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第十二話 爆弾

 給食後の休み時間、六花の席の周りに四人が集まる。

 これもまた三年生の時から続く、いつもの光景だった。


「涼華ってクラスに友達いないの?」


 鈴がわざわざ隣のクラスから来る涼華をからかう。


「いるわよ! 失礼ね!」


 涼華が鈴の両頬を片手で鷲掴みにし、鈴は口をタコのようにされてしまう。


「痛い痛いっ、や、やめれーっ、佐々木あたしを助けろっ!」


「誰だって人には触れられたくないことがあるんだから、今のは林が悪いよ」


 六花は助けを求める鈴を軽くあしらった。


「六花ぁっ! あんたのその言い方だと、こいつの言ったことがまるで本当のことみたいでしょ!? あんたまでやめてよね!?」


「ご、ごめんって。冗談だよ」


 涼花の怒りが飛び火してくる気配を感じ、六花が慌てて謝った。


「んー、ずっと前から気になってたんだけどー、鈴ちゃんと六花ちゃんって、どうしてお互いのこと下の名前で呼ばないの?」


 わざと話の流れを無視して、理沙が二人に質問した。


「どうしてって言われても……特に理由はないけど。昔からの流れで何となく?」


 六花に関してはその通りで、改めて聞かれてもこれといった理由などないのであった。それは理沙も知っている。

 問題は鈴の方である。


「そうなんだー。鈴ちゃんは?」


「えっ!? あ、あ、あたしも、な、何となくだよ」


 実際には六花のことを意識しすぎて名前を呼ぶのが恥ずかしいからなのだが、そんなことを言えるはずもなかった。


「何動揺してるのよ。やましいことでもあるの?」


 涼華が鈴の頰をムギュッとする。


「ないよ! 昔からそう呼んでるんだから、今更変えるのも恥ずいだろ!? てか、いい加減やめれーっ! あたしの可愛い口がタコみたいになっちゃうだろー!?」


「恥ずかしいの? 六花ちゃんを押し倒したりするくらい仲良しなのにー?」


 理沙が爆弾を投下した。


 その言葉を聞いて、鈴は瞬時に顔を真っ赤にし、涼華は驚きのあまり口をポカーンと開いた。


「さ、ささ、佐々木!? 理沙に話したのか!?」


「そうだよ。おまえがまたバカなことをしたって」


 鈴の気持ちを知らない六花からすれば、あれはただ鈴がじゃれてきたくらいにしか思っていなかったが、鈴にとっては死ぬほど恥ずかしい出来事だ。


「さ、佐々木のバカッ! もう知らないっ!」


 鈴は居たたまれなくなり、涼華の手を振り払い、走って教室から出ていってしまった。


「ろ、ろろ、六花、あんた鈴と何やったのよ!? 」


「な、何もやってないっての!? 」


「じゃあ何で鈴はあんなに顔を赤くしてたのよぉ!?」


 鈴に恋している涼華としてはもう気が気でなく、思わず涙目で六花を問い詰めてしまう。


「知らないってば!? あのバカに聞けよ!? 」


「嫌よ! 聞くの怖いものっ!」


「なんでだよ!?」


 涼華も、この一連の流れで鈴の気持ちを察してしまった。鈴の恋心を知らぬは、当人の六花だけだった。


「わ、わたしはそれでも諦めないもの! ふん!」


 涼華は捨て台詞を残して、自分のクラスへと戻っていってしまった。


「わ、わけわかんないよ……涼華にも林のバカが感染したのかな……?」


 六花が困ったように理沙を見る。


「ふふ、そうなのかもねー」


 理沙だけがいつも通り、のんびりとした笑顔を浮かべていた。

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