2話 一回死んで来い
……開眼!!
なんて、馬鹿なことを考えながら目を開く。
そこは、ただただ白いだけの空間だった。
上下左右、白いだけ。そんなのが果てし無く続いていた。
そんな所に突如、ゲートが現れた。禍々しいオーラを発しているそのゲートは、警戒しない方がおかしいが、なぜか私は落ち着いていた。
そして、そのゲートから出てくる彼はにっこりと笑って私に話しかけた。
「こんにちは、ユウカ・サカグチ。……いや、もう君は死んでしまったから名前は無いということになるのかな?わからないや」
笑っているはずなのに、何故か恐れ慄いてしまう、そんな不思議な人だったが、私はそれすらも感じなかった。
「……驚いた。確かに、君の魂は強くて他人には手出しできないような頑丈な魂だったけど、ここまでとはね」
目を細め、口に弧を描かせる彼は、何故か靄がかかったようにはっきりとその容姿を見ることができなかった。
「私は、何故死んだ」
もう確信していた。
だが、認めたくなかった事実。
「僕が殺したからさ」
なんでもないように応えた彼に、静かな怒りがふつふつと湧いてくる。
「一回死んで来い」
もう、それしか言えねぇなって感じだよ。
「あぁ、そんな怒らないでよ。また生きられるんだから、ね?」
「は?」
また、生きられる?この男は何を言っているんだ?お前が殺したのに、お前が生かすなんて矛盾している。ねぇそうでしょ?
彼は、私の怒りとも言えるこの疑問をわかったかのように応えた。
「君には僕達の世界で僕の思うように動いて欲しいんだ。無理にとは言わない。まあ、君の魂に命が宿ることはなくなるけどね」
「僕達の、世界…?」
僕達の世界とはどういうこと?地球とは違う世界があるということ?
「恐らく、君たちの言うところの『異世界』だろうね」
『異世界』、それは二次元好きなら一度は聞いたことのある、架空の世界。それが、実在するとでも?
いや、確かにこの状況は昔見たラノベに似ているような、似ていないような……
まあいい。そうと決まれば、答えは決まっている。
「……わかった。お前の思うように、というところが少し癪に障るがいこうじゃない。でも、異世界がどういうところなのかわからないんだけど、教えてくれる?」
日常茶飯事に命を狙われる、危険都市とかだったらたまったもんじゃないからね!
「そうだね……魔物が居たり妖精が居たり、魔王が居たり勇者が居たり。そんな、剣と魔法の世界、かな?」
そう言って、死神はにたりと笑う。
お、おぉ!!凄いんだと思うけど、大雑把過ぎてよく分からん!
「まあ、それは君がこの目で確かめればいいさ。行こう、君の第二の人生の舞台へ」
あ、なんか最後の最後に格好つけたなこいつ。
そう呆れながらも、ここから始まる物語に心を弾ませた……
のだが、新たなる刺客に足止めを喰らうこととなったのであった。