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神殺の異世界攻略者 ~二つの『ユニークスキル』で難攻不落のゲーム世界を駆け上がる~  作者: ぐーみぃ
第1部:アルベロディオと一人(ふたり)の英雄
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第10話:『エヴァーラスティング・シン』・その1

「――ふぅ、それじゃあ行くか。」

ダイムは大きく深呼吸をした。彼の前には小さなアーチ状の門があり、服装も動きやすい白いシャツとズボンに着替えていた。

「この勝負に勝って、俺達がギルドマスターになるんだ――!」

門を押し開けると、そこは細かい砂利や砂の混じった地面で埋め尽くされた、大きな円形の闘技場だった。周りの観客席にはソウエイとルミの姿もあり、闘技場の中心にはギルドマスターのノルマンがスーツ姿のまま腕を組んで立っていた。


「準備はできたかな、ダイム君。」

「...あぁ、バッチリだ。」

ダイムとノルマンは向かい合い、互いに戦意の眼差しを飛ばし合った。

「ルールは簡単、互いのスキルは無制限に使用が可能で、私が3分以内に君の体力(HP)を0にできれば私の勝ち。できなければ君の勝ちだ。勿論、君が私のHPを0にしても君の勝ちだよ。決闘は私達のステータス画面から設定できる『決闘(デュエル)モード』によって行われるため、この戦いではHPが無くなっても致命傷にはならない。これで大丈夫かな?今ならもう少し君にハンデをあげてもいいんだよ。」

ノルマンは余裕の見える落ち着いた表情でそう言った。

「おいおい、こりゃまた随分と俺に優しい設定じゃねぇか。経験の差ってのもあるんだろうが、流石に舐めプが過ぎねぇか?...まぁ、そっちがそこまで余裕だって言うなら文句はねぇけどな。」

ダイムがそう言うと、ノルマンは自分のステータス画面を開いた。

「それでは、私の方から君に決闘デュエルを申し込むよ。決闘の前には互いの基本ステータスを見る事もできる。準備がよければ、そこにある『YES』を押してくれ。」

すると、ダイムの前に二人のステータスを表示した画面と同時に、決闘デュエル用の文章が現れた。


「『決闘デュエルの申し込みを受け入れますか?YES・NO』...か。オーケー、答えは勿論『YES』だが、その前に団長のステータスを確認しておくか。」

「...そうか、それなら私も君のステータスを確認させてもらうよ。」

ダイムがノルマンのステータスに目をやると、彼の表情はたちまち豹変した。

「――は、はぁッ!?おい、なんだよこれ!?」

「どうしたのかね、ダイム君?」

(そんな... こんな事があり得るのか...!?)

ダイムの顔からは緊張と焦りからか汗が滴り落ちていた。


「おい、あんた!確かソウエイっつったよな。あんたのレベルは幾つなんだ!?」

ダイムは観客席に立つソウエイに呼び掛けた。

「...なぜ急にそのような事を聞く?97だが、それがどうした。これでも毎日レベル上げの為の特訓は欠かしていないつもりなのだが...」

ソウエイが少し不満そうにそう答えると、ダイムの汗はますますその量を増した。

「あのくらいの強さでレベル97って... じゃあコイツは一体何なんだよ――!?」

彼の目に映るノルマンのステータスはこうだった。



――――――――――――――――――――――


名前:ノルマン・モルタス


レベル:999


性別:男


年齢:285歳


職業:ギルドマスター


基礎能力:


HP・1

力・9999

防御力・9999

素早さ・9999


――――――――――――――――――――――



(レベルが999に、ほぼ全てのステータスが9999...!?なんだコイツは、ステータスがカンストしてんのか!?それにHP1ってなんだよ!?ヌケ○ンかよ!?ってかよく見たら年齢も285歳って... 一体どういう事なんだ...!?)

ダイムの頭は目の前の光景に混乱を極めていた。

「...なあ団長さんよぉ、この世界にレベルの上限ってのはあったっけか...?」

彼は恐る恐る聞いた。

「いや、アルベロディオのレベルシステムに限界は無いよ。レベルも基礎能力も、通常は鍛えれば鍛えただけ無限に伸びていくんだ。」

ノルマンは変わらず小さく笑みを浮かべながら答えた。

(じゃあ、コイツもこれが限界じゃないって事か...!?それとも、何か別の理由があって特別にレベルの上限が決まっているとか...!?)

「それなら、あんたのこの年齢285歳ってのはどう言う事なんだ!?もしかして人間じゃねぇだなんて事はねぇよな...」


「あれれ~?もしかしてダイム君、団長の『ユニークスキル』の事を知らないでここに来たの~?あちゃ~、それはやっちゃったねぇ~!」

すると、観客席のルミがそう言いながら苦笑いをした。

(団長のユニークスキル...!?そうか、この異常なステータスの原因はそれしかありえねぇよな。だがしかし、俺がハルから貰ったギルドの知識の中にそんな情報は無かった。じゃあ、ハルもこの団長のスキルについては知らなかったって事か...?)


「どうしたダイム君、勝負を降りたくなったのかね?」

ノルマンの言葉で、ダイムは再び彼と目を合わせた。

「いや、ここまで来ればもう戦って勝つ以外の選択肢はねぇ...!なら勿論俺の答えは変わらず『YES』だッ!!」

そう言い、ダイムは画面の『YES』を勢いよく指で叩いた。


『ビーッ!!相手が挑戦を受けました。これより、決闘デュエルを開始します。』


二人のステータス画面から鳴ったその声と共に、空中にカウントダウンの様な物が現れ、ダイムとノルマンの頭上にはそれぞれの体力(HP)ゲージが表示された。

『―残り15秒前―』

両者は互いに睨み合い、ダイムは頭の前に両拳を構え、ノルマンは変わらず腕を組んでそこに立っているだけだった。

『―残り7秒前―』

(...この勝負、俺やハルに、応援してくれているカイルやモニカ。そしてあの銀髪の男のためにも絶対に負けられない。相手を圧倒するための戦いの基本は、相手に行動と反撃の隙を与えない事... となると、俺がまず取るべき行動は――!)

『―残り3秒前―』


『―2―』


『―1―』



決闘デュエル開始――!!』


「―――先手必勝だッ!電光石火の『CrazyNoisy(クレイジー・ノイジー)』――ッ!!」

ダイムは一瞬で全身を電流で覆い、ノルマンの腹部を目掛けて閃光が如く速さで飛び込んだ。

――ドオオォォンッッ!!

「うわぁっ!!」

見ていたソウエイとルミも思わず両目を塞ぎ、その瞬間、闘技場は眩い閃光と鳴り響く雷鳴に包まれた。

「――はぁ... まずは俺の出せる精一杯の瞬間火力をぶつけてみたが、どんなもんだったかな?団長さんよォ...!」

ダイムはそう言い、拳からバチバチと電流を鳴らした。放電の煙と巻き上げられた砂ぼこりで、ノルマンの姿は見えなくなっていた。


「――ふむ、中々にいい動きだね。是非とも私達の仲間としてうちに招き入れたいものだ。」

「何――!?」

ノルマンの腹部には反対側の景色がはっきり見える程の風穴が空いていたが、そこから血は流れず彼自身もまだ余裕の表情を見せていた。

「こんな怪我で血が流れないどころか、1しかないはずのHPも全く減っていない...!?おいおい、ブラックレイジと戦った時並みの力で殴ったんだぞ...!!」

ダイムは歯を食いしばると、再び高速で殴り込み今度はノルマンの頭部を狙った。

「――オラァッ!!」

――ドオオォォンッ!!

辺りに再び巨大な雷鳴が響いた。


「...やれやれ、随分と元気のいいことだ。防御力9999の私の体をこうも簡単に壊すとは...」

「...!?」

ダイムは、目の前の光景に思わず自身の目を疑った。

「嘘だろ、バケモンかよコイツは...!?」

彼の前には、頭部の無いノルマンが平然と立っていた。彼は地面に転がる自身の頭を両手で拾い、当然の様に首に乗せてくっつけた。

「私だって、痛みは感じるんだよ?」

ノルマンはそう言うと、ダイムに向かって笑みを浮かべた。

「おいおい、不死身なのかよあんたは...!?HPも減っていないし、いつの間にか腹の穴も服ごと元通りになっている。一体どんな『ユニークスキル』なんだ...!?」

ダイムは汗を流しながら再び身を構えた。

「...そうか、それなら教えてあげよう。私の『ユニークスキル』を!」

そう言うとノルマンは自分のステータス画面を開き、ダイムの方へと向けて見せた。


「私の『ユニークスキル』、名は『永久不滅の罪エヴァーラスティング・シン』と言う。スキルレベル50の、進化を重ね最終形態となったスキルだ。その能力は肌に触れている生物以外の物体の時間を自由に巻き戻す事ができ、その複合能力として私自身の肉体を『死ねない』体へと変えた。痛みは変わらず感じるものの体の破損した部位はすぐに回復し、HPが減る事もない為私のHPは常時1の状態になっている。そして、このスキルの影響なのか、私のレベルはスキルが最後に進化した999以降一切上がらなくなったのだ。」

ノルマンは自身のスキルについて語った。

「なるほど、それで死ねずに生き続けて、年齢も285歳ってわけか... 全く、いいのか悪いのかよく分からねぇチートスキルだな。つまり、俺があんたを倒す事は不可能ってわけだ。」

「そうだよ、呑み込みが早いね。だから君の勝利条件は私に倒されない事にしないと、フェアじゃないだろう?」

ノルマンの表情は未だに変わらなかった。


「...だが、それでも俺は負けねぇ。残りの1分半あんたの攻撃から逃げ回るよりも、こっちから攻撃して回復が追いつかなく程の攻撃を叩きつけてやるッ!!」

ダイムはそう叫ぶと、一瞬で姿を消し目にも止まらぬ速度で電撃のラッシュを叩き込んだ。

「オラオラオラアアァァッ――!!」

閃光と雷鳴は更にその勢いを増し、しばらくするとダイムは勢いを止め、ノルマンの顔の前で拳を寸止めした。

「...どうだ、俺はまだまだいけるぜ?」

「...うん、とてもいいよ。ますます君の力が欲しくなった。」

ダイムは、体中が穴だらけになっても尚立ち尽くすノルマンと激しく睨み合った。


「...ところで、私の『永久不滅の罪エヴァーラスティング・シン』には、触れた生物以外の物の時間を巻き戻して修復する力があると言ったよね。」

ノルマンが自身の肉体を再生しながら言った。

「確かに言っていたが、それがどうした?」

「...実はこの能力、私の周りの空気に使う事で、その時間を巻き戻して直前にその空間の中で起こった事を『再現』する事もできるんだけど... 君にこの意味が分かるかな?」

そう言うと、ノルマンはニヤリと笑った。

「――ッ!ま、まさかッ――!」

ダイムは急いで引き下がろうとしたが、気付いた時にはもう遅かった。


――ズドドドドオオォォンッッ!!!

「うわあああぁぁッ!!」

その瞬間、周りの空中から無数の電撃のラッシュがダイムを襲った。彼はその勢いに抵抗しようとするも抜け出せず、最後の一撃で闘技場の淵へと吹き飛ばされてしまった。

「クッ...!これがノルマンの『ユニークスキル』の真に恐ろしい力か...!攻撃をいくら受けても死なず、受けた攻撃はそのまま今の『再現』によって相手に打ち返す事ができるッ.....!」

倒れたダイムが起き上がろうと力を込めて砂利を掴むと、彼の視界の左上にある自身の体力|《HP》ゲージが目に入った。

「も、もう赤ゲージ、しかも残りHP53だと...!?まさか自分の攻撃でここまで削られるとは、我ながらスゲェ威力だぜ...!」

決闘デュエルの残り時間はあと約1分10秒、まずい、このままじゃ...!)

ダイムは全身の力を絞り出し、流れる電流をバチバチと鳴らしながら再び立ち上がった。


「これでもまだ立ち上がるとは、やはりいい根性をしているね... でも、君にこれ以上私の攻撃が耐えられるのかな?」

ノルマンはわざとらしく優しく微笑みながら、拳を構えるダイムにゆっくりと歩み寄った。

「へっ... 言っただろ、どんな状況になろうと俺は負けねぇぜ!」



― 続く ―

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