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プロローグ 『ワー恥ずかしい』

「いやー、それにしても最近暑いっすねえ」

「……だからって、そうやって素足晒したりすんなよ。だらしねえ」


 隣でわざとらしくワンピースをはためかせる女の子。俺のその反応に彼女は、その端正な顔をニマニマとさせ、


「なぁーにぃー? 女の子の素足が見れて嬉しそうに見えるんですけどねえ?」

「……そんなことねえし」

「ミキってばムッツリだねえ。思春期だねえ。ほーれ」


 突然ばさりとワンピースを持ち上げ「う、えぁ、何やって!」見えるか見えないかのところではためく布は落ちた。

 なんてことしやがるこの女。心臓に悪い。


「うわー……わかりやすすぎてドン引きですねえ、これは。というかある意味初心?」


 夏の日の縁側。直射日光を避けるためにと張られたすだれに肌を守られつつ、俺と彼女――太田オオタ達子タツコと並んで座っている。

 世間はすでに夏休み。外に出れば浮かれる学生をわんさか見ることができるだろう。まったく、鬱陶しいことで。

 別に悪いこととは言わないけれど、羽目を外しすぎる輩が多くて困る。本人たちは楽しくてたまらないだろうが、こちらから言わせてみれば完全なる内輪ノリなのである。

 では俺たちは。俺と、そしてタツコは夏休みになってテンションが上がるなんてことがないのか。

 答えは、ない。なぜなら、そもそも俺たちには、


「夏休みなんてなく、元々年中休日だからである」

「唐突に何を言い出したかと思えば……不登校をよくもまあ清々しく宣言できるよねえ」


 夏ですから。少しでも清涼感を出して行かないと茹ってしまう。

 ……そう、不登校。引きこもりと言うほど外に出ないわけでもない俺たちには、この言葉が最適だろう。

 で、そんな不登校児が二人揃って何をしているのかと言えば、


「……で、そろそろ本題入ってよろしいか?」

「口調変わったのはなんでなのかねえ。まあ、よろしい。聴いてやろうではないか」


 偉そうな口を聞き、居住まいを正すことすらしないぐーたら娘。俺は今日、彼女に言わねばならぬことがある。


 これは一つの決断。

 これは一つの分岐点。

 これは一つの後悔の選択。


 自然、暑さが原因ではない汗が流れ落ちる。

 ――ポタリ。


「俺と付き合ってくださ」「ごめん無理」「い!!」


 フラれました。


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