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魔女の愛弟子  作者: 井川林檎
第八部 ラプンツェル
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引き継がれた もの

オパールの元へ急ぐ旅路。

命のうねりを感じながら、先へ進む。風景の向こう側には、オパールの異空間が待っており、ペルはそこに吸い込まれるのであった。

第八部 ラプンツェル

その1 引き継がれた もの


 人の目には見えない扉をかいくぐり、それ以来、わたしはこの世ではない場所に足を踏み入れた。

 この山は、遠くから見えていたような、雪深く荒々しい場所ではない。逆に、ここはひどく温かで、湿気があり、見たことのない程鮮やかな蝶や鳥、爬虫類がそこらじゅうに生息する森の中だった。

 何らかの生き物が常に音を立てており、時折すぐ間近で獰猛な生物が歩いているのを見ることもあった。

 

 ところが、ここで生きている生き物たちは、どれもこれもがわたしを気にしないのであった。

 飢えていないというわけではない。獰猛な肉食獣は確かに食欲旺盛であり、何度かわたしは、森の木々の影を利用して、彼らが哀れな獲物を捕らえるのを見かけた。

 草食動物たちは常に警戒し、ぴりぴりとしたものを放ちながら草を食んでいる。

 にも関らず、どの獣、虫、鳥も、わたしが歩いて前を通ろうと、なんら反応を示さないのであった。


 (見えていないのだろうか)


 否、そうではなかった。一度ならず、わたしは木の上の猿や、倒れた木の幹の上で後足でたつ、栗鼠のようなものが、きらきらとした目でわたしの姿を追うのを感じた。

 振り向いて見つめ返しても、瞬きが返ってくるだけで、やはり反応がない。

 

 不思議なことはもう一つあった。

 この密林は、人が通るような場所ではない。当然、道などあるはずはないのだ。

 わたしの目の前には鬱蒼と茂る、おかしな樹木が密生しているのだが――わたしが一歩足を踏み出すと、まるで意思を持っているかのように、するりと場所を明け、そこには細い道ができるのだった。

 通り抜けた後を振り向くと、何事もなかったかのように、また木々は密生し、道は消滅している。


 (招き入れられている……)

 わたしは、じっとりとぬかるむ黒い地面を踏みしめ、一歩ずつ進んでいく。

 道は、違いようがなかった。正しい方向に足を踏み入れた時に道が開くのである。わたしはただ、歩けばよいだけなのだった。


 当然ここは魔法の力に漲った場所であるはずだが、不思議に心が安らいだ。

 魔法独特の不安定感はなく、根がどっしりと張った、ゆるぎないものがそこにはあるのだ。

 雑多な思念などは一切なく、ひたすら生きる命が、純粋な光を放っている。ここの空気は様々なものを含んでおり、魔法の目で見ると、空気の中には無数の色の粒子がひしめいて舞っているのだ。

 それが何であるのか、わたしにはすぐに分かるのだ。

 (人間の、残渣……)


 生命を全うした人間たちの残渣が、この森に行きついて漂っている。

 この残渣たちは、綺麗に雑念をついばまれており、ただ無意識にそこいらを漂うだけのものとなっている。

 人間の残渣には様々な欲望がこびりついており、ここまでひしめき合っていたらうるさくてたまらないはずなのだが、この森の植物たちは、空気と一緒に、どうやらその部分を吸い取るのである。そして、己の体内で消化した後は、なまぬるい、心地よい酸素として宙に排出するのであった。


 奇怪な鳥の鳴き声が湿った空気の中に響き渡る。

 今まで味わったことのないほど強い太陽の日差しが木漏れ日となり、森はいよいよ影を濃くする。

 それでいて、暑苦しいということはなかった。

 清涼感のある風が時折ふいて、溜まった空気を掻きまわす。

 実に調和のとれた場所――まさに楽園なのだった。


 濃い緑の影の中で、極彩色の鳥や蝶、枝をつたう蛇などが生を営む。その中を歩く、黒一色のわたしは、まるで影法師のようだろう。


 それが可笑しくて、わたしは声を潜めて笑った。

 気づいていたのである。

 (この森は、死者でできている)

 ここで蠢いている全てのものたちは、すでに一度死んだ命なのである。

 人間の残渣が宙を漂い、そして、別の姿で再生する森――。


 死の森であろう、ここは。

 死者のほうが鮮やかで生き生きとしており、未だ生きているわたしのほうが影にように見えるというのは、おかしなものだった。


 鳴き声や動く気配に満ちた森の中を、一歩また一歩と進んでいくうちに、急に開けた場所に出る。

 緑の空洞のように樹木の枝が飴のようにねじれ、いびつなアーチを作っており、その向こうには新緑の広場が見えた。

 艶のある、幅広い大きな葉で日差しを浴びる不思議な樹木がその周囲に生い茂っており、そこは綺麗な円形の空き地となっている。草花は茂っているが、ほどよい高さで止まっており、ちょうど芝生のようだ。

 

 密林の中に、こんな広場があるのは突拍子がないものだ。

 広場の入り口に立ち、わたしはそこに強烈な魔法の力を感じた。

 同時に、円形の空き地の中央へゆっくりと歩を進める、ゴルデンの残像が映ったのである。


 (ゴルデン――)


 彼もまた、ここまで導かれてきた。

 わたしは息を飲んで、鮮明な残像を見つめる。

 落ち着いた足取りで、彼は歩いてゆく。彼は知っているのだ、この広場がなんであるのかを。


 ゴルデンの幻は、広場の中央に立ったところで消滅した。

 無数の色の粒子が、羽虫のようにちらちらと舞い踊っている。

 オパールの気配だ――。

 ゴルデンは、オパールの元へ行った。もしかしたら、すでにもう、「母」の前で、師と魔法を交わしているかもしれない。

 ぐずぐずしている時間は、ない。


 わたしはしゃにむに駆け出すと、円形の広場を横切った。

 円の中心を目指すわたしに、耳元を走り抜ける風が歌うようにささやいてくる。

 「おいで……はやく、おいで……」


 ちらちらと無数の色の粒子が飛び交っている。

 人間の残渣とは違う、オパールの魔女の不可思議なきらめきが。

 わたしは粒子の中に飛び込んだ。

 とたんに、激しい色彩の渦の中に取り込まれ、上も下も分からない状態になる。

 「おい……で……」

 しかし、呼ぶ声はますますはっきりと聞こえるのだ。

 

 (オパールの異空間に通じているのか)

 色の粒子の渦に取り込まれるのを感じる。わたしの黒曜石の黒が分離され、粉々になり、色となり、空気中に散らばり――完全に分解されてゆくのを、恐怖感もなくわたしは感じていた。

 かつてゴルデンは、オパールの扉を開くことを固く禁じていたものである。

 わたしには荷が重い扉だ、と彼は言った。


 (だが、行かねばならない……)


 今、わたしの黒曜石は完全に消え去り、色の粒子の中に溶け込んだ。

 無となったわたしは乳白色の空気の中を色の粒子の中にまぎれて浮遊しており、やがてゆっくりと下降を始める。

 からだが地についた瞬間、わたしはぎょっとして下腹部に手を当てた。

 

 世界の元に預けてきた、わたしの胎児。

 (わたしは、死ぬわけにはいかない――)

 かつて、これほど動揺したことはなかったと思う。わたしは自分の体を探り、己がすでにこの世のものでなくなった確かな証拠を捉えようとした。

 死んでしまったら――わたしが死んでしまったら、あの子は生まれないまま、ひっそりと命を閉じることになるだろう。

 (死ぬわけには――)


 「あなたは再生した。愛弟子よ」


 柔らかな声が落ちて来た。

 はっと見ると、目の前にオパールの魔女が立っている。

 不思議なオレンジの瞳に色の粒子をちらつかせ、穏やかにこちらを見ている。

 オパールの空間の中で、わたしは座り込んでいた。

 

 「再生されたのです。死んではいない。だから、『世界』の後継者は命を繋いでいる」

 心配いらない、とオパールは言い、艶のある唇を微笑ませるのだった。


 わたしは己の中心を見つめ、そこには変わらずに、黒曜石があるのを知った。

 オパールの空間を見回し、わたしは理解する。

 ここは――この色の粒子の世界は――そういう場所なのだ。

 一度分解され、そして再生されるのである。

 ここに入るためには、死の儀式を通過する必要があったということだろう。


 (『母』は、死……)


 「今の愛弟子だからこそ、再生することが叶った……」

 白い腕を差し出し、わたしに立ち上がるよう促しながら、オパールは言う。わたしが立ち上がった。

 衣擦れの音が近づき、オパールはわたしのすぐ前に来た。わたしの鼻先に、豊満で白い胸がある――。

 (ムスクの、香りだ……)


 かつて、この魔女の姿を見、この香りをかいだ時、わたしは嫉妬を感じ、ワンズをかざした。

 この白い胸の中に師は抱かれ、愛撫を受けていた。

 ……。


 目を閉じる。改めて己の中を確認するが、今のわたしには、嫉妬は見当たらなかった。

 (これは、なんだろう)

 穏やかに漂う思いがある。嫉妬とは対極のものだ。ひどく無機質でありながら、自分がその感情を抱いているという事実が、わたしを温めるのである。


 (感謝、か――)


 オパールの瞳に溢れているものは、慈愛だ。

 慈愛のまなざしでわたしを見つめ、ゆっくりとオパールはわたしの頭を抱いた。柔らかな胸の中で、わたしは目を開き、そしてまた閉じた。あまりにも穏やかであり、温かで、全てを忘れてしまいそうである。

 この感覚を、かつてわたしはどこかで覚えたものだ。

 どこだったか――。


 「師は、存命か」

 胸の間に顔をうずめながら、わたしは言った。

 オパールは静かに答えた。

 「生きているわ」

 わたしは、頷いた。閉じた目に、じわりと温かなものが宿り、零れ落ちて頬を伝う。


 わたしには見えていた。

 師に迫りくる時を待つ苦痛をなるべく与えないよう、この上なく温かく、魅惑的で、居心地のよい、極上の愛を注ぎ続けてきた「母」の姿が。

 大魔女としての命を全うしようとしている師の手を取り、赤い髪をなで、次第に眠る時間が多くなるまぶたに口づけを落とし――「母」は、今まで待ち続けてきたのである。師が待ち続けてきたものが、ここまでたどり着くことを。


 (ごめんなさい……)


 零れ続ける涙をそのままにして、わたしは低く言った。

 「感謝している。師を包んでくれて、感謝している……」


 (師よ、ずいぶん長い間、あなたは待っていた……)


 オパールの指が、わたしの髪をなでた。

 ほんの少しの間、わたしはそのまま、この温かな場所を独占していた。

 

 (なるほど……)

 わたしはゆっくりと目を見開き、その柔らかな胸から顔を離した。

 オパールの魔女のまなざしが、すぐ上から覗き込んでいる。

 

 (母、か)


 ……。


 わたしにある母親の記憶は、どれも殺伐としたものである。

 温かな胸に抱きしめられ、髪をなでられた記憶は、ない。

 白雪ならば、しょっちゅうそういった愛撫を受けていたし、わたしはそれを見るだけだった。

 だが――もしかすると、非常に幼い頃――物心がつかないほど幼い頃――わたしは、母に抱かれたことがあったのかもしれなかった。

 豊満な胸に抱かれ、髪をなでられ、慈愛に満ちたまなざしを独占した時間が、僅かでもあったのだろう。


 だから、オパールの胸が心地よいと感じた。

 そしてわたしは確信していた。

 わたしだけではなく、ゴルデンも、そして師も、この胸を心地よいと感じるはずである。

 かつて無償の愛を一瞬でも受けたことのあるものならば、誰しも心地よく感じる、オパールの抱擁――。


 彼女は、「母」なのだ。

 

 

 ぐずぐずしている時間はない。

 わたしはオパールから離れて立ち、じっとその不可思議な瞳を見上げた。

 


 「あの子の元へ行く前に、あなたに授けるものがあります」

 オパールは穏やかに言い、わたしの頬を両手で包み込んで、接吻を施した。温かなものが喉を通過し、わたしの中へ入り込む。

 それは、かつてゴルデンから受けた「儀式」のようなものであったが、オパールの「印」は柔らかく、苦痛は全くなかった。「印」はやがて、心臓のあたりにたどり着くと、鈴のような音を立てて、そこに収まったのである。


 「あなたが、わたしの次の『母』」

 

 愛おしそうにわたしの頬をなでながら、オパールは言った。

 

 妖艶なその姿は次第に色が褪せてゆく。わたしは目の前で、美しかった姿が容赦なく老いさらばえ、白髪で腰の曲がった、優し気な老婆の姿に変わるのを見ていた。

 見る影もなくなったが、それはやはり、オパールなのである。

 

 「わたしは、もう何人もの大魔女を選抜し、代から代へ変わるのを見守ってきました」


 何人もの子供を育み、見つめてきた、年老いた母親――。


 しわだらけの顔の中の、不可思議なオレンジの瞳だけが、かつてのオパールの名残である。

 オパールはいつしか、わたしよりも小さくなっていた。

 曲がった腰、やせた体を、白い衣装でだぼだぼと隠している。わたしを見上げて、オパールは笑うのだった。


 「次は、あなたの番。次の代の、東西の大魔女を選ぶのは、あなた」



 ……。


 わたしの、番。

 じっと、オパールの瞳を凝視する。

 役割を終えようとする、安息が見える瞳だ。

 

 わたしの、番――大魔女を、次の代の大魔女を、選抜する――。

 



 はっと、目を見開く。

 オパールは静かに微笑むと、白髪の頭を頷かせた。

 

 大魔女を選抜する――。


 

 「ゴルデンが、死ぬというのか」

 わたしはの問いに、オパールは答えなかった。ただ、ゆるゆるとかぶりを振るだけである。

 その瞳はあくまで穏やかであり、それがわたしを苛立たせた。

 「ゴルデンは――死なない。死ぬものか」


 壊れ物のような弱弱しい老婆をつかみ、揺さぶりながらわたしは怒鳴った。


 「まだ、その時ではないはずだ。冗談ではない、何を言っているのだ。早く――早く、師のもとへ連れて行け」


 ひよわい老婆は肩を掴まれ、思い切り揺さぶられながらも微笑みを浮かべていた。

 そしてあの不可思議なオレンジの瞳を開き、わたしを見上げた。

 わたしは苛立ちながらその視線を受け――唐突に、空間がぐにゃりと歪むのを感じた。

 手の中に掴んだ老婆はあっという間に消滅し、勢い余ったわたしは手を前に突き出して倒れかける。


 足元が滑り、わたしは転がり落ちた。

 ころころとどこまでも転がり、何かにぶつかって体は停止するが、ざばりと重たくて恐ろしく冷たいものが大量に降ってきた。


 目の前が真っ白になり、急激に襲ってきた冷たさに、わたしは震えあがる。とにかく目の前のものをかき分け、上へ上へ突き進んだ。

 息が詰まりかけた時、ようやくわたしは雪の山の中から顔を出すことに成功する。


 唖然とした。

 そこは、非常に雪深く、今も激しく粉雪が降り続いている極寒の地。

 空は黒い雲に覆われ、永久に雪を降らし続けるかと思われた。

 

 (師よ……ゴルデン)

 あえぎながら雪の中からはい出し、辺りを見回す。

 急激な雪の坂が下ったり上がったりしており、人らしい姿はどこにもない。わたしは自分がぶつかったものを振り向いてみた。そこには大木があり、力強い枝が細かく振動を続けている。

 どうやら、この木から大量の雪が落ちかかったものらしい――。


 (師よ……)


 鼻や口をふさぐほどの吹雪の中で、わたしは師の気配を感じた。

 四方を見回し、その姿を探す。いない。どこまでも白い世界だ……。


 「愛弟子よ」


 声が聞こえた。

 わたしは立ちあがると、また滑った。山になった雪から落ち、落ちたところで立とうとして足が雪にのめり込み、腰まで埋もれた。

 

 「愛弟子よ、ペルよ」


 確かに聞こえている。

 すぐ側に師がいる。

 師が、わたしを呼んでいる――。


 「師よ」


 雪をかき分け、やみくもに進む。

 どこにも師の姿は見えない。

 わたしの体の半分は、噴きつける雪で白く覆われ、今にも凍り付きそうなまでに冷え切った。

 

 今にも消えようとしている、師の命の火よ。

 臨終に向かおうとする時でも、師の声は変わらず、寡黙であるが故の重みに満ちている――。


 白い幕のような吹雪の中に、ふいに黒いものが舞った。

 わたしの前に師が立っている。

 表情のない、沈黙の大魔女、わたしの師。


 師は頷くと、静かに手を差し出した。

 掌の上には、トラメ石の欠片が光に守られて浮かんでいる。

 わたしは歯を食いしばった。

 

わたしはこの瞬間にきて、今更のように迷いを生じていたのである。

 捨て去ったはずの迷い、覚悟で固めたはずの心が激しく揺れ、今、わたしは崩壊しかけていた。

 師の差し出すトラメ石の欠片は、命の最後の欠片である。

 わたしはそれを受け取り、契約を遂行しなくてはならないのだ。


 ……。


 師は、強い茶の瞳でわたしを見下ろしている。

 わたしは泣き、飛び散る涙が氷のつぶてになるのを感じた。

 目よ、凍り付くが良い。わたしはそれを、取ることができない――どうして取れようか。


 「師よ」


 わたしは呟いて、かぶりを振った。

 師は無言のまま石を差し出し続け、静かにわたしに近づいてくる。

 わたしの外套と師の黒の衣が強風にあおられて、激しく音を立てていた。


 (取るのだ――)

 (できません)

 (どうした、愛弟子よ――)


 

 わたしはかぶりを振り続け、目を閉じた。

 どさりという音が聞こえ、わたしは目を開いた。そして、激しい後悔で黒曜石を焦げ付かせた。


 何らかの力で突き飛ばされた師が雪の中に埋もれて仰向けに倒れている。

 上だ。

 上を見ると、そこには紫の閃光のように宙を舞う、ゴルデンの姿があった。

 ゴルデンは既に戦い疲れ、あちこちに目立つほころびを作っている。

 師が瀕死であるように、ゴルデンも想像を絶する疲労の最中にあった。


 彼は金のワンズを握りしめ、師に攻撃の稲妻を注ごうとしていた。

 彼が満身創痍であることは、その姿が正体を現しかけていることからも、分かった。

 艶のある黒い体毛に、黄金の飾り毛。鋭い犬歯――。


 紫の瞳と目が合った瞬間、わたしの中の魔女の愛弟子が弾けた。

 わたしは木のワンズを握り、全身から魔法を振り絞ってそこに集中させた。

 びりびりと黒曜石が振動し、今にも粉々になりそうだ。

 わたしは――ゴルデンを、撃った。



 黒曜石の稲妻が、ゴルデンを撃ったのである。

最終章ラプンツェルの開幕です。

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