3話 苦労人の紳士様
「そういえば、名前は?」
これだけ、話していたのに名前を聞く機会がなかったので聞いていなかったが、気になっていたことの一つであった。
「ディアバルって言うんだけど、この名前を知っている人は殆ど居ないよ。皆僕の事は死神って言うんだ」
にっこりと笑っていたが、その笑顔の端っこには小さな悲しみが翳っていて、少し驚いた。
「じゃあ、私くらいはずっと覚えてなきゃ!そうしないといずれ君も、いやディアバルも忘れるから」
ふふっ、と笑って見せるとディアバルは目を見開いて笑った。
「なんか、気持ち悪いね」
「んだとぉ!?」
少し同情した私が馬鹿だった!
その時、ディアバルに黒い稲妻が凄い轟音をたてながら落ちた。
だが、そこにはもうディアバルの姿は無く、ただただ黒い焼け跡が残っていた。
凄い、全然見えなかった…
そして次の瞬間、目の前にディアバルが現れ私の体を抱き上げた。
彼は細身でありながら筋肉がついており、これが噂の細マッチョかと、ディアバルの身など全く心配せずほかのことを考えていた。
「チッ…もうばれたか」
とその時、ディアバルが出てきたゲートと同じものが視界の端に映り、奥から白い髪と髭を生やした執事服の叔父様がコツコツと靴を鳴らしながら近づいてきた。その姿は、まさに紳士そのもの。思わず、見惚れてしまった。
ディアバルは、予備動作一つ無くゲートの前に行き、そこで待ち構えていたかのように現れた叔父様に腕を捕まえられた。
「はぁ…今度は何かと思っていたら、異界の少女を連れ去ったのを発見した時、このセバス、息が止まるかと思いましたぞ!しかも、精神領域で匿っていたなんて、お姉様が見られたらどう御思いになられましょうか!全く、我が主は何故こんなに不真面目なのでしょうか…。ささ!また天界から憎しみの篭った魂がどっさり届きましたぞ!仕事に戻りましょう、主!あと、少女も無事に異界に返すのですぞ!親御様も御心配になっていることでしょう!…うちの主が、大変ご迷惑をお掛けしたようで、申し訳ございませぬ。異界には、直ちに送り届けます故、暫しの辛抱をさせることを御許しくだされ。主も、謝りましょう?仕事疲れもありましょうが、異界に手を出すのはなりませぬ!安全に送り届けられる確実が下がり、最悪殺してしまう恐れも考えられるのですぞ。…あぁ!申し訳ありません物騒なことを!どう謝罪の意を表せば良いのやら!」
凄い。マシンガントークだ…
隣のディアバルも、呆れた表情。
「セバス、この子はもう異界には帰らないよ。僕が、殺しちゃったんだ。」
セバスは暫くポカンとした表情をした後、みるみる顔を青くさせ、失神してしまったのであった。
忙しかった、バレンタイン。
男共ォォ!!受け取れぇ!!!と、女子が教室無双していた。あれはまさに地獄絵図だ…