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第十六話 駆ける

 六花が駆ける。

 その目から零れた涙が一粒、後方へと流れ飛ぶ。


 理沙とは隣の家に住んでいるという縁もあり、幼稚園に入る前からの付き合いだ。

 六花の気持ちがいつから友情から恋情に変わったのか、それは六花自身にもわからない。


(わたしが、一番長く理沙と一緒にいるのにっ……)


 そう思う反面、六花はわかっていた。

 誰かを好きになるのに時間は関係ないであろうということを。むしろ長く一緒にいればいるほど、友情は友情でしかなくなる。


 ――――それが同性ならば、なおのこと。


 六花は知っていた。

 この恋は報われないだろうということを。


 六花は知っていた。

 読書で得た知識だが、失恋というものが苦く、切ないものだということを。


 六花は知らなかった。

 いざそれが自分の身に降りかかったとき、こんなにも胸が引き裂かれそうな気持ちになるということを。


 このまま家に帰って一人で泣きたいとも思ったが、鈴を放っておいてそんなことをしたら、きっと今度は自己嫌悪に押し潰されてしまうだろうという予感があった。


(わたしは……自分のために林に優しくしようとしてるのか……?)


 それはそれで自己嫌悪に陥ってしまう。


 きっと、どの道を選んでも百パーセントの満足なんて得られないだろう。

 それならせめて、友達に寄り添っていたいと六花は思う。それも結局は自分のためなのかもしれないという思考が(よぎ)るが、すぐに首を横に振って振り払う。


 走り続けて、ようやく鈴の背中を視界に捉える。

 鈴は肩を落として、力なく歩いていた。


「林っ!」


 背後からの六花の声にビクッと鈴の肩が跳ねる。


「佐々木……?」


 振り返った鈴もまた、六花と同じように一人で泣いていたのだった。

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