story4
「アルバート様」
「何だ」
「離して下さい。あと、そこの書類の山を直ちに処理してください」
現在アルバート様にがっちりホールドされています。しかも尻尾が邪魔だからと向き合って…。アルバート様の黒い髪が首筋をくすぐってる。退いてほしい。
全く手招きされたと思ったらこれだ。もうこの変態どうにかしてください。
「飽きた」
「またそれですか。先ほどもお休みになられたでしょう」
首に顔を埋めないで下さい。セクハラです。そこでしゃべるな。
「疲れてはいない。飽きた」
「そうですか。では処理してください」
これを毎日繰り返しているのだ。こちらが疲れる。
「今日は随分と色んな奴に会ったのだな」
「いつもです」
ここは神城。神たちの職場と言える。色んな神が出入りするのだ。主君以外会わないわけがないと何度も言っている。
神たちの仕事というのは、人間の望みを聞き、ある程度の力を与え、時に残酷な運命を与えることだ。我が主君はその上に神の仕事の管理、神の監視、抑制、統治と神の王としての仕事がある。
獣神は神の手伝い、護衛、使いと様々な仕事があるが、私の場合そこに神の管理が入る…。もう少し主君がしっかりしてくれれば、と何度思ったことか…。
「アルバート様、ただでさえ仕事が沢山あるのです。コツコツと終わらせてください」
「いくら仕事をしたって仕事はどんどん入ってくる。いつまで続ける?」
「ご辞職なさるまでです」
「…死ねというのか」
「アルバート様は死ねないでしょう」
四の五の言わずに仕事をしろ、とばかりに力ずくで逃げ、書類の山をドンッと置いて部屋を出た。