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神殺の異世界攻略者 ~二つの『ユニークスキル』で難攻不落のゲーム世界を駆け上がる~  作者: ぐーみぃ
第1部:アルベロディオと一人(ふたり)の英雄
6/13

第5話:『ミステリオーソ』と『クレイジー・ノイジー』・その3

「...これは、じっくりとした話し合いが必要みたいね。」


「.....ああ、同感だな。」


少年と少女は、この奇妙な空間で見つめ合っていた。

「うーん... お互いに言いたい事は色々とあると思うんだが、まずは手始めに自己紹介でもしないか?」

「...まぁ、確かにそうかも知れないわね。こんな状況で最初にするべき事かどうかは分からないけど、一応名前くらいは名乗っておかないとね。」

ダイムの提案に、ハルは少し不満そうな顔をしながらも頷いた。

「じゃあ、まずは俺から...」


「――ダイム・チャンプ。13歳で、日本人とアメリカ人のハーフ... つっても分かんねぇか。地球って所から謎の銀髪の男にここに送り込まれて来た。まだ分からない事だらけだが... これからよろしくな。」

ダイムは立ち上がり、少女に向かってニッと笑った。

「よろしくしようがしなかろうが、きっともう私達は離れられない関係になってしまっているんだろうけどね... ここはもう仕方が無いと割り切るしかないみたいね。私はハル・ホワイトリリィ。君と同じ13歳。アルベロディオの第12層にある、ヴェルト村出身。元々家庭が冒険職の人ばかりな事もあって、この世界の事には詳しいと思う。夢は世界を攻略して神様を倒す事よ。よろしくね。」

ハルが手を差し出すと、二人は少しぎこちない雰囲気で握手をした。


「とりあえず、まずは状況の整理をしましょう。君は私のユニークスキルの能力によって異界から来た魂で、私が『力の結晶』を触った事で君自身の中にもユニークスキルが付与され、その力であのブラックレイジをあそこまで倒した... って事よね、おそらく。まぁ、その異界ってのも何のことなのかよく分かんないけど... ダイム、ついでに君は私のスキルの影響で知識を勝手に少し分けてもらったって言っていたわけだけど... 話を進めるためにまずは基本中の基本、私達の住む世界がどんな所か分かっているのか聞いてもいい?」

ハルは下顎を指でつまみながら問いかけた。

「まあ、なんとなくはな。俺も気が付いたらここみたいな空間にいて、ほぼ偶然お前が最後にスキルを発動したタイミングで、俺がお前のスキルやこの世界に関する知識を借りた事で参戦する事ができたんだ。でも、あの状況で必要な情報だけを引き出しただけだったからな。悪いが、詳しく説明してくれねぇか?」

「...いいわよ。それならまずは簡単にこの世界、『アルベロディオ』の成り立ちを教えてあげる。」

そう言うと、ハルは真面目な雰囲気で話し始めた。


「――300年前、世界に突然『神』が現れた。その神様は如何に自分が人類に退屈しているかを話し、世界をこの『アルベロディオ』として再構築したの。新しくなった世界は全部で100層に分けられた、魔物や迷宮が出現した世界で、人類は皆最初の第1層に送られた。神様は自らの世界を『ゲーム』と呼び、人間達が13歳になるとそれぞれに一つずつ、唯一無二の『ユニークスキル』を与えた。その力でアルベロディオを攻略し、頂点である第100層に居る神自身を倒せと言う使命を人類に言い渡しながらね。なんでも、神様を倒した者が新しい神として世界の絶対支配権を握れるらしいの。

そうして、人類はバラバラになった。神を目指し世界攻略に闘志を燃やす人が沢山いた一方で、国や政府機関が完全に崩壊した新世界に絶望して自ら死を選んだ人もいたらしいわ...」


「...なるほどな。いきなりスキルが全てを支配するような世界になりゃ、そりゃあ色々と悪影響も出てくるだろうよ。でも、みんながそれぞれ誰とも被らない特殊能力を持ってるってのは少し面白そうだな。」

ダイムはハルの話に頷きながら言った。


「――そしてその後250年、人類は少しずつ、確実に世界の層を突破してきた。でも今から50年前、第50層のワールドボス、ブラックレイジの登場によって攻略の勢いは止まった。攻略者達の中でも当時最強と言われていた私の祖父ですら戦いの中で行方不明になり、人類はその殆どが圧倒的な力を持つ黒龍の討伐を諦め、同時に世界攻略の事も忘れていった... ってところね。」

ハルは話し終えると、小さくため息をいた。


「そうか... っておい待て、その超つえーブラックレイジってヤツは、さっき俺が倒した竜の事だよな?あいつは確かに強そうだったが... 俺一人であそこまでは普通に倒せるくらいのヤツだったぜ?まぁ、向こうも本気じゃなかったのは明確だが...」

ダイムが少し困惑した顔で尋ねると、ハルは少し呆れ気味に答えた。

「それはあなたの能力スキルが強すぎるのであって、普通は100人以上の大部隊で挑んでやっとあの第一形態を倒せるってとこなのよ...」

「いや、さっきのは完全に不意打ちだったし、そんな事は無いと思うが... そう言えば、竜の話も重要だが、まだお互いの『ユニークスキル』の紹介もしてなかったじゃねぇか。今後に絶対に必要な情報だろうし、今やっとくか?」

「...そうね。あなたも私もお互いのスキルの大まかな事は分かってると思うけど、一応細かい説明をしておいた方がいいわね。」


――ブゥン

ハルは、再び自分の前に青白く薄い画面の様な物を出現させた。

「これがステータス画面。ユニークスキルを持つ人間、つまり13歳以上の人はみんな出す事ができるわ。目の前に出そうと思えば案外簡単に出せるから、君もやってみて。」

ハルはそう言い、ダイムの方を見た。

「え―っと... こうか?」

――ブゥン

すると、ダイムの前にも同じような画面が出現した。

「おっ、できたっぽいぞ!」

「オッケー。それじゃあ、まずは基本的な情報を見てみて。自分の名前やレベル、年齢や職業、そして基礎的な身体能力を数値で見れるわ。レベルは戦いで強くなったり、色々な事を経験すると基礎能力と共に上がっていくの。初期のレベルは、スキルを獲得した時点でのその人の強さによって変動するわ。普通は大体10前後。高くても30くらいだけどね。」

「レベルって、完全にゲームみたいな世界だな... 神様ってのは、地球のゲームが好きだったのか...?」

ダイムはそう独り言を言いながら、自分のステータス画面を見た。



――――――――――――――――――――――


名前:ダイム・チャンプ


レベル:25


性別:男


年齢:13歳


職業:無し


基礎能力:


HP・794

力・139

防御力・53

素早さ・79


――――――――――――――――――――――



「レベルが25に、力139って... 君、やっぱり初期ステータスとしてはメチャクチャ強いわね。」

ハルはダイムの画面を覗き込むと、目を大きく見開いて言った。

「そうなのか?まぁ、ここに来る前は色々と格闘技やらスポーツやらやってたからな... 家の方針で英才教育も受けさせられてたし。」

ダイムは、少し嬉し気な様子だった。

「この基礎能力の中でも、特に重要なのが体力(HP)よ。視界の左上にゲージが表示されているやつね。この世界では自分の体が傷つく事によってHPの値が減り、0になるとそこから1分以内に回復しない限りは死に至るわ。HPは減っても睡眠を取ったり食事をしたり、あるいは回復系のアイテムを使う事で回復できるから安心して。ちなみにHPの早い見方は残り半分以上で緑、半分以下で黄色、そして1/4以下で赤く変色するところよ。」

「なるほど、HPの管理は戦いでも命に係わる重要な事ってわけだな。それでもう一つ気になったんだが、その『アイテム』ってのは何だ?何か特別な扱いを受けた道具とかなのか?」

ダイムが尋ねた。

「まあ、そう言う解釈で構わないわ。アイテムは様々な魔法の様な特殊効果を持った道具の総称で、主にこの世界の至る所にあるダンジョンやモンスター討伐、それをしなくても他人が取って来た物を店で買う事も出来るわ。世界の便利グッズね。」

「へぇ~、なんかもう完全にゲームの世界だな。」

ハルの説明に、ダイムは頷いた。


「それじゃあ次は最も重要な部分、『ユニークスキル』ね。まずは私のものの詳細な説明をするわ。今の私達の状況と深く関わっている事だしね。」

そう言うとハルは、自分の画面をタッチしダイムの前に見せつけた。


「私のユニークスキル、名前は『神秘の魂(ミステリオーソ)』。私の肉体に、異界の魂を一つだけ憑依させられる... 言うまでも無く、ダイムの事ね。そして察するに、恐らく君の魂はもう私の身体からだからは離れられないわ。どうやっても君の魂を私の中から離す方法が見つからなかったもの。そして、常に私達のどちらかの魂が私の肉体を動かす事になる。

そしてさっきあなたが戦っていた時に自分のスキルを分析してみて分かったけど、今私達がいるこの空間は、私の『神秘の魂(ミステリオーソ)』の力によって作られた、私達の無意識の中の世界よ。どちらか肉体を動かしていない方の魂はここに残り、肉体の見ている視界や聞いている音を共有する事ができる。そして今みたいに肉体の意識を戻す事ができない、または睡眠している状態の時は私達両方の魂がこの空間にいる事になるわ。それともう一つ、肉体を操作する魂を入れ替える際には、必ず肉体の意識を一度失くす必要がある。操作をスイッチしたい場合は、眠ったり気絶したりする必要があるって事ね。」


「...なるほど。お前があの時気絶する寸前に『神秘の魂(ミステリオーソ)』を発動した事で、俺の魂がお前の身体に引き寄せられたって事か。」

(あの銀髪の男は、俺がこの世界でハルって少女と世界を攻略する事が運命だと言っていた... あいつは、この状況を予知していたのか?まったく、謎は深まるばかりだぜ...)

ダイムは、状況の整理と周りの謎に頭を悩ませた。

「それじゃあ、ダイムのあの電気のユニークスキルも見せてよ。ステータス画面を指で少し下にスクロールすれば簡単な説明文が出てくるからさ。まぁ、黒龍ブラックレイジとの闘いを見ていた感じでは、君自身は殆どその力を理解しているみたいだったけど... 確か、名前はクレイジーなんちゃらって言ってたわよね?」

「...『CrazyNoisyクレイジー・ノイジー』な。」

そう訂正しながら、ダイムは再び自分のステータス画面を見た。



――――――――――――――――――――――


ユニークスキル:『CrazyNoisyクレイジー・ノイジー』(スキルレベル1)

全身から電流を流し、放電や落雷による攻撃が可能。また、体に電気をまとい、一時的に身体能力を飛躍的に高める事もできる。


――――――――――――――――――――――



「ここに書いてある通りだ。俺は電気を操れる。思ったよりスピードも出るし、攻撃力も上がった。我ながらバリバリ戦闘向きの能力スキルを手に入れたもんだな。」

「羨ましいわね... 私のスキルじゃ、戦闘なんてとてもできたものじゃないし。」

ハルは頬を膨らませながら言った。

「いや、でもこの『スキルレベル』ってのを見た感じ、ユニークスキルもレベルが上がって強くなるんだろ?何か新しい能力が増えたりもするんじゃないのか?」

ダイムは自分のステータス画面を指差しながら言った。

「確かに、スキルは経験を重ねるごとに強くなっていくわ。稀にだけど、新しく能力が追加される場合もある... そうね。ポジティブに考えましょう。私のスキルだって、きっともっと強くなると!」

ハルは笑みを浮かべながら腕を組んでそう言った。


「フッ、その意気だ。これで残りの問題は、あのブラックレイジって竜が言ってた事だが... どうする?ヤツは誰かが俺の力を求めていたと言って――」


――ゴゴゴゴゴゴッッ!!


「うおおぉっ、何だっ!?」

すると突然、空間が地震の様に激しく揺れ始めた。

「肉体の意識が戻ろうとしているのね。ダイム、君の事は今後のためにも目が覚める前にもう少し知っておきたかったんだけど... 時間が無いし、それと黒龍ブラックレイジの話はまた後にしましょう。確かにあの化け物の他の形態やその対策について話し合う必要は大いにありまくるけど、今は目の前の問題の解決が先よ。」

ハルはそう言うと、空間の中央に立つ、何本かの石柱に囲まれた円形の台の方へと歩き始めた。

「それは分かったが、お前はこれからどうするんだ?」

「とりあえず、今は私が私の体に戻るわ。友達のみんなの事も心配だし、まだ自分がどんな状況になっているのかも分からないからね。」

「...分かった。じゃあ、俺はここでお前の視界を借りて待ってる事にするぜ。」

ダイムがそう言うと、ハルは台の上に立ち、目覚める準備を始めた。

「――あっ!そう言えば、一番大事な事を言うのを忘れてた!」

ハルは突然何かを思い出したかのように言った。

「な、なんだ?」

「君、私がトイレに行く時とお風呂に入る時は、ぜーったいに私の視界を借りないでよね!」

「...それ、そんなに大事な事か?」



♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢



「―――はっ!」

ハルが目を覚ますと、そこには上に白い天井が見えた。

「知らない天井だ... ここは一体どこ...?」

上半身を起こすと、彼女は青い患者服の様な物を着て病院のベッドに横たわっているところだった。そこは彼女の故郷の村の雰囲気とは違う、全体が白く塗られた四角く広い病室だった。


「――ハルちゃん...?」

「――!」

その声を聞いてふと左を見ると、そこには見慣れた長い金髪の少女が潤んだ瞳で座っていた。

「モニカ...!」

「...う、うわああぁん!!」

少女は、突然涙を流しながらハルに抱き着いた。

「よかった...!本当によかったよ...!ハルちゃん、もう私達の所に帰って来ないつもりなのかと思ったよぉ~っ!」

友人の赤く濡れた頬を見ながら、ハルは優しく微笑んだ。

「ふふ、私がみんなと自分の夢を置いていなくなるわけないじゃない... ばか。」



― 続く ―

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