魔法、魔力。
「ミキ、聞きたいことがある。事故の時、俺に何かしたか?」
きっと、紗希さんが俺達の前にミキをつれてきたのは、ミキが俺に何かしたのを見たからなんだろう。
そう思った俺は、ミキが何かを知っているんじゃないかと思い聞いてみた。
見ると、紗希さんも、真剣な顔をしてこっちを見ていた。
「そうじゃの。あの時我は紗希の車に乗っていたんじゃ。そして、車はお主とぶつかった。我は、瀕死の状態じゃったお主に、魔法を使って肉体を再生したんじゃ。幸い、死神が近くにいなかったから簡単にできたんじゃ」
やはりミキが俺を助けたのか。
てか魔法って、ゲームかよ…
でもなんでなんだろう。今ならまだしも、その時の俺たちは、会ったこともないただの加害者と被害者で、助ける義理はないはずだ。
天使だから、目の前の困った人を助けたいと思ったんだろうか。
「なに、理由は簡単じゃよ。お主が死んでしまったら、紗希の将来に迷惑がかかるからじゃ」
考えていたことが顔に出ていたのか、俺が質問する前に、その答えをくれた。
「ミキ…」
それを聞いた紗希さんが、俺から視線を外して、ミキのことを見た。
「紗希には、助けられた。人間界にきた我にとって、ここは知り合いの一人もいない世界じゃ。一人だった我に、手を差し伸べてくれたミキには、これでも感謝しとるんじゃよ」
ハニカミながら言ったミキの顔は少し赤くなっていた。
「うん、私も感謝しているわ、ありがと」
二人はしばらく微笑みあっていた。
なかなか、見ていて和む光景だった。
「ねぇ、誠」
静かだったアリサが、不意に俺に話しかけてきた。
「どうした?」
「あのね、やっぱり、私も謝らないといけないって思って。今誠に手伝ってもらってるけど、結局は自業自得だったみたいだし」
「アリサ…」
ミキが言っていた、死神が近くにいなかったから簡単にできた、という所を気にしているのだろう。
アリサは、しょんぼりしている。
「いいんだよ。いくら俺があの時、死ぬことが決定してたんだとしても、俺が死んだのは自業自得だ。あの時俺は、下を向いて歩いてたからな。だから今回は、お互い様ってことにしとこう」
そう言って俺は笑い、アリサの頭を優しく撫でた。さらさらの髪が気持ちいい。
俺がまだ小さいころ、雫が泣いた時によくやったことだ。しているうちに、少し懐かしい気持ちになった。
「誠…。ありがとね」
くすぐったそうにしているアリサは、まだ少し元気がないようにみえたが、笑っている。
少し心配だが、大丈夫だろう。
「ところで、お主達は、それを聞くためにここに来たのかの?」
ミキがこちらに視線を向けて、そう言ってきた。紗希さんの方もこっちを見ると、再び真剣な顔をする。
「そうだったな、実は…」
俺も真剣な顔をすると、アリサが魔界に帰れなくなってしまった事を話し始めた。
途中で、紗希さんが、アリサのことを聞いてきたので、アリサについて説明をした。実は今もこの部屋にいると言うと、驚いていたが納得した顔をして、その後は黙って俺の話の続きを聞いた。
「なるほどの、その死神娘が魔界に帰れなくなってしまったのは、我がお主を、助けてしまったせい、というわけじゃな」
話し終わった後で、ミキが難しい顔をして俺にそう言ってきた。
「そうだとしたら、私のせいでもあるわ。ごめんなさい」
今度は俺に対してじゃなく、アリサに対して言ったのだろう。紗希さんが頭を下げてそう言った。
アリサが大丈夫と言っていたので、俺が紗希さんにそう伝えた。
「だから俺は、なんとかアリサを魔界に帰らそうと思って、俺がこうなってしまった原因を探してたんだ」
「それで来たんじゃな。しかし、申し訳ないが我じゃどうすることもできんぞ?」
ミキは困った顔をして、俺にそう言ってきた。
「ほ、本当に、どうすることも出来ないのか?」
「無理じゃな」
やっぱりダメなのか。
もともと考えていたことだ。もし、俺がこの体になった原因がわかったとして、それでどうするのか。不死身の体になってしまった俺は、俺は死ぬことが出来ない。
もしかしたらその原因の方が、何か出来るかもしれないという、かすかな希望にかけた俺達のかけは、失敗に終わった。
「やっぱり駄目か…」
アリサがポツリと、そんなことを言った。
「くっ…」
今回ばかりは、何も声をかけてやることができなかった。
俺はそんな自分が殴りたくなった。
「まぁ、魔力が回復したら、出来るかもしれんがな」
「え?」
「え?」
アリサと一緒に驚いた顔をして、ミキの方を見た。
「今の我は、魔力を使ってしまって、魔法が使えなくなっておるのじゃ。肉体を再生すること自体はあまり魔力を使わないのじゃが、今回ばかりは、死人を生き返らせたようなもんじゃし、使いすぎたんじゃ。回復すれば、もしかしたら、どうにか出来るかもしれん」
それを先に言えよ!
一瞬絶望したよ!
でも、本当によかった…、これでアリサは魔界に戻ることが出来そうだ。
「あと少しで、魔力の方も回復するじゃろうし、またこの家に来たらよい。その時連絡する」
それを聞いていた紗希さんが、紙とペンを持ってきて、この家の番号を書いた紙を渡してきた。
それをうけとった後、俺は紙とペンを貸してもらって、それに家の電話番号を書くと紗希さんに渡した。
自分の携帯の方の番号を渡したかったが、今は壊れているので仕方ない。
何わともあれ、手にした希望を離してはいけない。
そのあと少し会話をして、俺達は家に帰った。
また投稿です。
ミキの喋り方は難しいです。
面白くないかもしれないけど、頑張ります!
感想などよろしくお願いします。