story3
「アイリーンちゃん」
「あ、メアリーさん」
ふわふわした赤毛の髪を躍らせて話しかけてきたのは、火の神フェニックス様の獣神のメアリーさん。その背中には緋色の翼がちょこんと生えている。
「アイリーンちゃん今日も髪がさらさらで尻尾がもふもふね。クリーム色が可愛いわ。本当は一つじゃないんでしょう?」
メアリーさんは緋色の目を輝かせて詰め寄ってくる。
「そうですね、通常は10本あります」
危険を感じて尻尾を極限まで庇いながら後ずさる。
獣神は尻尾、翼、角、と様々に生えているが、主君の強さが数や大きさなどに反映されている。
「王様はアイリーンちゃんの尻尾をいつでも堪能できていいわね。羨ましい…」
「その前に溜まっている政務をやっていただきますけどね…」
そう簡単にセクハラさせるものか。
「アイリーンちゃんはガードが固いんだね」
「メアリーさんだって翼は触られたくないでしょう?」
「それは…主様が触りたいのなら…」
と頬を染め始めたメアリーさん。ダメだ。この人絶対フェニックス様ラブだ。
「あ、私アルバート様がちゃんと仕事してるか見に行ってきます」
逃げるが勝ちだ。何の勝負かわからないけれど。
「頑張ってね、アイリーンちゃん」
未だ頬を染めているメアリーさんからは幸せオーラが出ていた。
「フェニックス様はちゃんと仕事をしてくれる人でいいな」
「え?」
今私の思ったことを…と驚き振り向くと、そこには目を瞑った長い白髪を引きずった男が立っていた。
「サトリ様、人の心を読まないで下さい」
「しかし、我は自然と心が読めてしまう」
「では、口に出さないで下さい」
「ふむ…」
サトリ様は意識、感性、覚醒、閃きの神様といわれているが、実際はアバウトな感じの神様だ。
とにかく人の心が自然と読めてしまうらしい。厄介である。
「ここは変な人が多くて困る、とな?」
「だから…」
人の心を読まないで下さい。
「実に人間的な意見だ。我々にとって普通のことである」
「そうですね。ですが獣神は十数年人間界で暮らすので人間的なところもあります」
「ふむ、実に興味深い」
サトリ様は普段自室に篭って出てこない。獣神も持たない。理由はうるさいからだそうだ。
「大変ですね」
何もしなくても他人の心が自然と聞こえてくるというのは人の多い場所では苦労するだろうし、近しい人だと気も遣うだろう。
「何、調整できぬこともない。ただ面倒なだけよ」
そう言ってサトリ様は私の横をすっと通り抜けた。
「あ、サトリ様」
振り向いたサトリ様に髪紐を渡す。
「ふむ、確かに髪は邪魔である。有難く頂戴しよう」
ただそう言ってサトリ様はどこかへ去っていった。
火の神の獣神
メアリー
ふわふわした赤毛。
緋色の目、緋色の翼を持つ。
美人で優しく、主君ラブ。
意識、感性、覚醒、閃きの神(?) 眷属:月
サトリ
白髪の長髪。
実は結構アバウトな神様。
自然と他人の心が読めてしまう。
そのため自室に篭り、獣神もいない。
筆者:密かにサトリ様が好きだったりします。