなのには興味なさげに啓太はゲームをしていた
父さんと母さんは晩御飯の買出しへと行った
「っでなんでこんなにピシッてしてるのお爺ちゃん」
「ハハハッ 俺はない! 飛行機のりだったんだ!」
「マジでぇ!? 想像つかないよぉ!」
「そうかぁ? 俺はラバウルっちゅーところで名の知れたパイロットだったんだぞ」
「っでなにしてたのそこで?」
「戦ってたんだよ国の為に」
「へぇ…」
有希は関心すらなかった
「いやぁ厳しい戦いだった、特に20年の4月6日は死にかけたぞ」
「元々死にに行く予定だったけどな」
「えっ?」
「学校で習わなかったか? 神風特攻隊じゃ」
「うん、知ってるけど頭がおかしいって習ったよ」
「そりゃあ…先生の教え方が悪いな」
「俺は国の為もあるがなにより愛する者を守る為に散ろうとしたんじゃ
結果的には生還しちまってなんの役にもたてなかったがな」
「そうなの? 軍から命令されて有無も言わず死んだんじゃないの?」
「確かに軍からの命令はあったけどな それでも俺らは
死など恐れなかった」
「アメリカに負ければ国も天皇も、家族も伝統も文化もなにもかもが
失われてしまうと思っていただけに、命を捨ててでも守りたかった」
「そういうことじゃ! ハッハッハ!」
「へぇ…でも死ぬのって怖くない?」
「そりゃあ死の恐怖はあったわ 俺の人間だからな!
だが、守る為なら命を捨てる覚悟じゃった」
「俺は特攻し損ねて海上に不時着したところを後からきた水上偵察機に
助けられたんだ、目が覚めたら戦争終わってて国の為に死ねず恥ずかしかったなぁ」
「でも今は生きててよかったと思ってる、こうして曾孫の顔も拝めるわ
なんたって蘭とがんばって幸せな人生送ってきたからな」
「お前さん風にいえばリア充ってもんか! ハッハッハ!!」
「いろいろ経験しすぎてよくわからんがその経験がまたな!
今となってはいい思いじゃい! ハハハハハッ!!」
葵はすべて笑いながら語った
「ところで有希どうじゃ俺の若い頃は?」
「う〜ん…カッコイイとはおもうよ…」
「見た目もあるけど!心とかがすごく…」
「じゃあ俺と付き合うか?」
「それは嫌だ!」
「おお、俺には蘭がおったな! すまんすまん今のは冗談じゃ有希! ハハハッ」
「葵さん冗談がきついよ ハハハ」
その後霧島葵元海軍中尉は2010年6月23日、90歳で永眠。
いろいろな経験をしある意味ただのへらーと暮らしてたり金持ちで好きなように
暮らしている奴よりもリア充だったのかもしれない
そして…蘭と家族達との苦労をしつつ幸せな人生は…何故か女子高生になってしまった
夢から始まったのだった
おしまい
番外編あるけどとりあえず本編終了
皆様方のご感想お待ちしております