6話 説明はまだ続く
悲しい事に、こちらの世界についてまだなに一つわかっていない優花ちゃんです。
「気を取り直して、世界の声とは自分のスキルの獲得や進化の確認など自身の身におこった事を声で知らせてくれます。システム的には、変化をいち早く感じ取り知らせているだけですが、その可憐な声は神の声、神声として崇められているようです。」
ふむふむ、なぁるほど。
要するに、便利なナレーション係と言う事だな、理解した!
あ、でもちょっと待てよ?
「称号ていうのも、それは知らせてくれるんじゃないの?」
「ええ、もちろん。お嬢様に、世界の声は聞こえなかったのだとすると、お嬢様が異界にもこちらの世界にも存在していないからでしょう。」
まだ聞いてもいないのに、セバスさんは私の疑問に気づいた。
そこまでの理解力が無いと、ディアバルの相手はできないのだろうか。怖いな。
「では、称号システムについて説明いたしましょう。称号システムとは、ノヴァディア様がご自分の命に変えて生み出したシステムであります。条件が合うと自動で個人に与えられる、称号。適正があると、“剣士““魔術師““格闘家““賢者““聖者““勇者“という称号も与えられ、ほぼの人間がその称号に恥ぬ働きをします。主様のお父様は、ご自身が称号システムになられた時“神“の称号を消去いたしました。故に、もう“神“の称号を持つものは、今も未来も、一生現れません。」
ゆ、勇者…絶対、要らん。
勇者といえば、召喚とかされて異世界転成ってあるよね…
ま、それは行って調べればわかる事か。
「じゃあ、私が貰う予定の二つも条件が揃ったって事か。でも、加護ってそんな勝手に貰えるもんなんだ」
てか、ディアバル空気…鼻、ほじり過ぎだろ…
「では、次に異界の門についてですが、これは、主様がお嬢様を召喚した門です。異界から人間や物を召喚することができますが、馬鹿みたいに魔力が吸い取られます。だから、下手に近づくと私なんかはすぐに魔力切れで死にます。」
異界に繋がっているが、そこに近づくと死ぬ…って危険過ぎ!
「うん、やばいところってことはわかった」
「そういう解釈でいいと思います。では、次に死神の魔力についてですが…それは、本人から聞いた方が良いかと」
そう言って、セバスさんは未だ鼻をほじっているディアバルに目線を送る。
「え?あぁ、ディアバル君の魔力について、ねぇ…。魔力を出すだけで、なんと呪い系の魔法が付与される不思議な魔力だよ!」
きゃぴっという効果音がつきそうなウィンクをして、黒い光を帯びた手をセバスさんに向けて放つディアバル。
「あ、馬鹿!」
そう言って、私はセバスさんの前に滑り込んだ。
目をつぶり、死を待つがその時は来ない。
ゆっくり目を開くと、ディアバルが咳き込んでいた。
「え、わ、えぇ!?」
隣で今の現象を見ていたセバスさんは、目を見開いていた。
「素晴らしいですね、お嬢様。主様、最強の魔力に対する完璧なレジスト。それに加え、呪いの魔力を繰り出すなんて…。主様も、余裕ぶっこいてはいましたが、無意識でこれまで出来るとは」
そう言い、尊敬の目で見てくるセバスさんに私はどうすればいいのかわからない。
私、なんもしてねぇ…
「ゴホッ!ゴホッ!…凄いよ、僕も特別な人間だとは思ってたけどこれほどまでとは」
そう言って、口角をあげるディアバル。
…え、えぇ?