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第一話 豚汁の読み方
その日、佐々木六花はいつもの起床時間である六時よりも一時間早く起こされた。
起こされたと言っても人にではない。スマホの通知にだった。何だろうと思いながら寝ぼけ眼で画面を見る。スマホは同級生の林鈴からのメッセージの着信を知らせていた。
六花は、まずその時点でイラッとした。あのバカからのメッセージなんてどうせ下らないものに決まっている。
そう考えて寝直そうとするが、この時間にわざわざメッセージを送ってくるということは万に一つ、いや億に一つの可能性ではあるが、急を要する案件の可能性もある。そう考えると目が冴えてしまい、寝直すことができなかった。
「はあ……」
布団の中でため息を吐きながらメッセージアプリを開き、内容を確認する。
『豚汁って、ぶたじる、とんじる、どっちが正しいの? 気になって夜も眠れなくて朝になっちゃったから教えてちょ♥』
六花は短く『しね。ねろ』とだけ返信した。このバカのために文字を変換するのすら面倒だ。それからスマホの電源を切って、六花は寝直した。