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ひろう
用務員は小腹を立てていた。
児童がなにかを植えこみに投げ捨てていったのだ。
昼休みに花壇を荒らされて、ささくれた気分のまま植え込みをかきわけながらのぞく。うす暗がりの中できらりとなにかが光った。
くもの巣をよけながら、指先でつまんで拾い上げる。
いかにも女の子が好きそうな青いガラスの花のヘアピンだった。
安物にも見えないし、どうして捨てていったのだろう。
もったいない。
陽にかざすと、つややかに青が透きとおる。
本来なら、児童の落し物として職員室に届けるべきだろう。
だが、しかし。
――あげれば、喜ばれるだろうか。
こんなにきれいなのだ。子供のおもちゃにしておくのはもったいない。
どうせ捨てていったのだ、もらってなにが悪い。
ハンカチでヘアピンを大切にくるみ、作業着のポケットへとしまいこんだ用務員は、上機嫌で歩き去った。