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ニート最強伝説からの逆転

~Ⅲ~


「お前も、俺と、同じだというのか? と、という事は」


「あぁそうさ。これも私が与えてもらったチート能力、といえば良いのかな?」


 糸目は小首を傾げるようにしていう。


「ちなみに能力は【シンクロナイズ(同期)】だ。これによって私は相対する相手と同じ力を有することが出来る」


「同期……そうか、それで!」

 

 そう。チートの能力というのはステータスに表示はされない。隠蔽でもないのでみやぶるのは不可能だ。


「……悔しそうだね。でも私の能力は一つ条件があってね。相手が私と同じ転生者でないと使用できないんだ」


 俺は思わず目を丸くさせた。


「どういう事だ? もしかして、他にも転生者が?」

 

 いや、と糸目が首を振る。


「私の知ってる限り、他には君一人だ。神もそういっていたしね……」


 こいつも神にあったのか……でもだとしたらどうして――


「どうしてそんな能力にしたのか? そう思ってそうだね?」


 ドキリと心臓が撥ねた。心のなかを見透かされたようで悔しかった……。


「その答えの前に私のもう一つの能力を見せてあげるよ」


 もう一つ? 俺の脳裏に疑問符が浮かぶ。


「そう。だってこのチートじゃ結局は引き分けで終わるしね」


 ……確かに、全く同じ力になるなら、いつまで経っても決着はつかないが……。


「だから……これで決めるよ【リセット】――」


 リセット……その言葉を口にし、糸目が俺に広げた掌を突き出した――瞬間、信じられないほどの脱力感が俺を襲う。

 何だこれ? 剣も……もっていられない――


 ガシャン、と俺の手の中から柄がすり抜け、地面に落ちた。

 おかしい? こんなにこの武器重かったか?


「これが私のもう一つの力さ。転生者のみに使用を限定するという条件で二つチートを得た。それが【シンクロナイズ(同期)】と【リセット(打ち消し)だ】


 俺はどんな顔をしていただろうか? おそらく相当間の抜けた顔をしていたのだろうと思う……。


「このリセットは、使用した瞬間、範囲内の転生者達のチートで築き上げた力を全てリセットする。つまり今の君はチート能力で手にしたあらゆる力が使えない状態だ。勿論私もだけどね」


 ……互いの力をリセットする? だけど、それに一体何の意味が……?


「わけがわからないかい? でもすぐに判るよ。あぁそうだ一つだけ。私が勝った時の戦利品だけど……」


 そう言うが早いか……糸目の顔が目の前にあった。は、早い? いや、違う俺が遅くなってる。勿論この男も早いは早いが、俺がチート能力を使っていたときとはまた違う。


 そして、糸目が両拳を前に構えた状態から腕を引き、俺の腹にボディーブローを……グフォ! う、ぐぉ――


「……君の過去を全て彼女たちに話す。それでいいね?」


 俺は地面をのたうち回りながらも、その声だけはしっかりと聞こえていた。

 な、何だよソレ。俺の過去って……。


「ちなみに私は此処から先は武器は使わない。素手で君と戦う。だけど君は構わず武器を使うといい。そうだな、これは軽いから君の力でも何とか振れるだろう」


 そう言って糸目が、ハイ・ミスリルソードを放り投げてきた。俺の目の前に落ちたソレがキラリと光る。


 確かにミスリルは鉄よりも軽く、それでいて切れ味は遥かに鋭い……これなら!


 俺は糸目から施された武器を恥も外聞もなく握りしめ、糸目に向かって刃を振るった。 

 だが思ったように身体が動かない。あれだけ華麗に、あれだけ優雅に戦いを繰り広げていた、そんなかつての自分の勇姿はすでになく、へっぴり腰で剣を振るそんな情けない姿を晒すだけであった。


 俺をあれだけ尊敬し、愛してくれた女達も、信じられないといった顔で俺を見ている。

 やめろ、そんな、そんな顔で俺を……ぐふぅ!


 また、ボディーに……ちっくしょう――膝が落ちる、お腹、痛いよぉ……痛いよぉ――


「どうした勇者? まだまだこんなものじゃないだろう?」


「ヒッ!」

 

 近づいてきた糸目に、思わず俺は顔を背け両手で顔を覆っていた。完全にビビっているのが自分でも判る。殺される……このままじゃ殺される――嫌だ、折角、折角現実世界から抜けだして、天国のような世界にやってきたのに……こんなところで、嫌だ!


「ごめんなさい! ごめんなさい! ごめんなさい! 謝ります! 俺が悪かったです! だから! だからどうか命だけは! お願いです! ころさ、ないで……」


 地面に額を擦り付け、気づけば必死に謝っていた。コメツキバッタのようにペコペコと頭を下げ、とにかく許しをこうた。


「……もういいよ。大体最初から命まで奪う気はなかったしね。だけど勝負は私の勝ちだ。いいね?」


 え? と呟きつつ糸目を見上げた。

 哀れみの表情で見下す彼がいた……。


 そして、俺は自分が負けた事を改めて実感する。一度も負けたことのない俺が、しかも、こんな醜態……。


 ふと、俺は女達の視線に気づいた。

 ……哀れみ――いや、違う。あれは完全に俺を蔑んだ……軽蔑するような――


「う、うわああああぁああぁあ!」


 叫びあげ地面を何度も何度も何度も叩きつけた。

 そしてヤツを見上げ、睨みつけ思いのたけを言葉に乗せて。


「な、なんなんだよお前! 転生者が俺に一体なんの恨みがあってこんな事をするんだ! そうかわかった! お前俺が羨ましかったんだろ? 魔王を倒し勇者と称えられ! この異世界で人生を謳歌する俺が! 俺が! 羨ましく! それで! こんな事を!」


「羨ましい? 所詮仮初めの力で手にしただけの薄っぺらい君の功績がかい?」


 薄っぺら、い?


「……でも恨みが無いといえば嘘になるかな。私は君の行為によって死んだのだから」


 行為によって……?


「……どうやら思い出しもしないか。仕方ないな。いいか、私の生前の名前は土力 野人。君が飛び降りた先にいた男だ」


 ……俺の記憶が少しずつ蘇っていく。確かにあの時、そう死の直前、男が一人、俺の下に――それに土力って……。


「その顔。どうやら思い出してくれたみたいだね?」


「あぁ。思い出したよ。まさかあの時したにいたのがあんただったなんてな……テレビで見たよ。努力のボクサーだっけ?」


「まぁ、そういう風に言われてた事もあったね」

 

「それで、それで俺を恨んでこんな真似をしたってのかよぉ……なぁ! 俺が! あんたを巻き添えにした俺が! 活躍するのが悔しくて! こんな真似!」


 そうだ、そうだ、そうだ。くそ! こんな奴が一緒の世界に来てるなんて……しかもこんなチート……畜生――


「さっきも言ったと思うけど、別に悔しいとかそういう気持ちはない、いや、寧ろ哀れにも見えるぐらいだしな」


 哀れ? 何を言ってるんだ? いや、そうか。


「今の俺がそんなに哀れかよ。そりゃ気持ち良いだろうよ。俺のこんな姿みれて! そんなすました顔して心のなかで笑い転げてるんだろ! いい気味だってな!」


「……本当にいい性格してるよ君は。まぁそんなこと考えてもいないけど言っても無駄だろうね。ただね、哀れだと思ったのは君が結局何も変わること無く今を生きてるって事にさ。君は神様に頼み安易に手に入れた力をまるで自分の力のように振る舞い、何の苦労も努力する事もなく名声を手にしてきた。そしてそれに何の疑問も持たず今を生きている。異世界こそが自分にとって相応しい世界だと勝手に思い込んで、それが所詮仮初めの物にすぎないことに気づかず、毎日を過ごしているんだ」


 イラッときた。なんだこいつ説教かよ?


「はぁ? 偉そうに説教ですか? 貴方何様ですか~? はぁ何? 仮初? 努力? ばっかじゃねぇの! 何が努力だよ! そんなものなくて最強になって人生を謳歌出来ればそれが最高だろうが! 大体てめぇにそんな事を言われる筋合いじゃねぇんだよ! 何様だテメェ!」


 なんかもう負けたこととかどうでも良くなった。それにこの世界じゃ決闘は互いの合意がなきゃ認められない。

 さっきのは決着がついた。

 だから俺が何を言ったってこいつは手を出せないだろう。

 勿論俺はもうコイツと戦う気なんてサラサラないしぃ~。


「確かに。私も君の事さえしらなければ余計な口出しなんてする気はなかったよ」


 はぁ? 俺の事?


「私を転生させてくれた神様から聞いたのだ。君の事を全てね……君は産まれてからこれまで一度だって努力という努力をしたことがないね?」


 ……な、なんだよ突然――


「でも別にそれはいい。そういう流される生き方を私は否定はしないよ。君のように生きている人は少なくはないしね。だけどね、君はそれに常に言い訳して生きていた。世の中が悪い周りが悪い親が悪い。そうやって受験から逃げ働くことからも逃げ、しかも自分勝手な免罪符を設けて親に甘えて引きこもり続けた。その上でいよいよ親が少しでも立ち直って貰おうと家を出したら、そこでも全てを他人のせいにして、自殺という身勝手な真似をしてみせた」


 なんだよこいつ、なんだよこいつ、なんだよこいつ、お前に俺の何が何が何が何が!


「黙れバーーーーーーッカ! 大体悪いのは世の中なのは確かだろ! 受験なんてくだらないもので人の優劣つけて! 大学出てないというだけで駄目な烙印おして! 親だってそうだ! 俺をこんなふうにしたのは彼奴等なのに! 勝手に期待して勝手にがっかりして! ふざけんな! こんな俺にしたのはあのクソみたいな家族だ! だから俺が落ちぶれたら一生面倒見るべきだったんだ! それなのに途中で突然家を出ろとか言いやがって! あいつらは勝手にセックスして俺を考えなしに産んだ癖に、イザとなったら捨てる糞野郎なんだよ! そいつの子だから俺はリアルじゃ芽も出ず死ぬはめになったんだ! だけどここは違う! 俺はこの世界で変われた! あんなくそみたいな親から離れられたおかげで! 今の俺があるんだよ!」


 はぁ、はぁ、ちっくしょう、喉いてぇ。なんでこんな奴にこんな……。


「……あんな親か。でもその君がいう親御さんの苦労を君は知っているのか?」


「苦労? はぁそんなもの奴らにあるわけないだろう!」


「……君は本当にどうしようもないな。第一君が十年以上引き篭もっていた時、その生活費を工面してたんはだれだ? 普通の社会人ならとっくに自立していい年の子を、君の親はいつか立ち直ってくれると信じて、それだけを願いに君を育て続けたんじゃないのか? それをも忘れて親の苦労も知らず、勝手に自殺して神からもらった何の努力も必要としないチートで適当に魔物を倒し、依頼をこなし、そして英雄気取りか? 私が唯一納得出来ないのはそれなんだよ。人の気持も知らず現世でどれだけの迷惑を掛けたかも考えず、勝手に死んで異世界にきて勝手気ままな人生をおくって英雄扱い。それじゃああまりに君を育てた親が報われない」


「……それでエラぶって説教ですかぁ? はぁ凄い凄い。でもな! 俺からしてみればあんただって変わんねぇよ!」


 何? とムッとした顔になったのが判るけどな、言ってやる! 言ってやるぞ!


「大体あんた現世じゃプロのボクサーだったんじゃねぇか。俺からしてみたらその時点でチートなんだよ! 大体プロに素人が勝てるはずねぇだろうが! 身体の構造そのものが違うんだからな!」


 自分でも言いがかりに近いことを言ってるのは判ってるけどな。それでも言わずにはいられなかった。


「それも勘違いだな。言っておくが私は身体能力は転生の時点で全て捨ててきた。更に言えば敢えて身体の弱い子供にも転生させてもらい記憶もある程度成長するまでは封印してもらった」


 な、んだ、って?


「それでも途中で記憶をある程度もどしてもらったのは君の事があったからさ。それでも十五歳までは封印してもらったけどね」


 嘘だ! そんなの! わざわざそんな、そんなの馬鹿としかいいようが――


「君から見たら私は相当な変わり者かな? でも後悔はしていない。充実もしている。たしかに君と違って冒険者になってからも薬草採取の依頼をこなすのに平気で何日も費やしたし、君が一撃で倒したというグレーウルフも、私は何時間もかけ瀕死に近い状態のギリギリで狩ったりもした」


 そこまで言って俺をみてきて、て、やめろよその眼、やめろよ!


「でも私はチートに頼らなかった事を後悔なんてしていない。寧ろ充実しているぐらいだ。だってそうだろう? 何の苦労もなく手にした力になんの意味がある? 本当に充実した生き方がしたければ例えゆっくりでも一段一段しっかり踏みしめて上がっていくべきだ」


「んだよそれ……決めんなよ! 勝手に決め付けんなよ! 何が努力だ! ばっかじゃねぇの? だれもそんなの望んでないんだよ! 今の時代努力なんて汗臭いもの好き好んでするやついねぇんだよ! 大体みてみろ! ラノベで俺みたいに異世界に転生する主人公が流行ってる! 俺みたいなニートが異世界に転生して最強! それを皆望んでんだよ! もしこれを物語として読んでる奴がいるならあんたみたいな暑苦しい馬鹿はだれも選ばない! 俺みたいな適当に最強の能力もらってチーレムやってチヤホヤされてるのを望んでんだ! 何故かわかるか? それが理想だからだ! 誰だって努力なんてしたくない! つらいものは見たくない! だから俺みたいに適当な人生終わらせて、異世界で魔物だろうが魔王だろうがあっさりぶっ倒す! そんな展開に夢持ってんだ!」


 クソ! また息が……。


「だから俺はこのままでいいか。本当に考え方が幼稚だね君は」


「あぁん?」


「だってそうだろ? 結局君は自分に言い訳ばかりだ。仕方無い、世間がそうだ、だから俺はこうなんだ。まるで自分がないじゃないか。それとも君のいう小説の主人公ってのは右も左もみんな同じ顔ばかりだというのかい?」


 ……自分がない――


「まぁいいよ。コレ以上話していても仕方無い。ただ約束は約束だ。彼女たちには全て話すよ」


 え? お、おいちょっとま――

 だけど、うまく声が出てこなかった。

 糸目……土力が彼女たちに近づいて、何かを話している……俺のことを? おれ、の、こと?





◇◆◇


「お前がそんな男だったとはな……信じていた私が馬鹿だった」


「ご主人様はもっと素敵な方だと思ってましたのです。あたし悲しいです」


「全ての力が神によって安易に与えられていたものだったとは。しかも生前は家族への恩も忘れそのような……軽蔑ですわ!」


「驚いたな。私にあれだけ偉そうにいっておいて、お前はとんだ屑野郎じゃないか? 魔王の私でもひくレベルだ」


「ハッキリ言って」「幻滅」「ほ、本当最低なんだからね!」


 ……俺の事を散々好きだ愛してる、そういって後ろさえも許した女が、土力の言葉であっさり俺を見限った。

 いや、それどころか俺を振ったかと思えばすぐさま土方の方へ向かって眼をハートマークにしてやがる……。


「気持ちは嬉しいけど私はまだまだ修行中の身。それに君たちは私が勇者に勝った事で一時的に好きだと勘違いしてるのではないかな? だからまずよく考えて欲しい。愛というのは育むものだ。そんなちょっとした事で決めちゃいけないよ」


 俺の目の前でビッチ女どもにそんな事を言い残し、奴は去っていった。

 そしてビッチ共は、最後にまた俺を蔑むように一瞥して、そして同じように静かに去っていった。

 

 ……ケッ! あんなビッチこっちからお断りだ! それにあの糸目の話だとリセットは効果が永久というわけじゃないらしい。

 

 実際俺のステータスはもう戻っている。

 だったら何の問題もない。また活躍して女ぐらいすぐに手に入れてやるぜ!


 そう思っていたんだが――





「おらぁ! ギガスラッシュ!」


 眼の前にいるドラゴンを俺はあっさりと打ち倒した。エターナルドラゴンはレベル105だが、俺からして見れば赤子の手をひねるより簡単だった。


「……満足か? 紛い物の勇者よ――」


 ……な、に?


「話は知っている。お前は神から手に入れた力を頼ってるに過ぎないと……いい気なものだな――そうやって、与えられた力だけを使って満足しているお前は、非常に、滑稽、だ……」


 う、うわぁあああぁああぁあ!


 突き刺した。剣を。何度も。何度も。何度も! そして、気づいた時には、エターナルドラゴンの身体は原型もとがめていなかった。


 ……ふ、ふん! この俺に生意気な口を聞くからだよ! ば~か。チッ、しゃ~ねぇな。まぁ角だけでもかなりの金になるしな。





「エターナルドラゴンの角ですね。はい、ではこちら、250万ルークお支払いです」


 俺から角を受け取り、美人受付として有名なバーバラが買い取り金額を支払ってくれた。基本素材は冒険者ギルドが買い取ってくれる。


 まぁそれはいいんだけど……。


「それだけ?」

「はい?」


 あれ? おかしいな? 確かに何時もどおりの笑顔にも見えるんだけど……。


「いや、ほらいつもだったら、キャー! エターナルドラゴンを倒しちゃうなんて勇者様すご~い! とか……」


 そうだ。それに瞳だって、いつもなら憧れと尊敬をこめた濡れた眼差しを向けてきてるはずなのに……。


「……きゃーゆうしゃさますごーい」


 棒読みじゃん……。


「あ、あの?」


「もういいじゃないですか」


「え?」


「……だって勇者様が凄いのはみんな知ってますよ。それに神様から与えられた1,350,000,000レベルの力があれば何の苦労もなくエターナルドラゴンぐらい倒せますもんね」


 ……確実に皮肉めいた言い方だった。最後の笑顔も俺の心に突き刺さってくるようだった……。


 いや彼女だけじゃない。周囲の冒険者の目だっていつもと違う……。


「神様にもらったとか……」

「頑張ってる俺らが馬鹿みたいだよな……」

「俺も死ねば異世界に転生できるのかね……」


「何だよ! いいたい事があるならハッキリ言えよ!」


 ……黙っちまった。くそ! イライラする!





「マスター! 酒~酒おかわり~」


 うぃーっと。くそ! あれから何日たったかな? 十日か? もうよくわかんねぇや。

 俺はあのエターナルドラゴンを倒したのを最後に冒険には出ていなかった。


 大体からしてあれだけの金があればもうヘタしたら一生だっていきていけるしな。

 だから……あれからずっと酒浸りだ。


「ちょっと飲み過ぎじゃないですかね?」


「うっせぇええ! 金ならあるんだ! 問題ねぇだろうが!」


 そう言ったら、こいつこのオレサマの前でため息つきやがって! ムカつく!


「勇者様は気楽なもんだ……」

 

 !? くそ! こいつまで――


「おい、あいつ……」

「あれで――かよ」


 またヒソヒソと……ムカつく!


「おい! なんなんだてめぇ! 言いたいことがあるならはっきりいえや! ば~ろ~!」


「え? いやいやそんな勘弁して下さいよ勇者様」

「そうですよ。所詮レベル15とかの俺らじゃ1,350,000,000には勝てませんし」


「だよなぁ? いやぁ本当うらやましいよ。なんでも生前は随分手前勝手に生きて、そしてそれが嫌になったらあっさり死を選んで、神様に会い、最強の力を手に入れたんでしょう?」


「ほんと。俺達もお零れに預りたいものだよなぁ。なんの苦労もなく、そんなホイホイと力手に入れて魔王倒して勇者様~ですか~本当一生懸命生きてるのが馬鹿らしくなりますよねぇ~」


「……なにお前ら? 馬鹿にしてんの?」


「いやいや違いますって。本当尊敬してるんですよ。そんなズルい力をもらって厚顔無恥に生きていられる勇者様の、こ・とをねぇ」


 ……もう、いいかなっと思った。

 そもそも遠慮の必要もない。俺が本気出せば、こんな奴ら……。


「ヒッ!」


 俺が剣を抜いたら瞬時に奴等の顔が引きつった。馬鹿が、だったら最初から。


「た、助けてくだせぃノビトの兄貴!」


 ……え?


「全く。こんなところで何をやってるのかな? 君は?」


 忘れられない声が俺の背中に降り注いだ――





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