109. NP:Participants Ⅱ
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「あぁ? 『コネリーの赤』に代わる新しいポーションが見つかっただぁ?」
胡散臭そうに聞き返すアルバーノ。
傍に控えたエルフ族メイドは、肯定するように頭を下げた。
「ふんっ。
なら、そいつは俺たちが手に入れねぇとなぁ」
舌なめずりしながら、慣れた手付きでメイドのスカートに手を差し込む。
そして、その形の良い尻を撫で回す。
彼女に短めのメイドスカートを穿かせているのも、これがやり易いからだ。
「同意いたします」
ネットリと尻を撫でられているのに全く表情を変えないエルフ族メイドが、静かに応じる。
「つい先日市場に流れ始めた別のポーションのせいで、我々の切り札である『ニガモモ』が押され始めています」
「ああ、『ジバゴの一』とかいうポーションのことだな?
あのウェストノードとかいうクソ商会、こちらと競合する商品をいきなり低価格で流しやがって……ウゼェんだよ」
ストックフォード領に浸透させる目的なのがバレバレだが、効果は抜群だ。
一般市民が欲しがるのは安価で効き目が高いポーションであり、決して有名なブランド品ではない。
無名のものだろうと、安くて質が良ければ飛びつく。
ウェストノード商会は原価を大きく割る値段で売っているため、今は大損をしていることだろう。
だが、浸透が進み、人々が「ジバゴの一」を完全に受け入れれば、話が変わる。
比較的高価で流通量がまだまだ少ない「ニガモモ」は、人々の選択候補から除外されるようになる、そのままストックフォード領の低級回復ポーション市場から締め出されてしまう。
一時の損失で競合相手を潰せる、なかなかの一手だ。
ギリギリと歯噛みしていたアルバーノに、メイドが言った。
「新薬を手に入れれば、巻き返しは容易です。
我々にとっても、新薬はいい商材になるかと」
「で、その新薬とやらのレシピは?」
下着越しでもハッキリ伝わるメイドの尻のもちもち触感を楽しみながら、肝心の部分を尋ねるアルバーノ。
メイドは、涼しい顔で答えた。
「レシピは確認できておりません。
原作者は既に何者かによって殺害されており、死体にレシピのヒントとなる物はありませんでした。
新薬の現物は薬師ギルドに持ち込まれている模様ですが、量が圧倒的に不足しているらしく、レシピの逆算は不可能とのことです」
「……毎回思うけどよぉ、そんな詳しい情報、どこから仕入れてきてやがるんだ?」
胡散臭げな顔で、アルバーノがエルフ族メイドに問う。
アルバーノとて、マフィアを束ねるボスだ。
独自の情報網は持っているし、顔もそれなりに効く。
だが、このメイドの情報は、そんなアルバーノすら軽く凌駕している。
何時も自分の側に侍っているのに、アルバーノすら知らない生の情報を何処からともなく仕入れてくるのだ。
いつ情報を収集しているのか、どうやってそんな機密性の高い情報を入手しているのか、実に不思議だった。
「テメェと知り合って3年経つけどよ、テメェのその情報網だけは底が知れねぇぜ……。
なぁ、レストーレアよぉ」
アルバーノがそう言うと、レストーレアと呼ばれたエルフ族メイドは、その氷の刃のような美貌を微塵も動かすことなく、何時もとなんら変わらない無表情で答えた。
「女の秘密です」
「けっ」
下手すぎるはぐらかしに、思わず鼻で笑うアルバーノ。
だが、それだけだった。
怪しいところもある女だが、アルバーノは気にしなかった。
これからも気にすることはないだろう。
いい腕をしていて、いい仕事をしていて、いい体をしている。
それだけで事は足りる。
これまで彼女がアルバーノを裏切ったことは一度もないし、その気配もまた皆無。
逆に、彼女の戦闘力と情報に助けられたことは一度や二度ではない。
何時も感情が無いかのように無表情だが、あらゆる意味で「いい女」なので文句はない。
「ほんじゃ、薬師ギルドからその新薬の現物とやらを掻っ払ってくるとするかね」
これで触り納めとでも言うかのように、弄っていたレストーレアの尻をペチンと叩く。
手に返ってくるプリプリ触感がたまらない。
終始涼しげな顔のレストーレアは、「いいえ」とアルバーノのポーション強奪案を否定した。
「ポーションの現物は、量が少ないので盗む意味はありません。
狙うべきは、二人の容疑者です」
「二人の容疑者ぁ〜?」
新しく出てきた単語に、何を言っているの分からないという感じで口を曲げるアルバーノ。
「現物をギルドに持ち込んだ人間がおります。
名前はサムとミモリー。
前者はポーション師で、後者は冒険者です。
この二人は、原作者が最後に会った人間であり、死体の第一発見者であり、最初に現物を手にした人間です。
今は、レシピ強奪と殺人の容疑で衛兵隊に連行されている最中です」
「テメェ、それを早く言わねぇか!」
怒鳴るアルバーノだが、顔には獰猛な笑顔を浮かべていた。
「てぇことは、だ!
その二人組をとっ捕まえて拷問すりぁ、レシピが分かるってこった!」
面白くない授業の途中で好きなアニメの話になって表情が変わる子供のように、アルバーノは顔を輝かせる。
「俺たちの仕事はこうでなくちゃな!
おい、『火消し』を呼べ!
衛兵隊からその二人を拉致るぞ!」
弄られていたせいでズレてしまった下着をメイドスカートの上から優雅に直し、レストーレアは静かに頭を下げて部屋を出ていく。
短めのメイドスカートから覗くその美脚を眺めながら、アルバーノは口角を吊り上げる。
金儲けのチャンスが潰されようとしていた矢先に、美味すぎる話が飛び込んできた。
新薬のレシピが手に入れば、「ニガモモ」を領主に売りつける以上の利益が出るだろう。
飛躍の予感に、アルバーノは興奮で身体を震わせた。
今回も視点変更の関係で短めです。 (人д`o)ごめんね




