鏡に映る平凡な男
月曜日 鏡に映る
やけに平凡な男の顔と
入社式着こなした あのスーツさえ
タンスの中 眠るどころか 僕を嘲笑う
積み重ねた啓発本 やけに虚しく
ピエロにも似て 疲れ切った目の隈をした 僕を指さした
少年の日 夢見てた あの東京ドームのステージで
奏でるのは 僕じゃない
かと言って ねたむとか 羨むとか そんなことはなくて
ただ鏡の奥の 平凡な男に一撃
あの頃には 何もかもが 自由に出来ると信じていて
バイトに塾通い バンドに恋もほどほどに嗜んで
疲れきった体は 一晩で元通りだった
少年の日 憧れた あのおどけたステージングでさえ
魅せているのは 僕じゃない
かと言って 恨むとか 悔やむとか そんなことはなくて
この鏡の奥の サラリーマンに涙した
あの娘の眠る顔 昨日も見逃す この不甲斐なさとかは
寂しくて 切なくて やけに胸に痛いよ
鏡の奥 僕は東京ドームで叫んでた 「君の寝顔を見たいよ 四六時中」と
少年の日 夢見てた マジソンスクウェアガーデンという聖地で
歌っているのは 僕じゃない
分かってる この現実 受け止めて 前に進めと言って
この鏡の奥の 冷たい顔の男に一撃
もうすぐに 出掛けなきゃ 僕には僕のやるべき仕事が
たくさんあって それなりに
充実 満足 時に悲しくとも まずまず出来ていて
そんな鏡の奥の 平凡な僕を一喝
「さぁ 出掛けよう」と
僕は陽射し浴びて 駆けだしたのさ