9話 いざゆかん
ディアバルが魔力枯渇状態なので、君が戦うんだよ…フッと言われた優花です。
此方の世界では漢字がないのでユウカでいいかなと思い始めております。
そもそも、私は魔物なんぞ殺したことないし。あるのは赤虫ぐらい!
しかも私に頼むとなるとディアバルの命も私に掛かってるってことになるのに、なんだあの余裕!
まるで他人事!めちゃくちゃムカつくんですけど!?
しかも、今くさっぱらに腰かけて小鳥とお話とかしてんだけど!
「ねえ、ディアバル。あんたもこっちも命掛かってんだよ?わかってんの!?」
私はディアバルの肩にグッと力を込めて耳元で怒鳴る。
「わかってるようるさいな」
私たちの喧嘩が怖かったのか小鳥はどこかへ飛んで行って、ディアバルは私を鋭い眼光で睨んだ。
だが私は、小鳥が飛んでったぐらいでなんなのさ!という心境だ。こっちは命が掛かっているのだ。私はなぜ、ディアバルがそんなに余裕なのかわからない。
「Eランクのレッドドッグだ。先頭のボスは+Eランク。
集団行動をしていて、約20匹ほどだよ。ただの犬っころさ」
見えもしないのにそう言ったディアバルは、感知タイプのスキルでももっているのだろうか。便利なこった。
「約20匹なんてそんな…無理だよ!」
ディアバルは新しく捕まえてきたのであろう、赤い瞳と漆黒の翼を持ったダークバーディーを撫でてお話していた。おい。
「集団行動の魔物には、広範囲の魔力放出が必要だ。両手を突き出して魔力の全てを解き放て。僕の教えられることはここまでだ。後は自分で見つけて自分で魔力放出を起こすんだ。成長速度は幼児並なんだから」
ディアバルは、こちらを見もせずにそんなことを言った。
おいおいおいおい話が違うよ!?
「僕の教えられることはここまで?は?理解ができまセーン。それに成長速度は幼児並?それは、幼児のようにのっそりとしか成長できないという意味ですカー?」
と、口げんかしているうちに赤犬集団が土埃を起こしながらこっちに向かって走ってまいりました。それはさながら単身赴任していたパパ(赤犬)が娘(私)に抱き着こうとダッシュしているよう!
あれ?赤犬集団が全然犬っころレベルじゃないくらいデカいんですけど?話が違うよディアバル!?
だけど、覚悟決めなきゃ抱き着かれる(殺される)から覚悟決めた。
もう、やるっきゃない。ママ(ディアバル)なんてもう知らない!
動物を殺すのは抵抗がある。当たり前だよ、日本では違法だったんだから。でも、殺さなきゃいけないんだ。じゃないと殺されるから。
私は、さっきのディアバルに言われたことを頭の中でリピートして、赤犬集団が来るであろうところに立った。
赤犬のボスは、血の匂いの先に人間がいたとわかり、赤犬集団に低くボスの威厳が感じられる雄叫びを上げた。
「ワォオオオオン!!!」
「「「ワォオオオオオオオン!!!!!!」」」
大地が震える赤犬集団の雄叫びに思わず足がすくむが、私の取柄はタフな精神力なのだからここでへそを曲げてしまうなど、殺された意味がない。
雄叫びで赤犬集団が士気を高め、先程より速度を速めてこちらに向かってくる。
不安や焦り、恐怖という感情で、今すぐ逃げ出したい気分なのだがそういうわけにもいかんのだよ。
手汗がべとべとして感触が気持ち悪い。膝もガクガクと震え、まるで生まれたての小鹿状態だ。
不意に後ろから、どこか安心する低く落ち着いた声が聞こえた。
「大丈夫。君ならできる。」
後ろを振り向くと、いつもの余裕顔で笑ったディアバルがいて、私の頭を撫でてくれた。
ディアバルは、私のことがどうでもよかったんじゃない。信頼していたんだ。
私は、頷くと赤犬集団のところに向き直った。
ディアバルは、最後にぽんぽんと私の頭を撫でてダークバーディ―のところへ戻った。ダークバーディーは、余程ディアバルに懐いたようで顔を擦りつけていた。
ゆっくりと両手を、赤犬集団の方へ向ける。その動作に警戒する赤犬集団だが、私の足の震えで自分たちに怯えているということが分かり、フンッと鼻息を荒くして速度を上げた。
赤犬集団との距離、約100m……80………50…………
魔力を血液とは違う一つの液体だと自分の中で思い、その流れを右手の平と左手の平に変える。すると、右手の平と左手の平の中心部分に青と黒が混ざり合わさった禍々しい輝きが生み出された。
赤犬集団のボスが自身の最高速度で、浮くように疾走して私の右太ももに迫り齧り付いた。
鋭く尖った犬歯は私の肌をいとも簡単に切り裂き、骨を砕いた。
経験したこともない痛みと肌の焼けるような暑さに顔を顰める。噛んだ下唇は、桜色が青紫色へと変わり血が滲み出た。
自分の魔力を全て出し切り、収束――――――――――――
解き放つ!!!!
「ッいっけぇぇえええええええ!!!!!」
魔力は、大きな大きな輝きとなり、赤犬集団に降りかかった。
魔力放出も攻撃になっているが、それ以上にダメージになっているのは呪いだ。死神が調合した地獄の呪いは、身体を溶かし、精神を喰らう。
赤犬集団が、口から血を吐きながら倒れた。
膝から崩れ落ちそうになるが、まだ駄目だ。
ボスは、自分の仲間が全て殺されたことに怒り狂い、レッドドックの固有スキル:死の刃とスキル:身体強化を最大限に引き出して、再度私に齧り付こうとしたが、前世体育が結構好きだった方の私に二度同じことをしても駄目だ。
最初から鋭く尖っていた犬歯が、大きくなりナイフのようになった。身体も身体強化のせいで全長2mの化け物と化した。
ボスは、傷口を抉ろうとしているのか再度太ももに齧り付こうと大きな口を開けた。
そこに魔力放出をしようと流れを変えた。
すると、魔力の量が急に増えたような気がして、収束して放出すると一本の矢のように鋭く尖った魔力がボスの喉を貫いて串刺しにした。
その魔力はさっきのように消えず、ずっと矢のような形をしたままだった。
そこから、ボスの身体を蝕み精神を腐らせたのであった。
「も…げんか………」
後ろに倒れそうになって、小さくディアバルの声が聞こえ、ダークバーディーが腰を支えてくれた。
ダークバーディーが私を気遣う言葉を掛けたような気がするんだけど…幻聴かな?
一回この話全部消しちゃって、イライラしながら再度9話をポチポチ。
最初らへんはほぼ覚えて無くて、「チクショー!」と言いながら春休み中に15話まで行きたいという願望を達成するため頑張りました。
消した方のやつではユウカちゃんがディアバル先輩に激おこだったんですが、打ち直した方では控えめユウカちゃん。ユウカって名前も今度変えようと思ってます。