7話 異世界へ
色々あった訳だが、聞きたいことは全て聞いたのでもういいと思う。
こちらとしては、今日の晩御飯は何?と聞いて長々と説明をされ、肝心の料理が全く出てこない…そんな気分だ。
「よし、準備も整ったし。僕達はもう行くよ。じゃあ。」
ディアバルは、セバスさんにむかって手をひらひらと振り、禍々しいゲートを召喚した。
ん?準備?僕達?
疑問に思うことは沢山あったが、ディアバルに抱えられ強制的にゲートをくぐらされている私は何も言えずに、ただただ真っ暗な道を神速で走る靄が晴れたディアバルの凛々しくイケメンの類に入るであろう横顔をまじまじと眺めるのであった。
―――――――意識は次第に朦朧とし、いつの間にか手放してしまったのであった
暖かい風が私の頬を撫でる。
草がベットのようにふかっとしているが、土がひんやりと冷たい。
小鳥の歌声が耳を癒し、また意識を奪っていく。
「起きないと悪戯しちゃうぞー」
棒読みで聞こえる低音ボイス。台詞は警戒しないといけないのだが、余りにもその声から滲み出るやる気のなさが全く警戒心を引き出さず、台詞の効果が発揮されない。
「こんな悪い子には、こうだ」
細くて長い、繊細な指が私の脇の下へと潜り込み不規則に動いめいた。
「………ぅあ、あはっ!っうは!ちょっ、ギブ!ギブギ…あはは!ご、ごめ!ごめんごめん!」
途端に指は静止し、私は目をうっすらと開ける。
「こちょこちょは無しだって…」
はぁ…とため息をつく私には意を介さず、自分の手のひらを空で胴体よりも大きいのではなかろうかと思える翼で羽ばたいている黒い鳥に向けているディアバル。
……ディアバル!?
「ちょいとディアバルさん?何故貴方がここに?」
私は、隣で訝しげに眉を潜めながら、撃ち落とした黒い鳥と手のひらを交互に見つめるディアバルを見た。
どうやって殺ったんだよ!
「面白そうと思ってついて来たんだけど、ここに来て事件発生だよ」
はぁ…とため息をつくディアバルが、私と比べ物にならないくらい様になっててすげぇムカついたのは秘密だ。
「どうしたん?」
私は、心の中でざまぁと嘲笑いながら、ディアバルに問うた。
「命力と魔力、此方の世界で言えばHPとMPが減っていっているんだ。恐らく、此方に移動した反動で減っているんだろうね。いつかは止まるだろうけど、此方の世界では回復が遅いんだよね。
例えば、此方の世界の魔術師が魔界で魔力を100減らしたとしよう。そうすると、此方の世界では10分足らずで回復したはずなのに、魔界では1日以上掛かるという絶望的な現象。
今、僕もそんな感じで、僕の場合は今もゆっくりと減っていっているから回復するには、全部なくなったとしたら2年はかかるだろうね。僕は回復が早いから2年で済むけど、常人でこの魔力量を持っていたら10年、いやもっとかかるかもしれないね…」
私が、明らかに落ち込んだ表情のディアバルの肩にポンと手をおこうとした時、エコーがかかった声が頭に響いた。
これが、世界の声か!
《 “死神の加護”“死神の初子”の称号を獲得しました。詳細はこのようになっております。
死神の加護…獲得命力・魔力に4倍補正。
邪悪の結界により、精神系魔法阻止。精神領域の膨張及び強化。外道魔法の獲得。禁断魔法の獲得。魔界への回路を繋ぎ、【魔界総門】への自動転移。
死神の初子…魔界の全領域移動可能。魔界での支配者権限が与えられ、魔界全域の支配可能。受け継ぎの苗が植えられる。
以上です。》
私が、ディアバルによる収穫祭にて手に入れたのであろう、ユニークスキル《パソコン》が私の理解の範疇を超えた全てを解説してくださいました。
結果…
―――――――私、魔界でチート野郎でした。本当にありがとうございました。
立ち寄った本屋さんで、このサイトからのラノベを見つけて、立ち読みしてしまいました。ごめんなさい、買いますからそんなに睨まないでください、店員さん。