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第十一話 乾 理沙

 乾理沙はやや天然気味で、おっとりとしている女の子だと周りからは思われているが、実際はそうではない。


 四人の関係のバランスを保つために、そういう役割を演じているに過ぎなかった。


 暴走気味の鈴や、それに辛辣な突っ込みを入れる六花、二人に熱い対抗心を燃やす涼華。


 過去、この三人を放置すると喧嘩に発展することもあったため、彼女たちの間に入ってやんわりと仲裁したり、のんびりとした一言を挟むことによって緩衝材になることが自分の役割だと思っている。


 少し離れたところから、俯瞰して三人を眺めていた理沙は知っていた。涼華が鈴のことを好きで、その鈴は六花のことが好きだということを。


 反面、自分自身へ向けられている好意には疎く、六花が自分のことを好きだということには気がついていなかった。


「ねぇ、六花ちゃん。この前の土曜日、鈴ちゃんと二人で遊んだんでしょ? 楽しかったー?」


 朝の通学路、理沙は隣を歩く六花に問いかけた。


「ああ、うん……なんかあいつ様子おかしくてさ……大変だったよ……」


「そうなんだ?」


「うん。いきなり押し倒されたりして、何が何だかだよ」


 はぁ、と六花がため息を吐く。


「ありゃー、大変だったんだねぇ?」


 理沙はそう言いながらも、内心では喜んでいた。

 細かい経緯はわからないが、二人の仲に多少なりとも進展があったということなのだろう。


 理沙は涼華のことが好きだ。

 だから、涼華が好きな鈴には六花といい関係になってもらって、涼華には鈴のことを諦めてもらいたい。


 そうなれば、傷ついた涼華を慰めて、自分が涼華と――――と、そこまで考えて、理沙は自己嫌悪に陥る。


(わたしって……ほんとに嫌な子だ……)


「理沙? どうしたの?」


 理沙の微妙な表情の変化を読み取った六花が心配して声をかける。


「あ、ううん、今朝からちょっとお腹が痛くって。大丈夫だよー」


「そっか……無理しないでね?」


「うん、ありがとうね、六花ちゃん」


 理沙は微笑んでお礼を言って、心の中で六花に謝罪した。


(わたしは、自分のために鈴ちゃんと六花ちゃんを利用してるんだよ……ごめんね……)


 誰にも言えない罪の意識に、理沙は苛まれていた。

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