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「紅蓮だ!!」

「紅蓮じゃないでしょ。紅蓮お兄ちゃん」

「紅蓮お兄ちゃん、お帰り」

 俺が顔を見せると、子供達が群がってくる。ここは王都にある施設の一つであり、俺が育った場所でもある。

 俺の戻る場所はここしかない。だから、ここだけは何としても守らなければならない。

「ほら、お菓子だ。みんなで仲良く食べろよ」

 王都で買って来たお菓子袋を渡すと、子供達はお菓子を奪い合う。

「お菓子はたくさんあるから、そんな奪い合いしなくてもいいだろ」

 俺はその光景を苦笑いを浮かべながら、見つめる。微笑ましい光景を見るのも最後になるだろう。それでも構わない。この子達が幸せになるのだったら、それ以外のことは求めない。

「紅蓮、お帰りなさい」

 建物から女性が姿を現す。俺を我が子のように愛し、育ててくれた大切な人。

「………先生、お久しぶりです」

「ええ、二カ月ぶりです。突然姿を現すなんて、珍しいですね」

「明後日、西の方に行くことになりまして、しばらく会うことができなくなりそうなので、こいつらの顔を見ておこうと思いまして」

 恐らく、彼女達と顔を合わすのは今日が最後になると思うから。

「そうですか。それは寂しくなりますね」

「ええ。紅蓮兄ちゃんとしばらく遊べないのかよ」

 子供達は不満そうな声を出す。

「仕方ないじゃない。紅蓮お兄ちゃんはお仕事があるの」

「青い鳥のお姉ちゃんは良く遊びに来るのに」

「青い鳥お姉ちゃんと紅蓮お兄ちゃんは違うのよ」

「青い鳥の姉ちゃんからの話だと、黒犬は働かずに、悠々自適生活しているらしいぞ。紅蓮お兄ちゃんは仕事しなくちゃいけなくて、黒犬は仕事しなくてもいいのかよ」

 彼らは不満を垂らす。青い鳥は俺がいない間、ちょくちょく遊びに来ているらしい。それにしても、子供たちの間では黒犬の評判が良くない。傍から見れば、ニートと思われても仕方がないが、彼なりの事情があるから、そこは気にしてはいけないだろう。もっとも、彼が仕事に就けないのは青い鳥の所為もあるだろう。

「でも、黒犬のお菓子は美味しい。する仕事がないのなら、お菓子やさんになるといい」

「確かに、黒犬のお菓子は上手いけど。俺は紅蓮のお兄ちゃんと遊びたい。紅蓮のお兄ちゃんは魔法が上手だ」

「青い鳥の話だと、黒犬も凄腕の魔法使いだって言ってたよ」

「いいや。紅蓮お兄ちゃんの方が強いに決まってる。だって、黒犬は紅蓮兄ちゃんの後輩なんだろ?」

「城に入ってきた順を考えると、そうだな。だからって、俺が黒犬より強いわけでもない」

 あそこは上下関係を重んじているが、城に長くいるから、強いと言うわけではない。今はマシになってきたが、数か月前は宮廷魔法使いのほとんどが形だけの奴らだった。そのシステムをぶち壊したのが黒犬と青い鳥だ。一カ月に一度の入れ替え戦を導入した際の功績者は彼らだ。当の本人達はそのどさくさに紛れて、去って行ったが。

 まあ、その事実を知っているのは王と黒龍をはじめとする一部の人間だ。城に蔓延っていたシステム自体の存在もほとんどの奴らが気付かなかった。そう、彼ら以外は。

「明後日の準備があるから、俺はここで失礼します」

「そう。帰ってきたら、顔を見せて頂戴」

 みんな楽しみにしているから、と彼女は言う。

「………分かりました」

 俺はそう言うものの、それが叶わないことを知っている。

 だから、心の中で言う。今まで俺のことを愛してくれてありがとう。さよなら、彼女達が俺の分も幸せになって欲しい、と。


***

 あの日から三日後、俺達は王都の城の前にいる。王命令と言うことを伏せて、お袋達にはしばらくの間、西の方に行くと言っておいた。お袋はいつも通り、気にしていないし、弟達はいつも通り、お土産を催促していたし、親父はいつも通り、森に行ってしまった。ただ、スノウはお留守番せずに、今回は最初から同行するらしい。どう言う風の吹きまわしか知らないが、どうせ気まぐれだろう。

 紅蓮さんは城で見た黒フードを纏っておらず、私服と思われる格好だった。お見送りとして、黒龍さんとハク(角なしバージョン)、イヴ姫で、エイル三世陛下は大臣たちと会議の為にいない。

 汽車に乗って、西の街へ向かうわけだが、ハクはとにかくイヴ姫や黒龍さんは駅まで見送ると、人目について、大変なので、城でお見送りとなっている。

「黒犬、お土産買ってきてね」

 俺達が何しに行くのか分かっていないハクは弟達と同じことを言ってくる。

「ああ。俺がいない間、弟達を頼むな」

「分かった。エンとレンと一緒に遊んで、黒犬と青い鳥と紅蓮の帰り待ってる」

「そうですか。ハク達がいい子で待っていたら、たくさんのお土産を持ってきます」

「本当!?なら、ハク、いい子にしている」

「黒犬、青い鳥、そして、紅蓮、貴方方の帰りをお待ちしています」

 イヴ姫はそう言って、穏やかな笑みを浮かべる。

「ちゃんと元気に帰って来ます。イヴ姫にもちゃんとお土産買ってきます。楽しみにして下さい」

「それは楽しみ。でも、無理だけはしないで。私はお土産よりも、青い鳥達が無事に帰ってきてくれることの方が嬉しいから」

「分かっています」

「青い鳥、お前は無事に帰って来なくてもいいが、ちゃんと任務はやり遂げろ」

 黒龍さんにとっては青い鳥の安否よりそっちの方が重要ようなことだろう。だが、

「青い鳥、無事に帰って来れないの?ハク、悲しい」

「黒龍、青い鳥は私達の友達です。そんなことを言うのは許しません」

 ハクと姫の反撃が返ってくる。流石の黒龍さんもそれには言い返せずに、沈没。真のこの国の支配者は姫とハクかもしれない。

「では、行ってきます」

 青い鳥は満足そうに歩いて行く。黒龍さんが沈没しているところを見れたことがそんなに嬉しいことか?

「それでは、俺達、行ってきます」

 俺は青い鳥を追いかける。すると、紅蓮さんは姫達の方にお辞儀をして、俺達を追いかける。

 駅に向かおうと歩いていると、一番会いたくない相手に遭うことになってしまった。

「青い鳥に、黒犬、それに、紅蓮じゃないかい?三人揃っているなんて、珍しいね。何処へ行くつもりかい?」

 ライセンス取得の同期であり、青い鳥と同等か、それ以上の奇人変人である白髪変態と鉢合わせになってしまった。

「あんたこそ、仕事をしないで、こんなところにいるんだ?」

「そんなに決まっているじゃないか。今日は休みで、ただぶらぶら歩いているんだよ。まさか、こんなところで、君達に会えるとは思わなかったよ」

 運命の悪戯というものかもしれないね、と彼は言うが、俺としてはそんなもの無くていい。

「反乱軍と軍を仲直りさせる為に、西の方に行きます」

 貴方の分もお土産買ってきます、とこいつは言う。だから、お前は何しに行くつもりだ?

「反乱軍と仲直り?西の紛争のことかな?もしかして、国の要請かい?」

 流石、青い鳥と同等の洞察力と観察力を持っていることだけある。まあ、あそこまで言ってしまえば、誰でも分かってしまうかもしれないが。

「そうです」

 西の方は初めてなので、楽しみです、と青い鳥は言う。

「そうかい。そう言えば、紅蓮。睡眠薬は足りているかい?」

 西の方へ任務なら、一週間ほど滞在するんだろ?と、彼はそう言って、紅蓮さんの方を見る。

「……あ、ああ。まだ少し残っている」

「………そうかい。それなら、いいんだ。紅蓮、君……」

 彼は何か言おうとしていたが、途中で止め、

「いや、私は急用を思い出したから、行くよ。楽しい旅行になることを祈っているよ」

 そう言うと、いなくなった。

「紅蓮さん、睡眠薬を飲んでいるんですか?」

 彼にとっては不幸ばかり降り注いでいる所為で、不眠症にでもなってしまったのだろうか?

「………ああ。最近、特に眠れなくてな。彼に処方してもらったんだ」

「城の中は精神的にも、身体的にも疲れます。ハクから聞きました。最近、黒龍とよく鬼ごっこをしている、と」

 それなら、心労が絶えないのも分かります、と青い鳥は言う。宮廷騎士やっていても、ピンピンとして、翡翠の騎士と鬼ごっこをしていたお前が言えることか?心身疲れたのは追いかけていた翡翠の騎士だ。

 それにしても、黒龍さんと紅蓮さんと鬼ごっこか。あの二人が追いかけっこしているのは想像つかないな。

「ハク様の家庭教師を頼まれたんだが、何とも、性に合わなくてな。どうにか、かいくぐろうと思ったんだが、眠れる龍からは逃れることはできなかったようだ」

 その所為で、その度に捕まって、連れ戻される、と紅蓮さんは苦笑いを浮かべる。

「それは大変です。ですが、大丈夫です。黒龍と鬼ごっこする時は言ってください。私がお手伝いします」

 黒龍くらいなら、簡単に撒けます、と青い鳥は自信満々に言ってくる。天下の黒龍さんにそんなこと言えるとは流石である。こいつなら、本当でできてしまいそうで怖いところはあるが。


「西の方はちゃんと調べておきました」

 予定通り、汽車に乗ると、青い鳥はノートを開く。すると、食べ物と観光地しか書いていない。お前は西に何しに行くつもりだ?

「交渉が成功したら、西の街によって、ショッピングします」

「成功しなければ、どうするつもりだ?」

「その時は無理矢理成功させます」

「そうですか」

 こいつはいつもそうだ。俺はもう問うまい。

 一方、スノウは青い鳥が食べ物を眺めている間、俺の上で居眠りしている。睡眠欲もそうだが、食欲も旺盛じゃなかったか、お前。

「………黒犬、さっきから思っていたんだが、その奇妙な生物はどうしたんだ?」

 紅蓮さんはスノウを指して、そんなことを言ってくる。

「こいつ、ですか?」

 紅蓮さんなら、こいつの正体くらいばらしてもいいかもしれない。間接的にせよ。彼はこいつの件に関わっている。

「実は……」

「スノウは彼の家のペットです。そして、私達の村のマスコットキャラです。村では彼を使って、村興しを考案中です」

 青い鳥がそう言うと、スノウは目が覚めたようで、きゅるると鳴く。おいおい、お前。一応精霊だろ?ペットとか言われて、プライドとかないのか?

 確かに、こいつが村をお散歩していると、村の子供たちやじいちゃん、ばあちゃん達が餌を与えているが、村興しに使おうと考えている人達がいるとは思わなかった。

「と言うことで、スノウクッキーを作って下さい。後、黒犬クッキーを付ければ、付加価値がつくかもしれません。できれば、青い鳥クッキーもお願いします」

「発案者はお前か!!」

 スノウクッキーはとにかく、自分の似顔絵付きクッキーを自分の手で誰が作りたいか。

「私はあの村が大好きです。たくさんの人に、あの村の素晴らしさを知って欲しいです」

「俺もあそこは好きだが、ああ言うところは静かだからいいんだ」

「みんな、お祭りの時は騒いでいます」

「それはそれ。これはこれだ。スノウクッキー如きで、あの村に来るか」

 名物と言うのは観光客が来なければ、そんなものあっても意味がない。

「まず、王都でスノウクッキーを売ります」

「王都だったら、物好きが買うかもしれないな」

「私達の村にスノウがいることを知らせます」

「スノウからしてみれば、大迷惑だな」

 あいつは静かなところでお昼寝することが大好きだ。騒がしくなったら、おちおち昼寝もできないだろ。あいつが森へと逃げて行ったら、青い鳥案村興しは意味がなくなる。

「そして、それで集めたお金で村に施設を造ります」

「おいおい、話が飛躍しすぎだろ!!」

 村興しはどうした?

「村興しは他の人がしてくれます。私は村に施設を造ります。捨てられた子供たちを守ってあげられる場所を与えたいんです」

 あいつは施設に捨てられ、教会が施設から引き取ったんだったか。施設に預けられても、子供の扱いが酷いところも少なくない。それに、施設から引き取られても、青い鳥のようにコンビクトに連れて行かれたり、最悪の場合、裏組織に連れて行かれることだってある。

 青い鳥は自分と同じ境遇の子達には幸せになって欲しいのかもしれない。

「………村興しはとにかくそう言うことだったら、手伝ってやるよ」

 村の土地を買って、施設を建てるまで、長い道のりになりそうだが。

「ありがとうございます。施設が出来た時は、貴方には魔法やいろいろな勉強を教えます」

「分かっているよ。ちなみに、給料は?」

「勿論、子供たちのスマイルゼロ円です」

「………ですよね」

 まあ、こう言うボランティアなら、喜んでやってやる。

「流石に、彼だけでは教えきれないかもしれません」

 お前はどれだけたくさんの子供をかき集めるつもりだ?

「その時は貴方も手伝います」

 青い鳥は紅蓮さんを見る。

「………あ、ああ。それが完成したら、な」

 彼は歯切れ悪くそう言う。彼は子供が好きではないのだろうか?

「そうと決まれば、反乱軍さんと仲直りさせて、西でショッピングしたら、帰ってから、早速取り組みます」

 その時はエイル三世陛下にも支援してもらいましょう、とこいつは言う。国王も使うつもりか?彼がその施設をこの国にとって、必要か、考えるかは分からないが。

 他愛のない話をしていると、西の都に辿り着く。そこの駅員さんの話によると、ここら辺は風が強く、竜巻が起こりやすいそうである。その為、砂埃が舞いやすくなっているらしい。駅員さんの勧めにより、駅近くのショップにより、マントを購入する。

「反乱軍と接触する前に、軍に接触した方がいいだろう」

 確かに、反乱軍の居場所を知らないでは接触不可能である。だが、

「最初に、反乱軍に接触します。軍とはその次です」

 青い鳥が反論してくる。

「青い鳥、早く終わらせたいという気持ちは分かるが、俺達は反乱軍の居場所を知らないんだぞ?」

「なら、逆に問います。軍が反乱軍の居場所を知っていると言うなら、黒龍やエイル三世陛下が知らないのですか?」

 あの二人がそんなヘマするとは思えません、とこいつは言う。確かに、あの二人がそんなことをするとは思えないが。

「なら、どうやって、手かがりを掴むつもりだ?」

「手かがりを掴むために、貴方がいます。貴方は黒犬です。貴族や権力に屈しない魔法使い。もし彼らが貴方がここに来たと知れば、間違いなく、接触してきます。王や黒龍さんもそれを見越して、貴方を行かせたのだと思います。今、私達がすることは貴方がここに来たと言う噂を流せばいいだけです。まあ、それは簡単なことです」

 青い鳥はそう言って、とある場所を指す。すると、子供がゴロツキに絡まれている。

「正義の味方・黒犬の出番です」

 あいつはそう言って、走って行く。たかが、ゴロツキ相手に剣を抜く相手でもないか。あいつはゴロツキを次々倒していく。

 ゴロツキに絡まれていた子供はその混乱に紛れて、そこから逃げ出そうとする。ただ、逃げようとしているだけなら、見逃してもいい。だが、その子供の腕に持っているたくさんの札束を見ると、そのまま逃がすわけにもいかない。

 俺は魔法陣を展開して、木を出現させて、その子を取り押さえる。

「………ああ!!」

 その子から札束が空中を舞う。俺はその札束を拾い、その子を見る。

「これは彼らから盗んだものだな?」

 俺がそう言うと、

「……ち、違う。俺が稼いだものだ」

 その子は言い返してくる。

「子供をこれくらいくれるとは太っ腹な雇い主です。ですが、貴方ほどの年の子を雇うことは国の法律で禁止されています。貴方の雇い主とお話しなければなりません」

 こいつはそう言って、倒れているゴロツキを見て、

「まあ、それは貴方達に関しても同じです。どう考えても、このお金も正当な方法で手に入れたものではないと思われます。ですが、私は軍でもありません。今回は目をつぶりますから、この子がしたことは目を瞑ってもらえませんか?」

 そう言うと、ゴロツキ達は勿論、その子も目を見張る。

「………目を瞑るだ、と?そんなことをしたら、ボスに殺されるに決まっているだろうが!!」

 ゴロツキの一人がそう叫ぶが、

「交渉決裂とは困りました。それなら、貴方方とその子を軍に差し出さなければいけません。それは断腸の思いです。それとも、貴方方のボスに対して、子供を取り逃がしてしまった理由を欲しいということなら、黒犬さんに直々にお仕置きをしてもらいましょうか?」

 貴方にオーダーが入りました、とこいつは俺を見る。すると、ゴロツキやこの争いに集まってきた野次馬達が一斉に俺を見る。

「俺をエスっ子みたいに言うな。まあ、痛い目をみたいと言う御希望なら、やらなくもないが」

「………と言うことです。お好きな方を選んでください。お金が手に戻り、帰るか、軍の牢屋に入るか、黒犬さんによる拷問を受けるか。黒犬さんの魔法なんて、滅多に受けられるものではないので、記念に受けるのもいいかもしれませんが」

「………っち。野郎共、退くぞ」

 ゴロツキの一人は苦々しそうに青い鳥を見て、俺から札束を受けとって、いなくなる。

「これで、反乱軍さんにも話が行くのも時間の問題です」

 やはり、わざと大事にしたな。まあ、どう言った経由を辿るか知らないが、俺のことを反乱軍が知り、接触してくるのを待つだけか。

「それに、軍に頼るのを止しておいて正解だったかもしれません。こんなに大事にしましたのに、軍はやって来ません」

 あいつはそんなことを言ってくる。確かに、ここまで大事にしたのだから、軍が飛んできてもおかしくない。もしかしたら、問題があるのは反乱軍ではなくて、軍の方かもしれない。

「それは後々分かることだろ。それより、この子、どうするんだ?」

 俺は木に縛り付けた子供を見る。

「放せ、放せよ」

と、ばたばた暴れている。

「解いて欲しいのですか」

 青い鳥はそう言って、魔法陣を触る。すると、その子を縛っていた蔓や木が消える。あいつの手は魔法陣が発する波動を変えてしまう。だが、あいつの放つ波動は特殊なもので、ほとんどの魔法陣は現存する魔法陣ではないので、効果が無くなる。中には例外も存在するが。

 一方、その子供は急に自由になったので、尻もちをつき、きょとんとしている。

「貴方の名前は何て言いますか?」

 青い鳥は屈んで、その子を見る。

「………リオだけど」

「リオですか。いい名前です。私は青い鳥と言います。黒髪の彼は黒犬で、赤髪の彼は紅蓮です。以後、お見知り置きを。知っておいて、損はないと思います。ところで、リオ。貴方にはお父様やお母様はいないのですか?」

 青い鳥がそう言うと、リオと名乗る少年の表情が強張る。

「そんなものいるわけないだろ!!」

「それは済まないことを聞きました。では、家族はいないのですか?一緒にいる仲間とかいませんか?」

「何で、見知らぬ女にそんなことを言わなくてはいけないんだよ」

「見知らぬ女とは酷いことを言います。私は名乗りました。私は青い鳥と言います、と。それなのに、見知らぬ女呼ばわりするのは失礼です。やはり、お仕置きをする必要があるみたいです」

「………お仕置きなんかされたって、俺は喋らないかんな」

 この少年は意地っ張りのようで、そんなことを言う。そう言われて、はい、そうですか、と退く青い鳥さんではない。

「分かりました。それなら、お仕置きをします。貴方は両手、紅蓮さんは両足を持って下さい」

 青い鳥は俺と紅蓮さんを見て、そう言う。俺と紅蓮さんは青い鳥が何しようとしているのか分からず、顔を見合わせる。

「早く持っていて下さい。逃げないように持っていて下さい」

 青い鳥がそう急かすので、俺はリオの両手を、紅蓮さんは両足を持つ。

「な、何をするつもりだよ!!」

「では、今から刑を執行します。くすぐりの刑です」

 青い鳥はそう言って、リオの身体をくすぐっていく。

「うはははは、あははは」

 リオは大声で笑う。青い鳥はくすぐる。

「強情です。これならどうですか?」

 青い鳥は靴を脱がして、足の裏をくすぐる。

「うははははは。言うから、もう止めろ」

「年上に対しての言葉がなっていません。もう止めてください、です」

「………もう、止めて、下さい」

「よろしいです。もう放して結構です」

 青い鳥は満足そうな様子を浮かべる。一方、リオははあはあと息を整えようとしている。子供相手に、何とも大人げないことをする。

「では、貴方の家族の元に案内してもらいましょうか?」

 青い鳥はそう言う。すると、リオはこいつから逃げることができないことを悟ったようで、

「分かったよ。でも、姉ちゃん達、俺が案内したら、あいつらを捕まえるなんてこと、しないよな?」

 上目づかいで尋ねてくる。

「安心して下さい。私達は軍の人間ではありません。貴方達を捕まえたくても、その権利はありません」

 こいつの言葉に安心したようで、

「それなら、いいよ。俺の家に案内する」

 こっち、と彼はそう言って、歩き始めるので、俺達は彼の後を追った。

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